COLUMNコラム
事業承継後の新規事業アイデアはどう生む?「日本交通」の実例を紹介 #3
事業承継後、新規事業を立ち上げて「さらなる利益の獲得」や「経営者候補の育成」に励みたいと考えている方は多いでしょう。この記事では、事業承継後の新規事業立ち上げ成功実績のある、日本交通 代表取締役会長 ※取材当時 川鍋一朗氏へのインタビューも踏まえて、新規事業のアイデア出しについて解説します。
目次
新規事業のアイデアに必要な要素
新規事業の立ち上げに際して必要とされるアイデア要素としては、主に以下の3点が挙げられます。
1.新規性
競合他社との差別化を図り、顧客に対して今までにない価値を提供できること
2.解決性
ただ新しいだけではなく、顧客ニーズを満たし、かつ顧客の悩みを解消できること
3.収益性
利益獲得を主たる目的とする企業として、継続した収益を上げられること
この3点を満たしてはじめて、適切な新規事業のアイデアが生まれるといえるでしょう。
日本交通の事例に見る、新規事業アイデアのインスピレーションの源
創業95年となる日本交通では、3代目経営者である川鍋一朗氏によって複数の新規事業が展開され、経営難であった日本交通の立て直しが実現しました。このアイデアはどこから湧いて出てきたのか、川鍋氏へのインタビューを一部抜粋して見ていきましょう。
海外出張から刺激を得る
川鍋氏は、海外出張で久しぶりにアメリカを訪れ、そこで受けた強いインスピレーションについて以下のように語っています。
「社内のエンジニア数名と一緒に、アメリカでUberを見に行くための海外出張を実施しました。アメリカにはなじみがあり、日本交通に入社してからは10年ほど、海外出張も行っていなかったものですから、久しぶりに行きたかったというのもあります。サンフランシスコ空港で触れることになったUberには強い衝撃を受けました。普通のお兄さんが『どうも!』『Hi!』ってコミュニケーションをとってくるんですよ。タクシーという概念そのものの根底がひっくり返った瞬間でした」
若手とコミュニケーションをとる
川鍋氏が日本交通に入社したのは30歳の頃、そして代表取締役社長に就任したのが5年後の2005年、35歳の頃です。同氏は自社の若手社員と交流を持つことで、自分にはないアイデアを複数取り入れられ、結果として新規事業の展開に役立つと考えました。
その当時を振り返り、川鍋氏はこのように語っています。
「社内でも若手の方、といっても、長年業務に従事してきたプライドを持っている皆さんと一緒にご飯を食べに行くんです。普段はいえないようなことでも、当時の私が若かったこともあり、皆さんさまざまな意見を出してくれました。『一朗さん、これはこう変えたらいいんですよ』と、多くの意見が出てきます。それで、ホワイトボードに書いたものの中から10個くらいに絞って、皆さんどうでしょう、と。そうして、それではチームを組んでやってみましょう、ということになったんです」
模倣する
川鍋氏は他社のシステムを模倣して自社タクシー事業に取り入れる、というやり方も採用しています。その時のことを、川鍋氏は次のように語っています。
「イノベーションは模倣だと、読んだことがあります。日本交通でも、模倣によるイノベーションを導入しようと思い、ドミノピザのアプリを参考にしたんです。ドミノピザって、単に住所だけではなく、お花見をしている上野公園のここに持ってきてほしい、という要望にも応えられるんですよ。これはタクシー事業でも似たようなことを導入できるな、と思いましたね」
新規事業のアイデアを磨く方法
日本交通の事例からわかるように、新規事業立ち上げに際してアイデアを磨くには、「アイデアの可視化」「差別化のポイント考証」「実現可能性の検証」の3点がポイントです。
アイデアを可視化する
まずは、出されたアイデアを概念から目に見える形に落とし込み、皆で改良・改善できるようにします。企画書とする、それをもとに会議を重ねるなどして、出されたアイデアをより良い形に磨き上げましょう。
差別化のポイントを考える
出されたアイデアに対して競合が多いケースもあれば、新規性の高いアイデアである場合もあるでしょう。いずれにせよ、自社の独自性が高ければ高いほど、そのアイデアの価値は高まるといえます。そのため、どのような点で他社と差別化を図れるかという項目も、アイデアの磨き上げにおいて重要です。
実現可能性を検証する
アイデアを磨き上げ、「新規性」「解決性」「収益性」のあるアイデアに仕上がったとしても、そのアイデアが実現するかどうかは別問題です。資金は十分か、人員はそろっているか、アイデアを実現できるだけのノウハウが自社にあるのかなど、実現可能性を検証する必要があります。
まとめ
日本交通のように、新規事業を立ち上げて成功に導くことは簡単ではありません。3代目として日本交通に入社した当初の川鍋氏は、「会員制のミニバン・ハイヤー事業」を展開する子会社を設立し、多くの赤字を出したという失敗経験も有しており、誰もが失敗する恐れは大いにあるのです。そうした経験を生かしつつ、アイデアを磨いていくことで、新規事業の立ち上げを成功に収められる可能性は高まるでしょう。
なお、新規事業についてはこちらの記事でも解説しています。併せてご覧ください。
「新規事業とは? アイデアを生むフレームワーク・プロセス・事例を紹介」はこちら
記事本編とは異なる特別インタビュー動画をご覧いただけます
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