「格闘家が町を救ったヒーローになってほしい」 自身も格闘家として修行、初代タイガーマスクの長男の思い 大熊警備隊を立ち上げたヒーローたち

東日本大震災と福島第1原発事故で大きな被害を受けた福島県大熊町で3月、初代タイガーマスクが応援するプロジェクト「大熊警備隊」がスタートする。本物の格闘家が大熊町に移住し、警備員として収入を得ながら、「町の安全を守るヒーロー」としてトレーニングを積む。合弁会社「大熊警備隊」を設立したのは、コンサル企業「ARCOBALENO(アルコバレーノ)」 、警備会社「KSP」、事業プロデュース企業「ビジネスゲートウェイ」の3社だ。今回は初代タイガーマスクの佐山聡氏を父に持つ、アルコバレーノのマネージャー佐山聖斗氏(34)に話を聞いた。
目次
初代タイガーマスクは父でありヒーロー

──父・佐山聡氏の背中を、小さな頃からどのような思いで見つめてきたのでしょう。
幼少期は、格闘家としての父の偉大さはもちろん、初代タイガーマスクとは何かさえ、しっかりとは理解していませんでした。
ただ、自宅には多くのお弟子さんが訪れ、父を先生と呼んで指導を受けていたことを覚えています。
──初代タイガーマスクが自分の父だと、はっきり意識したのはいつごろでしょうか。
中学生になった頃です。
父はあまり家にいませんでしたから、私自身、格闘技にあまり興味を持つ機会がなく、父は「虎の仮面をかぶっている人」というくらいの認識だったのです。
父の偉業を伝えていくのが自分の使命
――佐山さん自身は、格闘技の経験はあるのでしょうか。
私は大学を卒業後、バスケットボール選手をしながら、広告代理店に勤務していました。
しかし、父がパーキンソン病で倒れたことにより、一変しました。
父の偉大さと、家族や格闘技への熱い思いを知り、バスケも仕事もすべて辞めました。
あらためて、父の姿を見つめ直しながら、総合格闘技を勉強し、当時父が開いていた「佐山道場」で3年間修行しました。
父の果たした偉業と格闘技にかけた情熱を多くの人に伝えていくのが自分の使命だと感じました。
──その後のキャリアを教えてください。
株式会社「初代タイガーマスクネットワーク」の代表として、父の商標やライセンスの管理に携わってきました。
2023年にコンサルファーム「アルコバレーノ」に入社し、現在はマネージャーとして新規事業創出支援などに取り組んでいます。
──現在、タイガーマスクの思いをどのように理解していますか。
父の功績をあらためて振り返ると、ゼロからイチを生み出すことの難しさを感じます。
世間的にヒーローと讃えられながらも、社会的な大きな評価に苦しんでいたのだと思います。
大熊町を格闘家が助けることに期待
──大熊警備隊の創設にあたり、どのような思いをお持ちでしょうか。
総合格闘技に携わる中で、自分とは何かを見つめ直す機会があります。
その際に私は、父の築いた格闘技界を守っていくこと、維持していくことへの責任を感じるようになりました。
そこに自分のアイデンティティを創っていきたいと考えました。
大熊町を格闘家が助けるという活動を聞いて、気持ちがアガりました。
格闘技に対して貢献でき、その品格を上げられるのならば、役立ちたいと強く思いました。
──格闘家の評価や地位を確立することの必要性は、格闘技界全体の課題にもなっているのでしょうか。
佐山道場で修行をして分かったのですが、一般の方は格闘家のすごさをあまり理解できていないと思います。
何千人、何万人という観客が見つめる会場に裸一貫で立ち、目の前には今にも自分を倒そうとしている相手がいるのです。
仲間や親など、自分を応援してくれる人からの大きなプレッシャーを背負いながら、是が非でも勝たなければいけないのです。
これは一般的な社会生活では得られない経験です。
もちろん練習も厳しいですし、試合の場に立つだけでも大きな勇気が必要です。
ですから「格闘家をナメるなよ」という強い思いがあります。
格闘家は商材ではありません。
まず格闘家として、その思いを理解していただきたいですし、社会からも、もっと高く評価されてよいと思います。
──「大熊警備隊」は、大熊町という、震災前後で大きく環境が変わった地域が活動の場になります。
これまで大熊町を訪ねたことはありませんでした。
このプロジェクトを進めるにあたり、初めて行ってみて、大きな被害を受けた住宅が現在も数多くあることに驚きました。
今も多くの人が戻ってこないという状況を聞いて、大きなショックを受けました。
一方で、大熊町の復興に、格闘家が貢献できることに、気持ちが高まりました。
初代タイガーマスクも全面的に賛同
──このプロジェクトについて、初代タイガーマスクの佐山聡氏は、どのように捉えているか聞いていますか。
大熊町に行くたびに話をしています。
父も格闘家ファーストですから、このプロジェクトに心から賛同し、応援してくれています。
自分の創った総合格闘技を続けている格闘家が協力し、地域や日本のために活動をするのは、すばらしいことだと語っています。
──「大熊警備隊」を今後、どのように展開していきたいとお考えでしょうか。
プロジェクトを通じて、格闘家という人間たちが、日本の町を救ったというヒーロー像を造っていきたいと思っています。
かつ、警備という新たな事業に関わる経験で、格闘家も変わって行ければと思います。
──格闘家の方と警備業の相性はいかがでしょう。
もちろん、格闘家が警備中に相手を殴ることはできません(笑)。
しかし、格闘家は殴られ慣れています。
力やその空気感を知っていることは大きな強みになると思います。
大熊町でこのプロジェクトに参加した格闘家は、さらに強くなることでしょう。
将来的には、引退後も大熊町で警備に携わる、格闘家のセカンドキャリアとしても期待をしています。
佐山聖斗氏プロフィール
株式会社ARCOBALENO(アルコバレーノ) 佐山 聖斗 氏
1990年生まれ。株式会社ARCOBALENO所属。株式会社初代タイガーマスクネットワーク代表。一般社団法人7代目タイガーマスク・プロジェクト代表理事。元Japan NFT Market代表。父は初代タイガーマスクの佐山聡氏。
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