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新規事業とは? アイデアを生むフレームワーク・プロセス・事例を紹介

新規事業の創出が重要視される昨今。何をすればいいかわからない人向けに新規事業とは何かから、立ち上げを成功させる方法、また失敗しないための注意点、アイデアを出すためのフレームワークの作り方、立ち上げにおける7つのプロセス、実際の新規事業での成功事例などを紹介します。

そもそも新規事業とは

新規事業とは、新たに立ち上げる事業や新規参入する事業のことを指し、新規事業を始めることによって、企業が新しい収益の仕組みを構築できるというメリットがあります。企業を存続するためには、時代の変化に応じて定期的に収益の構築を見直し、新規事業について検討する必要がありますが、その立ち上げにはプロセスが重要となるので、かかる時間や金銭面も考慮しなければなりません。

新規事業のアイデア創出に活用できるおすすめフレームワーク4選

フレームワークとは、事業計画や経営戦略の検討、課題解決などに役立つ思考の枠組みのことを指し、ビジネスで活用する際には「ビジネスフレームワーク」とも呼ばれています。

フレームワークを活用することで、自社の市場価値や競合他社について可視化して整理でき、分析を通して課題解決や業務の効率化を図れるというメリットがあります。

新規事業の検討にもフレームワークを活用することで、自社の将来性について分析できるので、新規事業立ち上げにおすすめのフレームワークを4つ紹介します。

バリューチェーン分析〜既存事業の工程を振り返り価値を見出す〜

バリューチェーン分析とは、価値連鎖を意味しており、企業の事業活動についての一連の流れを工程ごとに分析する方法です。
自社企業がどの工程において価値を見出しているのか把握するとともに、活動ごとの工程を可視化できるので、各問題点の洗い出しにも役立てられています。

ただし、一連の流れが自社で完結している場合のみ分析でき、どこかの工程に他社が関わっている場合にはあまり適しません。 バリューチェーンは、「主活動」と「支援活動」の2つの要素で構成されています。

主活動は、ビジネスにおける生産から消費までの流れにかかわる活動のことで、商品の製造や開発、サービスの提供などを指します。
支援活動は、生産から消費までの流れに直接かかわらない活動のことを指し、人事や労務などの管理、技術開発などが含まれます。

5フォース分析〜業界の競争構造を可視化〜

5フォース分析とは、自社がさらされている5つの脅威から市場での優位性や収益性を分析する方法です。業界の競争構造を可視化し分析することで、自社の競争優位性を探ることができます。5フォース分析では以下の5つの要素を用いて分析を行います。

①買い手の交渉力

買い手と自社との力関係を指し、市場規模や競合他社の状況と自社製品の値下げ幅などを分析することで、適切な価格設定が行えているか、無理な値引き競争に陥っていないかを確認します。

②売り手の交渉力

売り手と自社の間にある力関係を、市場規模や売り手の数、供給元を変更する際のコストなどをポイントにして分析します。

③業界内での競争

自社も含めた競合他社の数や知名度、資金力などを分析し、自社の収益性を割り出します。

新規参入者の脅威

新規参入企業の技術レベルやブランド力を市場規模とともに分析し、自社にどれほどの影響を与える可能性があるのか見極めます。

⑤代替品の脅威

自社の商品やサービスと提供価値が同等のものについてコスト差や品質を分析し、自社製品の差別化を図ることに役立てます。

3C分析〜競合と自社を比較〜

3C分析とは、「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の3つの要素から自社の戦略方針を決めるための分析方法です。自社についてだけではなく、顧客や競合といった外部環境も合わせて分析することで、効率的なマーケティング方法の創出に役立てられます。

具体的に、それぞれの要素ごとに以下について明確にすると、競合他社との比較がしやすくなります。

①Customer(顧客)

市場の規模や動向、顧客の持つ需要と供給の現状について分析する。

②Competitor(競合)

市場における競合他社の数、提供サービスや商品、成功要因について分析する。

③Company(自社)

