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事業承継センターとは?支援内容や事業承継事例を紹介

日本企業の99%を占める中小企業を、維持・発展していくために、事業承継は重要な取り組みです。そこで事業承継のさまざまな不安や問題を解決する「事業承継・引継ぎセンター」が令和3年4月に設立されました。この記事では、事業承継・引継ぎ支援センターの支援内容や、支援事例を紹介します。

事業承継・引継ぎ支援センター(事業承継センター)とは

後継者不在に悩む事業所を支援するために「事業承継・引継ぎ支援センター」が設置されました。ここからは、事業承継センターの概要を紹介します。

事業承継・引継ぎセンターができた背景

事業承継センターができた背景には、経営者の高齢化や後継者不足が挙げられます。中小企業庁の試算では、2025年までに70歳を超える中小企業の経営者は、約245万人となり、その半数の約127万人が後継者未定と予想しています。現状を放置すると、2025年までに約650万人の雇用、22兆円規模のGDPを損失するリスクがあるのです。

また新型コロナウイルス感染症の影響で、休廃業する企業がさらに増え、事業承継・引継ぎの円滑な支援を行う「事業承継・引継ぎ支援センター」の必要性が高まりました。

公的機関で安心して相談できる

事業承継センターは、国が設置する相談窓口です。全国47都道府県に設置されており、商工会議所などの各地域の機関と連携して、事業承継に関するサポートを行っています。中小企業診断士をはじめとした専門家が、事業承継に関する相談に対応してくれます。

専門家派遣は、費用が発生する場合もある

事業承継センターは無料で相談対応をしていますが、支援内容は地域ごとに異なるため注意が必要です。特に第三者承継などで専門家の支援を受けると、費用が発生するケースがあります。その場合は、事業承継における専門家派遣として、助成金を申請できます。
なお助成金については、過去の記事で詳しく紹介しているので、ぜひご参照ください。
(「最大800万円補助! 事業譲渡で活用できる補助金制度の対象と概要について解説」)

事業承継センターの支援内容

事業承継センターの支援内容は、以下の4つです。

1.第三者承継支援
2.親族内承継支援
3.後継者人材バンク
4.経営者保証に関する支援

ここからは、それぞれの支援内容を紹介します。

第三者承継支援

第三者承継支援は、後継者がいない会社の譲受先の紹介や成約までのサポートを行うサービスです。事業承継センターには、民間仲介業者や金融機関が登録されており、案件ごとにマッチングを行います。引継ぎ先の紹介から譲渡契約の成約まで、一貫してサポートを受けることが可能です。また、全国47都道府県の事業承継センターと連携しており、離れた地域間でのマッチングにも対応しています。

そのほか、商工会議所など地域の創業支援機関と連携し、後継者不在の企業と起業希望者のマッチングもサポートしています。

親族内承継支援

親族内承継支援では、親族や従業員に事業承継をスムーズに進めてもらうために、地域の支援機関・金融機関と提携して、事業承継計画の策定をサポートします。具体的な流れは次のとおりです。

1.事業承継に取り組む中小企業に対して「地域の支援機関・金融機関による事業承継診断」や「エリアコーディネーターによる課題整理」を行う

2.承継コーディネーターやサブマネージャーが、課題を整理し、アドバイスする

3.税理士や中小企業診断士などの専門家と連携し、「事業承継計画」策定を支援する

後継者人材バンク

後継者人材バンクは、後継者不足の企業と創業を考える方をマッチングさせる取り組みです。後継者人材バンクを利用すれば、事業承継と起業の2つを同時に実現できます。創業希望者・後継者不在の事業者どちらにも、メリット・デメリットがあります。事業承継センターの公式サイトには、以下のように記されています。

■メリット
<後継者不在の事業所>
・事業を絶やすことなく、次世代に継承できます。
・事業存続を希望している従業員や顧客からの期待に応えられます。

<創業希望者>
・顧客や販売/仕入先、店舗などの経営資源を引き継ぐため、リスクを低く抑えられます。
・地域における知名度や経営ノウハウなど、目に見えない資産を引き継ぐことができます。

■デメリット
<後継者不在の事業所>
・親族への承継と異なり、様々な条件面での取り決めを行う必要があります。
・後継者に中小企業者等の思いを十分に理解してもらえるまでに時間がかかる場合があります。

<創業希望者>
・ゼロからの起業と比較すると、経営の自由度は低くなります。
・後継者として、中小企業者と今後の経営方針をすり合わせる必要があります。
・既存の店舗を引き継ぐような場合、規模や立地が制限されます。
・個人保証債務の引き継ぎが必要なケースもあります。

経営者保証に関する支援

経営者保証に関する支援では、経営者保証解除のサポートを受けられます。具体的な相談の流れは以下のとおりです。

1.事業承継に取り組む中小企業が、事業承継・引継ぎ支援センターに相談する
2.経営者保証コーディネーターが、経営者保証に関するアドバイスする
3.中小企業が信用保証制度の保証料の軽減を受ける
4.金融機関の判断によって保証解除

事業承継センターの事例紹介

第三者承継の事例:有限会社上市魚市場

仕出し専門店として、夫婦と数名のパート職員で営業していた「有限会社 上市魚市場」は、第三者承継により事業承継を成功させました。この事例の事業承継フローは以下のとおりです。センターの支援により不安が払拭され、双方納得の形で承継を終えました。

<事業承継の流れ>
1.社長夫人が当然倒れ、業務と看病の両立が困難となり、吉野町商工会に廃業を相談
2.廃業ではなく、第三者承継による譲渡を打診
3.吉野町商工会が、奈良県事業承継・引継ぎ支援センターに支援を依頼
4.センターが譲渡先企業を選定、両者の面談を実施
5.前経営者が契約時の要望書を作成、後継者が承認し、契約が完了
6.新店舗の従業員として再就職、新たな人生のスタートを切った

親族内承継の事例:佐藤米穀店

「佐藤米穀店」は先代経営者である祖母の高齢化をきっかけに、孫が事業承継を決意し、商工会議所・センターからの支援を受け承継を成功させました。この事例の事業承継フローは以下のとおりです。

<事業承継の流れ>
1.前経営者の高齢化に伴い事業承継の必要性を再認識
2.地元の金融機関が開催する事業承継の相談会に向かう
3.後継者が六戸町商工会に事業承継と補助金申請を相談
4.六戸町商工会が青森県事業承継・引継ぎ支援センターに支援を依頼
5.事業承継、事業承継・引継ぎ補助金申請のための書類作成を支援
6.開業届を提出し、事業承継は完了、補助金申請が採択された

まとめ

この記事では、事業承継センターの支援内容や支援事例を紹介しました。事業承継センターの支援により、廃業ではなく事業承継という選択を選び、事業承継を成功させている事例が多くあります。廃業や引継ぎを検討された場合、早めに地域の事業承継センターへ相談に行くと良いでしょう。

過去記事では、事業承継の流れを解説しているので、ぜひご参照ください。
事業承継の流れを7つのステップで解説!

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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