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事業譲渡で発生する税金の種類とは? 売り手と買い手、それぞれの税金対策を詳しく解説!

企業が事業譲渡をするメリットは、不採算事業の切り離しや資金調達を行えるところにあります。一方で、売り手と買い手の両方の企業に税金が発生します。

多額の税金が課されると、資金調達の期待額を得ることは難しくなります。

この記事では、事業譲渡の税金をなるべく抑えたいという方に向け、事業譲渡でかかる税⾦の種類と対策を、売り手企業と買い手企業の立場別にそれぞれ解説します。

事業譲渡でかかる税金の種類

事業譲渡とは、ある企業の事業の一部、または全部を他の企業に譲渡することです。事業譲渡で事業を売却した場合、売り手と買い手の双方の企業に税金が課されます。

ここからは、事業譲渡にかかる税金について、売り手と買い手のそれぞれの立場で一つずつ解説します。

売り手にかかる税金

事業を譲渡する売り手側に課される税金は、法人税と消費税の2つです。

・法人税
事業譲渡では、事業を売却することで得る利益に対して、法人税が課されます。

しかし、全ての対価に対して法人税が課されるわけでなく、譲渡する資産と負債の差額が、譲渡金額を上回っている場合のみに税金が課されます。

2023年最新の法人税率は23.2%なので、この税率を譲渡益にかけて算出されたものが、税金の金額になります。

・消費税
消費税は、譲渡する資産のうち、消費税の対象となるものに課される税金です。

譲渡する資産のなかで、消費税の対象になるものには、土地以外の有形・無形固定資産や棚卸資産、営業権(のれん)などが含まれます。

法人税とは異なり、利益に対して課税されるものではないため、たとえ譲渡企業が赤字の場合でも消費税が課されるということに注意しなければなりません。

算出方法は、譲渡代金から消費税の対象となる資産を差し引いたものに、消費税率10%をかけることで、消費税の納税額を計算できます。

買い手側にかかる税金

次に事業譲渡の買い手側にかかる3種類の税金について見ていきます。

① 消費税
買い手企業に課される消費税も、売り手企業の内容と同じですが、課税資産であるのれん代の上乗せや、消費税率の変動により、課される金額も上がる可能性があることも把握しておきましょう。

②不動産取得税
不動産取得税とは、土地や家屋を売買、贈与したときなどに発生する税金で、事業譲渡で譲渡された財産のなかに不動産が含まれている場合、買い手企業に対して不動産取得税が課されることになります。

不動産の所有権を取得した場合には、登記の有無や有償・無償に関わらず、不動産取得税が課されるため注意が必要です。

不動産取得税の税率は原則4%ですが、2024年3月31日までに取得した土地と住宅については、軽減税率として3%が適用されます。

また、会社分割や相続などの要件を満たしている場合、不動産取得税は非課税となることもあります。

③登録免許税
事業譲渡で譲渡された財産のなかに不動産が含まれており、なおかつ登記の書き換えを行う場合には、登録免許税も課されます。

買い手側は、譲渡された事業の認許可を全て新たに取得する必要があり、その認許可一つ一つにも登録免許税は課されることになります。

登録免許税の税率は、土地と建物のどちらも固定資産税評価額の2%です。

事業譲渡における税金対策

事業譲渡には、売り手と買い手の双方に税金が発生することがわかりましたが、これらの税金に対して、どのような対策を取ればよいのでしょうか。

売り手企業側の法人税の節税対策として、直接的な方法はありませんが、譲渡益によって課される金額が変わるので、会社が赤字状態であれば、赤字額と譲渡益が同額程度になるように調整することで、法人税を大幅に抑えられます。

また、事業譲渡の際に退職を希望する役員がいる場合、その役員に対して役員退職慰労金を支給すると、譲渡益の削減につながるため、節税対策になります。

役員退職慰労金は、退職所得控除や他の所得と分離できるなど、税負担を軽減するための措置が設けられているため、支給される役員にとっても利点があると言えるでしょう。

譲渡益を抑える方法として、事業譲渡を行う年度には諸経費を活用することも効果的です。

しかし、節税対策とはいえ、経費を使うことで会社に残る金額は減っていくので、必要なもののみに使用するようにしましょう。

一方、買い手企業の対策としては、営業権(のれん)を均等償却する方法があります。

営業権とは、事業の技術やノウハウ、顧客リストなどの事業価値のことを指し、事業譲渡時に譲受される資産の大半を占めています。

譲り受けた事業の価値を少しずつ返却していくことが営業権の償却となりますが、営業権の耐用年数は5年と定められているので、5年間にわたって均等に償却することで、法人税の税金課税対象である利益を5年間減らすことができます。

まとめ

本記事では、事業譲渡に伴い、売り手企業と買い手企業にそれぞれ発生する税金について解説しました。

税金の種類によって算出方法や対策も異なるので、効果的な節税対策を考える上でも、事業譲渡以前に自社の立場ではどのくらいの税金が課されるのかについて、正しく把握することが重要です。

過去記事では、事業譲渡の相場や、企業価値の算定方法についても解説していますので、ぜひご参照ください。
「事業譲渡の相場とは?企業価値の評価、算定方法をまとめて解説!」はこちら

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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