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中小企業における事業承継の注意点とは?

事業承継は「ヒト・モノ・カネ・情報」といった経営資源がすべて関わることであるため、承継前に、どんなリスクが生じる可能性があるのか、十分に把握しておくことが大切です。本記事では、中小企業の経営者と後継者(候補)が知っておくべき事業承継の注意点について解説します。

注意点①「さまざまな税金がかかる」

事業承継で課される税金はさまざまあり、その種類や額は「誰に」「どうやって」承継するのかによって大きく異なります。

具体的には、「親族」「従業員」「M&A」の3つの選択肢に分かれ、さらにその中で2、3に細分化されます。

①「親族」に事業承継する場合にかかる税金

親族に事業承継する場合、「譲渡」「贈与」「相続」のどれを選ぶかによって発生する税金は異なります。

「株式譲渡」の場合……
・後継者(子ども)に対して税金はかかりません。
・経営者(親)には、課税対象額(「譲渡によって得られた収入」から「取得・譲渡にかかった費用」を引いた額)に対して、20.315%の「申告分離課税」が生じます。

「株式贈与」の場合……
・経営者(親)には税金が発生しません。
・後継者には、株式の評価額に対して「贈与税」が生じます。

「相続」の場合……
相続によって株式を承継した場合、相続税がかかります。

②「従業員」に事業承継する場合にかかる税金

従業員や役員へ事業承継をする場合、一般的な方法が「株式譲渡」と「株式贈与」です。

「株式譲渡」の場合……
・後継者には課税されません。
・経営者には、譲渡所得に対して20.315%の「申告分離課税」が生じます。

「株式贈与」の場合……
・経営者には課税はされません。
・後継者は、株式の評価額に従って贈与税が課されます。

③「M&A」で事業承継する場合にかかる税金

M&Aによって事業承継する場合には、「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つの方法があります。

「株式譲渡」の場合……
買収先に企業売却を行う場合、株主は譲渡所得に対して20.315%の申告分離課税を納税します。

「事業譲渡」の場合……
・売り手には、売却によって得られた利益に対して「法人税」が発生します。
・買い手には、土地などの消費税がかからない資産以外の資産を売却した金額に対して消費税が発生します(実際に納税するのは売り手側です)。

こうした税金は、中小企業であっても数千万円、場合によっては億単位で発生する可能性があります。納税資金・株式買い取りの資金不足によって後継者が借金をするケースもあるため、事業承継を考え始めたら、同時に税金対策も検討することが大切です。

事業承継における具体的な節税方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
「知らなきゃ損! 事業承継で使える便利な「節税方法」とは」

注意点②「計画を立てないと失敗リスクが上がる」

事業計画は何年にもわたる取り組みのため、計画を立てておかないと進捗がわからず、うまく承継できない恐れもあります。

そこで、「いつ」「だれに」「何を」「どうやって」を整理して、事業承継を成功するための「事業承継計画書(表)」を作成しましょう。

事業承継計画書を作成することで、以下のようなメリットを得られます。

メリット①「現状を把握でき、中長期的な目標も明確になる」

事業承継は、自社の経営状況を客観的に見直す絶好のタイミングです。現状の経営資源や経営課題が明確になるため、経営方針にもブレなくなりますし、後継者のモチベーション向上にもつながります。

メリット②「現経営者と後継者で、認識を擦り合わせられる」

事業承継計画書には後継者を明記するわけですが、後継者としては書面に残してもらうことで、「自分がこの会社の経営を担うのだ」という意識が強まります。また、現経営者と後継者の認識のズレがなくなり、丁寧な議論を重ねる機会が生まれます。

メリット③「従業員や外部からの理解・信頼を得やすくなる」

事業承継計画書を作成してロードマップを描き、現状分析と中長期的なビジョンを示すことで、従業員や取引先、金融機関の理解・信頼を得やすくなります。

事業承継計画書を作成するステップは、こちらの記事からお読みいただけます。
「事業承継を成功に導くロードマップ!「事業承継計画書」の作成のコツとは?」

注意点③「先代経営者が影響力を持ち続けるのはNG」

中小企業の事業承継において注意したいのが、承継後も先代経営者が経営に関与し続けること。「まだ任せるのは心配」「自分がやったほうが速い」「取引先や従業員は自分の言うことなら聞いてくれる」といった思いから、ことあるごとに後継者の意思決定に口出しをする先代経営者もいます。

その結果、不満が高まった後継者と対立構造になったり、現場社員が愛想を尽かして退職したり……と、承継前よりひどい状況に陥ることも。

対策としては、先代経営者は本当に「会社のため、後継者のため」と思うのなら、思い切って「任せる勇気」を持たなければなりません。そうでないと後継者は成長できないどころか、愛想を尽かして辞めてしまう可能性もあります。

また前項で解説したような「事業承継計画書」を作成し、それに基づいて事業承継を進めれば、事業承継後も「こんなはずでは……」といった行き違いが起こるリスクを回避できるはずです。

まとめ

中小企業の事業承継では、さまざまな注意点があります。しかし、いずれも事前に知識を身につけて対策を講じることで、トラブルに発展するリスクを下げることができます。

「何から手をつければいいかわからない」という人は、本記事でも取り上げた「事業承継計画書」を作成し、やるべきことの洗い出しから始めてみてはいかがでしょうか。

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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