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沖縄の伝統菓子「こーぐゎーしー」「こんぺん」を次世代に 平成末期までレジもないアナログ企業を父から継いだ「観光キャンペーンレディ」

那覇市中心部、観光客も多く行き交う牧志公設市場に続く商店街に1953年に開業した外間製菓所(株式会社外間さん家)は、「こーぐゎーしー」などに代表される沖縄の冠婚葬祭や年中行事に欠かせない郷土菓子を手作りで製造し続けている。元「那覇観光キャンペーンレディ」という経歴を持つ3代目・外間有里氏(33)は、郷土菓子を通じて沖縄の伝統文化を次世代に継承していくため、父から家業を継いだ。キャリアと事業継承の背景について外間氏に聞いた。

沖縄の行事ごとには欠かせない郷土菓子を作り続けて

沖縄の伝統菓子「こーぐゎーしー」(写真提供:株式会社外間さん家)

――外間製菓所の成り立ちと業務について教えてください。

太平洋戦争後、サイパンから帰国した祖父が、まず八重山諸島で修業を積み、その後那覇に戻ってきて1953年に創業しました。当社の主力商品は「こんぺん」といった琉球王朝から受け継がれる琉球菓子や、「かるかん」など行事菓子と呼ばれる沖縄の伝統的なお供え菓子でした。

那覇市中心部、第一牧志公設市場に続く商店街「市場本通り」に店を開き、以後71年ここで営業しており、私で3代目となります。

当社ではすべての郷土菓子を手作りし続けており、こういったお菓子を扱う店が少なくなっている中、地元からの支持をいただいています。

――外間代表は幼いころ、初代や2代目のお父様の仕事をどのように見ていましたか?

繁忙期には家族総出で作業にあたるのが日常で、私も幼少期から2人の妹とお菓子の袋詰めの手伝いなどをしていました。生活の一部にお菓子があったことが、伝統菓子を守っていきたいという現在の気持ちにつながっていると思います。

――家業を継ぐことについてどのような意識をお持ちでしたか?

継ぐ予定は全くなく、父の代で店は終わる予定でした。菓子店の商売は、休みもなく売上も不安定なので、父は公務員のような安定した職についてほしいと思っていたようです。

大学院での経験から芽生えた家業承継への意識

――どのような経緯で、家業を継ぐ決断をされたのですか?

大学を卒業後、観光業やサービス業に興味があったため、ブライダル企業に入社してウェディングプランナーになりました。その時、結納式で使われていたお菓子が家業の外間製菓所のものだったと知りました。

もともと起業を志していて経営を勉強したかったことと、ずっと沖縄にいたので県外に行きたいという気持ちもあって、ブライダル企業に1年半勤務してお金を貯めた後、東京の大学院に進学し、マーケティングを2年間学びました。

ゼミメンバーとのディスカッションで、「なぜ起業をしたいのか?」という話を深堀りした際、私はやはり沖縄出身というバックグラウンドがあることに気付きました。また、家業の話をするとメンバーに「その話をしているときが一番楽しそうでキラキラしているよ」「魅力を伝えたいことが伝わるよ」と言われたことがきっかけで、「このまま家業をなくしてしまってはいけないのでは?」と思うようになりました。

そこで、学業を終えて沖縄に戻る時に、家業を継ぐ意志があることを祖父と父に伝えました。

商売の難しさを知っている父からは「大変だぞ」とは言われましたが、何をどうやりたいかを具体的に説明したところ、両親も祖父も私を尊重してくれ、承継することに。引き続き祖父と父は製造で協力してくれることになりました。

――入社されてからの取り組みについて教えてください。

2018年に入社し、まずは店頭販売を担当して、どのように商品を売っているのかを把握しました。もともと家族経営の店で、社員は皆親戚ですし、商品も取引先も長い間ずっと変わっていませんでした。

商品単価が安いまま販売していて、会社というより「商い」という感じでした。赤字にはなっていませんでしたが、顧客も高齢化し、需要は下がっていました。

また、従来は売上をすべて紙に書いていたため、客層や客単価なども把握しにくい状態だったので、レジを導入しました。そして、雑然としていた陳列に、POPを導入するなどして商品の見せ方も変えていきました。

家族で行事菓子を楽しんでもらうためのリブランディング

主力商品である、沖縄の伝統菓子を9種類詰め込んだお供え菓子セット(写真提供:株式会社外間さん家)

――代表取締役就任後はどのような取り組みを?

1年後の2019年、代表取締役に就任してからまず取り組んだのは、店のリブランディングです。行事菓子を家族で楽しんでもらいたいと、子どもにも親しみを持ってもらえるように、店のロゴを「ほかませいか」と平仮名で作成しました。

また、パッケージも刷新しました。主に単品売りだった商品を、お土産や贈答用にしやすいよう箱売りにして販売したところ、客単価がアップしました。

セット販売には他にも利点があります。伝統的に、お供えではお菓子の個数にも意味がありますが、若い人は知らないことも多いです。それが、セット販売を始めたことで「これを買えばお姑さんに怒られない」といった安心感を提供できるようになったと思います。

パッケージ内には、行事ごとについて説明の冊子を入れています。伝統行事が形骸化して廃れかけている中、これまで大切に伝えられてきた沖縄の文化を残していきたいと思っています。

ギフト用箱入り「こんぺん」は、沖縄の事業者が開発した商品の中から選定される「那覇市長賞」の食品の部で2020年、優秀賞を受賞しました。

客層を広げるため始めたSNS活用やECサイト開設

――他にも注力したことはありますか?

地元中心から顧客の幅を広げるため、FacebookやInstagramといったSNSの活用も開始しました。カメラが得意なスタッフと、デザインも意識しながら商品をPRしています。

ECサイトも開設し、そのおかげでコロナ禍でもなんとか持ちこたえることできました。

また、接客を担当していた叔父の頭の中にしかなかった顧客情報をデータベース化しました。スタッフと顧客データを共有することで、常連のお客様にも適切な対応ができるようになりましたし、コロナ禍でお客様に電話営業をする際にも役に立ちました。

コロナ禍は顔を合わせての冠婚葬祭の行事は少なくなりましたが、お店に直接買いに来られないお客様に商品の発送を提案し、売上につなげることができました。

もしデータベース化していなかったら、もうお会いできていなかったお客様もいたかもしれない。そのことを考えると、お客様のデータは財産だなと改めて感じます。

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外間有里氏プロフィール

株式会社外間さん家 代表取締役 外間 有里 氏

1991年、沖縄県那覇市生まれ。2014年琉球大学法学部を卒業後、株式会社沖縄ワタベウェディングに入社。2016年から事業構想大学院大学で2年間マーケティングを学び、2018年、外間製菓所(株式会社外間さん家)に入社。2019年に株式会社 外間さん家の代表取締役就任。2021年に那覇市議会議員に立候補し、当選。以降、経営者と議員という二足のわらじで活動している。

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