顧客、競合他社の分析結果を踏まえ、自社が提供している価値とは何か、自社の強み・弱みについて分析する。

SWOT分析〜自社の強み・弱みを把握〜

SWOT分析では、自社の内部環境である「Strength(強み)」「Weakness(弱み)」と、外部環境に分けられる「Opportunity(機会)」「Threat(脅威)」の4要素から自社が置かれている環境を分析します。SWOT分析を利用することで、ビジネス環境変化にいち早く対応したり、内部環境と外部環境のギャップを把握し、差別化するための戦略を図ったりすることが可能になります。

自社について4つの項目ごとに分析を行ったら、「強み×機会」「弱み×脅威」というように、それぞれの項目を掛け合わせてさらに分析を行うと、より具体的な戦略を立てることができます。特に「強み×機会」は、最大の機会を活用して強みを発揮することで、成功の可能性を広げられるため、自社の戦略にとって非常に重要な分析です。

新規事業の立ち上げに必要なプロセスを解説

新規事業を始動させることにより、新たに収益を確保できたり、資産を有効に活用できたりなど、得られるメリットがいくつかあります。しかし、新規事業を立ち上げるには何から始めればよいかわからないという方もいるのではないでしょうか。

新規事業は企業にとっても大きな挑戦であり、その分リスクも発生しますが、成功させるためにはプロセスが極めて重要となりますので、新規事業立ち上げにおける7つのステップを一つずつ解説していきます。

7つのプロセス

新規事業の立ち上げは、一般的に以下の流れで行います。

①新規事業立ち上げの担当者を選出

コンテストやプレゼンで新規事業のアイデアを社内から募り、アイデアの発案にかかわった人物を担当者として指名する方法がおすすめです。社内からの選出以外に、専門家からのコンサルティングを受けることなども検討すると良いでしょう。

②事業理念やビジョンを明確化

事業理念やビジョンを明確にすることで、新規事業の軸が定まります。会社として達成したいことや、解決したい社会問題などをもとに、新規事業の方向性を定めていきましょう。

③市場や競合他社の調査を行う

新たな市場に参入する際には、市場規模や競合他社について調査する必要があります。フレームワークなども活用し、自社の市場価値や将来性についてしっかり分析しましょう。

④顧客のニーズを検討

市場調査以外にも、アンケートやインタビューを行うことも効果的です。集めたデータから、顧客自身も自覚していないような潜在的なニーズに目を向けると、競合他社との差別化を図った戦略を立てることができます。

⑤事業モデルを検討

事業の方向性や戦略を固めたら、事業化する方法について検討します。収益を見込めそうな事業モデルを選択し、実際にどのくらいの収益を上げられるか、一度検証してみることもおすすめです。

⑥事業計画の立案

検討してきたさまざまな要素を踏まえ、具体的な計画に落とし込んでいきます。新規事業をスムーズに実行できるようにミッションや収益予想、検証を終えての成果なども記載しておくと良いでしょう。

⑦新規事業の実行

ステップ⑥までの準備を整えたら、実行に移します。準備や計画をしっかり行うことで、成功の可能性も高くなりますが、万が一問題が発生した場合に迅速に対処できるよう、社内体制も整えておきましょう。

新規事業の成功ポイントを押さえよう

新規事業を成功させるためのポイントを5つ紹介します。

①成功体験に縛られすぎない

これまでの成功体験を参考にすることにより、新規事業に生かせるヒントや知識を得られる可能性はありますが、すべて同じやり方で成功するとは限らないため、過去の成功体験に縛られすぎないように注意しましょう。

②ヒト・モノ・カネの経営資源を意識

ヒト・モノ・カネは、新規事業には欠かせない経営資源です。

ヒトは、新事業に携わる人材を指しますが、ノウハウや経験に不足があると判断した場合には、外部の力を借りることも検討しましょう。

モノには特許や無形財産なども含まれます。すぐに用意できるとは限らないため、知識の習得や準備に時間を要するものが必要な場合は、早めに準備に取りかかるようにしましょう。

