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同族会社の事業承継で注意すべきこと4選――親族だからといって甘い気持ちで取り組むのはNG!

日本にある約421万の企業のうち、99.7%を占めるのが中小企業。その多くは「同族会社=特定の親族などが支配・経営する会社だといわれています。本記事では、親族に事業を引き継ぐうえで中小企業の経営者が知っておくべきポイントを解説します。

「同族会社」とは?

「同族会社」と聞くと「家族経営の会社」をイメージする人も多いと思いますが、この2つはイコールではありません。法人税法上の同族会社とは、「会社の株主の3人以下、および株主等と特殊な関係にある個人や法人が議決権の50%超を保有している会社」を指します。

簡単にいえば、「少ない人数が経営権を持っている会社」ということ。もちろん親族が承継している会社も同族会社といえるのですが、より厳密にいえば、長年働いてくれた従業員や親しい取引先などの場合でも同族会社になるケースがあるわけです。

本記事では、一般的によく使われる「同族会社=親族経営の会社」という意味のもと、話を進めましょう。
※ここでいう親族とは、配偶者および6親等内の血族、3親等内の姻族などを指します。

注意点① わが子でも甘く評価してはいけない!

ここからは、同族会社の事業承継における注意点を見ていきましょう。

1つ目は「家族であっても甘くしてはいけない」ということ。親族内の事業承継だと一番多いのが息子に引き継ぐケースですが、わが子を一人前の後継者に育てるためには、客観的なアドバイスを行ない、ときには厳しい指導をしなければなりません。

ところが、いざ自分の子どものこととなると、「父」としての対応が多くなってしまいがちです。

「まあ、言わなくてもわかるだろう」
「頑張っているし、厳しいことは言わないでおこう」

など、つい甘く評価してしまうこともあるでしょう。

しかし、そうした甘さによって、後継者候補(息子)が会社のお金を不正に使うようになったり、従業員や取引先が不信感を感じたりといった負の連鎖が生まれる実例も少なくありません。2代目経営者になったら会社がダメになる最大の理由は、「先代経営者の指導不足」といっても過言ではないのです。

もし「わが子だと、どうしても甘やかしてしまいそう……」という不安が少しでもあるようでしたら、対策を講じる必要があります。専門のコンサルタントに相談したり、外部の研修に参加させたり、厳しいことを言える幹部を指導役としてつけたりするとよいでしょう。

注意点② 準備は少しでも早く!

親族内で後継者が決まっていたとしても、少しでも早く承継の準備を進めることが大切です。具体的には、会社の現状の課題や経営数字を共有したり、営業現場を経験してもらったり、従業員や取引先・金融機関などに周知したりなどの準備があります。

もし後継者候補が複数かつ従業員の場合、早めに準備を始めることで競争意識が高まるとともに、経営に対する意識が社員に芽生える可能性もあります。

ただし、後継者にならなかった人にも重要なポストを与え、後継者を支えるよう促すことが大切です。いずれにせよ、事業承継は経営者が早期に中長期的な計画を策定し、後継者候補の育成、従業員や社外関係者への説明を徐々に伝えていく必要があります。

注意点③ 後継者以外の親族に配慮する!

同族会社の事業承継では、相続トラブルが起きることがあります。特に後継者以外の兄弟姉妹は後継者に対して不満や嫉妬を抱くことがあり、相続が「争続」に発展するケースも珍しくありません。

もうひとつ注意したいのは、遺留分の侵害です。経営者が個人の資産を後継者に相続した場合、後継者以外の相続人の遺留分を侵害することとなり、後継者が遺留分侵害額請求を受けるリスクもあります。

遺留分は遺言であっても侵害できない法律上保証された財産なので、事業用以外の資産を把握したうえで遺産分割の検討をする必要があります。また遺留分対策としては、後継者が推定相続人全員と合意を得ることを前提に以下の「遺留分に関する民法の特例」の適用を受けることが可能です。

除外合意:後継者が現経営者から贈与などによって取得した自社株式について、他の相続人は遺留分の主張ができなくなります。これによって相続紛争のリスクを抑えつつ、後継者に対して集中的に株式を承継させることができます。

固定合意:自社株式の価額が上昇しても遺留分の額に影響しないため、後継者の経営努力で株式価値が増加したとしても、相続時に想定外の遺留分の主張を受けるリスクがなくなります。ちなみに、両方を組み合わせることも可能です。

注意点④ 個人保証への対応を行なう!

金融機関から融資を受けるとき、経営者の個人保証が行われることがあります。事業承継では後継者が個人保証をすることになりますが、金融機関は現経営者と会社の現状・将来性を評価して融資しているので、後継者がそれに値する人物ではないと思われた場合、金融機関との交渉が難航する恐れがあります。

②でも述べたように、金融機関への周知はできるだけ早めに行ない、後継者との間に信頼関係を築けるよう尽力しましょう。

まとめ

後継者が親族だと、経営者もどこか甘く考えてしまいがちですが、事業承継においては親族でも第三者でも注意が必要です。適切な対策を講じなければさまざまな問題が発生するため、できるだけ早い段階で専門家に相談するようにしましょう。

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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