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サクセッション企業における新規事業の立ち上げを成功に導く3つのポイントとは

事業承継に関わるさまざまな側面から、系統立てた学びの場を提供する「サクセッションアカデミー」のSeason2 第4回講座が開催された。今回のテーマはInnovation(イノベーション)。株式会社フューチャーアクセス 代表取締役(共同代表)の黒田 敦史氏がゲスト講師として登場し、専門家の視点から、新規事業立ち上げを成功に導くポイントを語った。

50社以上の企業で新規事業を立ち上げ、20社超のスタートアップに携わったプロの手腕

学問としての事業承継を考える「サクセッションアカデミー」Season2の第4回講座が、2025年5月14日に東京・中央区の銀座スタジオで開催された。

事業プロデューサーとして活躍するゲスト講師の黒田 敦史氏は、「サクセッション企業における新規事業立ち上げ成功のポイント」をテーマにイノベーションの具体的な方法論を語った。

 「私は2013年に起業して以降、大企業を中心に、50社以上の企業で新規事業の立ち上げに立ち会ってきました。これと同時に20社以上のスタートアップ企業に関わり、現在も6社のスタートアップ企業の取締役を兼務しています」(黒田氏)

黒田氏が代表取締役(共同代表)を務める株式会社フューチャーアクセスは、サクセッション企業、事業承継者、もしくは事業承継準備中の会社に特化して、既存事業の抜本的な変革や新規事業の立ち上げをサポートする企業だ。

 「当社には、プロデューサーズギルドとして、事業変革のプロフェッショナルが約20名おります。企業の抱える課題に対して、チームでサポートし、一緒になって立ち上げることで、具体的な成果をもたらしています」(黒田氏)

サクセッション企業や事業承継者など、同社に相談を持ち掛けるケースの多くは、何かを変えなくてはいけないという強い思いを抱いているという。

一方で、経験不足などから、新規事業がうまく立ち上がらないという悩みが尽きない。

 「当社が推進しているのは、共創型の事業プロデュースです。コンサルやアドバイザーとしての立場ではなく、伴走型でもありません。はじめから最後まで、本当に一緒に作る、共創型なのです」(黒田氏)

共創型事業プロデュースは、事業面や資金面などの課題によって、新規事業が順調に立ち上がらない企業のために編み出された独自の手法だという。

サクセッション企業や、同社から選抜したチームリーダーとメンバーによる共同チームを結成。社内ベンチャーや合弁会社を立ち上げて、共同で事業設立・運営まで実施するのが特徴だ。

自社の強みを起点に、既存事業から切り出しながらも、母体企業のリソースを最大活用

左:株式会社フューチャーアクセス 代表取締役(共同代表)黒田 敦史 氏|中央:一般社団法人サクセッション協会 代表理事 原 健太郎 氏|右:同協会 フェロー 中山 良一 氏

サクセッション企業ならではの成功の要因、成功のポイントには、大別して3点があるという。その1つは、自社の強みを起点にすべきという考えだ。

 「一般的に新規事業は顧客の課題、つまりニーズを起点に考えるべきと言われます。しかし、サクセッション企業の場合、長年培ってきた独自の技術やノウハウ、顧客基盤といったシーズを既に持っています。この強みを最大限に活かすことが、成功につながるのです」(黒田氏)

ニーズ起点では他社と同じようなアイデアになりがちだが、シーズ起点であれば、他社と差別化された、より独自性の高い事業展開が可能だ。

2つ目は既存事業からの切り出しだ。

サクセッション企業は、既存事業内での立ち上げよりも、社内ベンチャーやジョイントベンチャーによる立ち上げが向いているという。

 「新規事業を既存事業の枠内で進めようとすると、既存の組織文化やしがらみに阻害されがちです。思い切って新規事業を社内ベンチャーにしたり、他の会社と一緒にジョイントベンチャー方式で運営したりすることで、意思決定の迅速化や新しい文化の醸成を図ることができます」(黒田氏)