カネに関しては、新規事業に必要な予算を確保できるように、不要なコストを削減するようにしましょう。

③市場の成長率を把握

新しい分野への参入を考えているのであれば、成長率の高い市場を選ぶと良いでしょう。成長率が高い市場であれば、利益を出しやすく、将来性を期待できます。

④意思決定のスピード感を意識する

競合他社に先を越されないためにも、スピード感をもって意思決定を行うことは重要です。最終判断を行う人数を2~3人に絞ることも効果的でしょう。

⑤収益につながる仕組みづくり

どんなに素晴らしい製品やサービスであっても、成果を得られなければ新規事業を成功させることは難しいでしょう。認知度を上げ、顧客が購入・利用しやすい仕組みづくりを行うことが成功のポイントです。

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新規事業で失敗しないための注意点を紹介

新規事業で失敗しないためには、以下の点に注意しなければなりません。

①当事者意識が低い

当事者意識の低さは、新規事業の失敗に直結します。必ずやり抜こうという決意をもって新規事業に取り組むようにしましょう。

②投資資金の不足

新規事業が行き詰まる最大の原因が資金不足です。社内の他事業に影響を与えることもあるので、資金の調達は慎重に行いましょう。

③権限が明確化されていない

準備段階で修正点や問題が発生した場合、リーダーに権限が与えられていなければ、動きがストップしてしまう恐れがあります。あらかじめ権限や役割を明確にしたうえで準備を進めるようにしましょう。

④専門分野の人がいない

見切り発車で新規事業の立ち上げを開始した際によく見られる事例です。新規事業に本当に必要な人材を選定するために、社内だけではなく外部にも目を向けるようにしましょう。

⑤リーダーの不在

共同出資などの新規事業でみられる事例です。方向性が定まらないときに決定を下す人物がいなければ、流れが中断されてしまうので、最終的な判断を誰が行うのか決めておく必要があるでしょう。

新規事業の実際にあった成功事例を紹介

ここからは、賢者の選択サクセッションのインタビュー記事内から、新規事業の成功事例をいくつか選出して紹介します。

ほとんどの事例が事業承継後に開始された新規事業ですが、成功を収めることができた理由はどのようなところにあるのでしょうか。どの事例も承継者ならではの視点やアイデアが生かされているので、新規事業のアイデアが思いつかないという方もぜひ参考にしてみてください。

インドネシアへの輸出業を始める -安岐水産-

安岐水産は香川県にある水産加工を営む会社で、現在社長を務めるのは創業者の娘である3代目の安岐麗子氏です。麗子氏は大学進学、就職を経て香川に戻り、安岐水産から受託した加工業をメインとした会社を起業しました。

安岐水産の当時の主力商品は、アオリイカに細切りの加工を施した「いかそうめん」で、当初は麗子氏の両親が手で細かく切っていました。この加工の工程を麗子氏が立ち上げた会社で引き継ぎ、細切り用の機械を導入して加工を行うようになりました。

父を手伝うために起業した会社でしたが、家族全員で助け合う体制を作ったことで新規事業としての成功につながったのでしょう。

記事はこちら:「日本の豊かな魚食文化を後の世代につなげたい—安岐水産の事業承継/安岐麗子インタビュー#1

JAXA(宇宙航空研究開発機構)からの発注を実現 -由紀ホールディングス-

ねじやナットを製作していた町工場を継いだのは、3代目である大坪正人氏です。正人氏は由紀精密の持つ精密加工技術の高さと、自身が大学や就職先のベンチャー企業で学んだ最先端の加工技術を掛け合わせて何かできないか検討していました。

由紀精密の品質を維持するためには大量生産ができないため、小ロットで安定した品質が求められる業界に絞り、行きついたのが航空宇宙産業でした。

クオリティの高さを武器にブランディングを進めた結果、JAXA(宇宙航空研究開発機構)からも発注が来るようになり、リアル「下町ロケット」として話題になっています。現在は由紀ホールディングスと社名を改め、グループ会社を束ねる親会社として成長を続けています。

