伝統を守り続けるか、時代の変化に乗るか、事業承継と経営改革の課題を探る

事業承継をテーマにした、経営者と専門家のコミュニティ「賢者の選択サクセッションCLUB」主催の「サクセッションMEETs」が、東京・千代田区の「レストラン1899お茶の水」で年始に開催された。27回目となる今回は、株式会社龍名館の専務取締役・濱田 裕章氏が登壇。濱田氏は、創業から120年を超える伝統企業における経営承継と変革への取り組みについて次のように語った。
目次
東京・神田の旅館からスタートし、ホテル、レストランに業容拡大
株式会社龍名館は1899年に現在の東京・神田駿河台で創業し、今年で127年目を迎える企業です。
創業当初は木造旅館からスタートし、現在はホテル3棟、レストラン3棟、不動産賃貸・管理8棟をファミリービジネスで展開しています。
近年は海外からのお客様も多く、環境への配慮にも注力しています。
2023年には、脱炭素の取り組み目標への妥当性を示す、第三者の認証「SBT認証」を国内のホテル・レジャー部門として、他社にさきがけて取得しました。
低迷時に事業承継し、新ホテルを開業に伴って企業を改革へ

私は、ホテル龍名館東京の開業準備のため2008年に入社しました。
当時は、ホテルレストラン事業の売上が落ち込み、事業を建て直していた時期でもありました。
新ホテルに建て替えた後は、採用活動や人事制度の見直し、新規部署の立ち上げなどに取り組みました。
企業として当然のことを一つずつ整備したのです。
これに比例して、この15年間は売上も堅調に推移しています。
父、叔父とのバランスのとれた関係性がポイントに
現在も、会長である父とは毎日顔を合わせ、よく話もします。
一方、レポートラインとしては、社長である叔父にすべてを伝えています。
何か協議が必要なことも、必ず社長を通します。
こうした私自身のポリシーを遵守していることもあって、他のファミリー企業でよく話題に挙がるような父と息子との確執といった問題はゼロです。
叔父を中心とした第三者の存在で父とはバランスとのとれた関係性が続いていると思います。
また、私の働くオフィスは隣接するビルにあり、近いながらも一緒ではないという、ほどよい距離感もよいのだと思います。
選ばれるホテルであり続けるために、ブランディングで差別化を
ホテル選びには、立地や会員制度、部屋の広さなど、重視するポイントがあります。
多数のホテルがあるなかで、当社が生き残るためにはブランディングが大切だと感じています。
そこで「1899」では、和食のレストランを生かしながら、さらに和のエッセンスを加えるためにお茶をテーマにした創作料理を提供しています。
今後は、VUCAなどへの対応、永続的なファミリービジネスの在り方を意識しながら、事業拡大を目指したいと考えています。
事業承継の当事者が、知識を持つ専門家と出会う場に
講演に先立ち、賢者の選択サクセッションCLUB事務局長の前田 雄大氏は、「『サクセッションMEETs』は、事業承継の当事者の方々と、専門家の知識とが出会う場として、開催を重ね27回目を迎えることができました。ぜひ交流を深めてください」と、主催者を代表して挨拶した。
当日は、各講演について、参加者を交えて活発な質疑応答、意見交換が行われた。
また、株式会社龍名館が運営する「レストラン1899お茶の水」の料理長 大久保 将史氏による料理説明、お茶飲み比べなど、充実したプログラムで開催された。
サクセッションCLUB:https://kenja-succession.com/succession-club/
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