ただし、完全に切り離すのではなく、母体企業のリソースは最大限に活用すべきだ。

 「切り出した新規事業であっても、母体企業が持つ技術、ノウハウ、顧客基盤、ブランド、人材、資金といったリソースは積極的に活用すべきです。これが、ゼロからスタートするスタートアップ企業にはない、サクセッション企業ならではの大きなアドバンテージとなります」(黒田氏)

自動車エンジン部品で世界シェアを誇る金属加工企業と新規事業を立ち上げに成功

同社が事業立ち上げに携わった、代表的な成功事例として挙げられるのが、信州・諏訪を本拠地に、80年以上にわたり金属加工を手がける株式会社小松精機工作所だ。

腕時計の部品製造で培った精密技術を自動車エンジン部品へと生かし、燃料噴射用ノズル部品(オリフィスプレート)では世界シェア約38%を誇っている。

独自の磁界式センサー技術を切り出して、社内ベンチャーとして2020年に株式会社ヘンリーモニターを立ち上げた。

 「代表取締役CEOの小松 隆史氏は、母体である小松精機工作所の専務も兼任しています。実は、3代目社長だった現会長のご子息で、4代目である現社長の従兄弟にあたります。株主構成は小松社長と、開発者で最高技術責任者CTOの中野 禅氏、小松精機工作所です。親会社の議決権はなく『金は出すが口は出さない』という体制を敷きました」(黒田氏)

経営チームには、創業時点から黒田氏らフューチャーアクセスのメンバーも参画。営業、アライアンス、製品、財務分野をサポートした。

資金調達は、母体の信用力を背景に銀行からの融資を受けるとともに、ベンチャーキャピタルや国の補助金なども活用した。

 「小松精機工作所が持つ独自の磁界式センサーにAIを組み合わせて、農場の土壌成分の分析や、金属部品の加工状態を分析するサービスを提供しています」(黒田氏)

小松精機工作所の事例は、サクセッション企業が持つ「強み(シーズ)」を活かし、「既存事業から切り出し」つつも、「親会社のリソースを最大限活用」することで新規事業を成功に導いた証しだ。

 「当社はサクセッション企業の新規事業立ち上げを、構想段階から事業化、そして成長ステージまで一貫してサポートします。お客様と共に汗をかき、共に悩み、共に喜びを分かち合う、共創型のパートナーとして、企業の新たな未来を切り拓くお手伝いをしています」(黒田氏)

黒田氏によると、サクセッション企業の場合、先代の経営者との関係性や社内のコンセンサス形成も重要だ。

先代の理解と協力を得つつ、新しい事業に対する社内のモチベーションを高めていくことも求められるという。

また、新規事業が軌道に乗るまでには時間がかかることを理解し、焦らずに取り組むことも大切だ。

資金繰りや組織体制の整備など、さまざまな課題に直面するが、粘り強く取り組むことが成功への道筋となる。

次回はファイナンスをテーマに6月4日(水)17:00から開催予定

プログラムでは、100社を超える企業インタビューの事例を基に、事業承継におけるイノベーションパターンを分析。

その成功事例から学ぶ第2創業とイノベーションの軌跡などについて、中山フェロー、原代表理事が講演した。

また、聴講者からの質問への回答など、講師3氏によるパネルディスカッションも開催された。

次回、Season2の第5回は、ファイナンスをテーマに6月4日(水)17:00から、銀座スタジオとZOOMウェビナーで実施予定だ。

以降、6月25日(水)には6回目の開催が予定されている。参加費は無料。

参加資格は賢者の選択サクセッションCLUB会員、サクセッションCLUB入会希望の事業承継当事者、株式会社ミギウデ開催のイベント「右腕の会」参加者などとなっている。

黒田 敦史 氏プロフィール

株式会社フューチャーアクセス 代表取締役(共同代表) 黒田 敦史(くろだ・あつし)氏

1974年愛知県大府市生まれ。京都大学経済学部卒業後、電気機器メーカー、コンサルタント会社などを経て2013年に独立・起業。大企業・中堅企業を中心に50社以上の新規事業立ち上げをハンズオンで支援。また、複数のスタートアップに創業時点から参画し、役員を兼務。福島県大熊町に移住し、町内にある大熊インキュベーションセンターのインキュベーションマネージャーを務める。

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