記事はこちら:「日本の「ものづくり」パワーを将来につなげる−−由紀ホールディングスの事業承継/大坪正人インタビュー#1

自社ブランドシャンプーを開発 -木村石鹸-

大正時代から石鹸・洗剤を手掛けている老舗企業、木村石鹸の看板商品を開発したのはいきなりやってきた一社員でした。

木村石鹸では好きなものを自由に開発できると知り、理想のシャンプーを作りたいという思いを胸に木村石鹼に入社した多胡健太朗氏。木村石鹸ではシャンプーの開発を手がけていなかったにも関わらず、多胡氏は5年がかりで『12/JU-NI(ジューニ)』を開発しました。

発売当初から『12/JU-NI』が好感触を示していたことで、その後木村石鹸のメイン事業は自社ブランドとなり、現在では自社ブランドが全体の売上の40%を占めています。

社員のアイデアを受け入れていく起業スタンスが、看板商品を生み出したともいえるのではないでしょうか。

記事はこちら:「IT企業取締役から、泥臭くて大嫌いな家業へ。大正から続く木村石鹸に革新をもたらした、「ベンチャー型事業承継」に迫る!/木村祥一郎インタビュー#1

小学校の低学年向けの教材開発に踏み切った -七田式-

幼児教育の画期的なメソッドとして知られる「七田式」の教育事業を引き継いだのが、七田式考案者の息子である、七田厚氏です。

大人の能力について書いた父の著書がヒットし、顧客が増えた一方で、メインであった幼児教育書の売上は減少傾向にありました。次第に大人向けの本の売上も落ちていき、保険の解約や給料を削るほどの経営危機に陥ったことで、小学校低学年向けの教材開発に踏み切りました。

海外進出、カセットテープやCDなどの当時は珍しい耳で聞く教材の開発なども行い、新たな試みが次々と功を奏した結果、危機を乗り越えることができました。

初心に立ち返り、顧客のニーズに沿った対処を講じたことが、新規事業の成功にもつながったのでしょう。

記事はこちら:「事業承継の経緯 「じゃあ、あなたが社長をやりなさい」 ――弱冠24歳でカリスマ創業者から事業を承継した 二代目七田式主宰の挑戦/七田厚インタビュー#1

低カロリー食品の火付け役 -タニタ食堂を展開-

タニタといえば、「タニタ食堂」でおなじみの企業ですが、タニタ食堂の事業を始めたのは、3代目社長の谷田千里氏です。

もともとは体脂肪計付きヘルスメーターがタニタの看板商品でしたが、社員食堂がテレビで紹介されたことをきっかけに、社員食堂のメニューを掲載したレシピ本を発売しました。このレシピ本が話題を呼び、今度は「タニタ食堂のメニューを食べたい」という問い合わせが殺到したことで、タニタ食堂の事業化が検討されるようになりました。

飲食業への進出には猛反対を受けましたが、社長自らがプレゼンや価格の調整などを行い、タニタ食堂をオープンさせました。

社員の健康と向き合い続け、日本を健康にするという新たな目標が社長を突き動かしたといえるでしょう。

まとめ

企業の存続や、新しい収益の確保など、新規事業を始めるうえでのメリットは複数ありますが、事業計画や準備に不備があると、失敗の原因になり得ます。そのため、フレームワークを活用して自社を客観的に判断し、新規事業の戦略や計画を効率的に立てていきましょう。また、適切なプロセスに沿って準備を行うことで、準備不足による失敗も回避することができます。

しかし、新規事業ではうまくいかないことも多いので、失敗からの学びを成功に生かせるよう、紹介した成功のポイントや事例も活用してみてください。

過去記事では、新規事業のアイデアを見つけるコツについても解説しているので、ぜひご参照ください。
(「新規事業はアイデアの見極めが重要!便利なフレームワークや成功事例を紹介」)

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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