COLUMNコラム
生成AIでクローン社長を作成、大阪の建設企業 国内で初めて事業承継に活用、セミナー登壇や採用面接にも登用へ
AIで作成したクローン社長を「事業承継」に活用する試みを、建設・不動産コンサル企業「進和建設工業」(大阪府堺市)が、国内で初めてスタートさせます。6月21日で会長になる現社長・西田芳明氏(72)の姿や人格をAIでそっくりにデジタル再現し、社長のノウハウや経営哲学を「本人のごとく」次世代に伝える狙いです。このほど開かれた発表会では、「クローン社長」が高いコミュニケーション能力を披露しました。
目次
社長がつちかった独自ノウハウを将来に
進和建設工業は、建設業のほか、不動産管理や資産コンサル業を手がける企業です。
西田氏は、1987年に35歳で父の後を継いで2代目社長に就任しました。公共工事主体だった進和建設工業を、住宅・マンションメーカーに生まれ変わらせ、資産コンサル業を導入するなど、事業を成長させました。
特に、「ローコストマンション」という安価なマンションの設計・事業化ノウハウを築きました。また、経験を生かした資産活用セミナーや学生向け講演会に約100回登壇しています。
ただ、こうした経営ノウハウは一朝一夕には後進に伝えられません。加えて、経営哲学などを将来にわたって伝えていくことが必要だと考え、自身のクローンをAIで作成することにしました。社長の高齢化や後継者難による廃業など、日本経済の課題となっている事業承継に一石を投じる目的もありました。
クローン作成は、AIでデジタル上の人格生成をするプラットフォームを開発した企業「オルツ」(東京都港区)に依頼し、今年4月から約2カ月かけてクローン作成を開始しました。オルツが独自に開発したLLM(大規模言語モデル)を用いています。
質問に即答、高いコミュニケーション能力
6月14日に大阪市でメディア発表会があり、AIクローンの社長が披露されました。画面に映し出されたクローン社長は、72歳の西田氏と姿や声もそっくりです。西田社長が執筆した9冊のビジネス著書や、会社の行動理念、会議やセミナーにおける西田社長の動画や音声、議事録などを学習してきました。
記者がクローン社長に「経営哲学を教えてください」と質問すると、西田社長そっくりの関西弁で「一番大切にしている経営哲学は人づくりやね。経営の要は人やから、主体的に行動できることが大事やね」と応じました。
「北新地は好き?」との質問にも「接待で使ってるけど、自分のリフレッシュにもなる」などと軽妙な答えを繰り出しました。
顧客面談や採用面接にもクローン登用?
今後、クローン社長は、西田社長との対話や、設計図面、技術ノウハウなどの学習を重ね、来年3月からは顧客面談やセミナー登壇、採用面接などに活躍し、2年後にはローコストマンションの設計・事業化や、経営アドバイスなどにも関わることを目指します。また、建築基準法なども学習し、法律の順守を徹底させるといいます。
西田社長は「今はまだ『赤ちゃん』だが、2、3年後には私と同じレベルの判断力やコミュニケーション能力を獲得すると思う。会社の理念を後世に伝えるとともに、未来戦略に生かしたい」と話しました。
新社長となる長男の西田泰久氏(46)は、新規事業の企画立案や実現が得意だといい、役割を分担しつつ、生産性向上に取り組んでいくとのことです。
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