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事業承継の「挨拶状」に書く内容は?――取引先に好印象を与えるポイント

事業承継が完了したら、懇意の取引先などに対しては直接挨拶に行くだけでなく、挨拶状(挨拶文)を送付するのが通例です。挨拶文の作成に法的な義務はありませんが、事業をスムーズにバトンタッチし、良好な関係を続けるためには欠かせません。本記事では、挨拶文に最低限記載しておくべき内容と作成ポイントを解説します。

事業承継に挨拶文は必要?

事業承継(事業譲渡)後、取引先は「前経営者とは何か変わるのだろうか?」「これまで通り受注(発注)して大丈夫だろうか?」などとさまざまな不安を抱くものです。特に中小企業の場合、現経営者との信頼関係をあるからこそ取引を継続しているケースも多いでしょう。そんな状況で何の連絡・報告もせずに事業承継をしたら、何年、何十年と築いてきた信頼関係が崩壊してしまうかもしれません。

現在の価格での取引ができなくなったり、最悪の場合、そもそも取引が中止になったりする恐れもあります。そうした理由から、主要取引先には事業承継前に直接説明に行くとともに、後日挨拶文を送付するのが一般的です。重要度の高くない取引先であっても、挨拶文だけは最低限送付しましょう。

「たかが挨拶状」と思う人も多いかもしれませんが、日本は海外よりもビジネスマナーに厳しい傾向があり、丁寧・誠実な対応を行わない会社に対してマイナスイメージを持つ経営者も多くいます。挨拶文を送るデメリットはあえて挙げるなら「作成・郵送の手間がかかる」程度。親族内承継はもちろん、事業譲渡やM&Aによって代表者や会社の形態など変更が生じる場合は、挨拶状を必ず送るようにしましょう。

挨拶文に最低限記載すべき内容

事業承継(事業譲渡、株式譲渡)後に送る挨拶文に法的なルールはありませんが、最低限以下の内容を入れるのが基本です。

1. 冒頭の挨拶
2.事業承継・事業譲渡・株式譲渡の内容
3.送り主の所在
※事業譲渡・M&Aの場合は事業承継に関する内容を記載します。以下、詳しく解説していきましょう。

①文頭の挨拶

ビジネスレター上の形式的な挨拶で、以下のような文言が挙げられます。

・拝啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。 
・拝啓 貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。
・平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
・拝啓 貴社ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 
・拝啓 〇〇の候、貴社ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

「◯◯」の部分は、各月で代表的な季語を選びましょう。ここでは一例を載せますので参考にしてください。

・1月……新春の候
・2月……梅花の候
・3月……仲春の候
・4月……桜花の候
・5月……新緑の候
・6月……初夏の候
・7月……盛夏の候
・8月……立秋の候
・9月……新涼の候
・10月……秋晴の候
・11月……紅葉の候
・12月……師走の候

② 事業承継・事業譲渡・株式譲渡の内容

親族内承継の場合、「この度〇〇の後任として代表取締役社長に就任いたしました」といったように、事業承継を行った旨を記載します。このとき、後続の文章で「引き続きご愛顧いただけるよう、よろしくお願い申し上げます。」「今後とも倍旧のご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。」などと記載することで、これまでと同様の関係を築きたいという想いを伝えることができます。

事業譲渡の場合は、債権や債務の権利義務が変わる可能性があるため、「誰(どの企業)が事業を承継したのか」「いつ事業譲渡したのか」を記載する必要があります。株式譲渡の場合も、事業譲渡と同様、「誰(どの企業)に株式譲渡するのか」「いつ株式譲渡をしたのか」を記載しましょう。

③送り主の所在

事業承継によって本社の住所や問い合わせ先が変わる場合は、「どこの・誰に問い合わせればいいか」を記載します。なお、事業譲渡と株式譲渡では、「譲渡先の連絡先・問い合わせ先」を明記しなければなりません。

挨拶文はいつ・どうやって送るべき?

挨拶文は、事業承継後できるだけ早めに送付するようにしましょう。タイミングは数日以内、遅くとも1週間以内に送るのが望ましいです。また、送付方法はメールと手紙に大きく分かれます。近年は挨拶文もメールで済ませることが多いですが、手紙にしたほうがより好印象でしょう。最後に、くれぐれも誤字脱字には注意してください。特に承継した後継者の名前、譲渡先の社名、譲渡した日付などを間違えると再送しなければならず、事業承継後早々に信頼を失うリスクもあります。現経営者や後継者だけでなく、複数名にチェックしてもらい内容に不備がないか確認するようにしましょう。

まとめ

事業承継や事業譲渡が完了した際に送付する「挨拶状」は、取引先などの関係者と今後の関係を構築する(あるいは、現在の良好な関係を維持する)ためのスタートラインです。内容はシンプルで構いませんので、必要な項目を漏らさず記載し、誤字脱字に気をつけて作成しましょう。

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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