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「後継者にも起業家精神は重要」「第2創業です」 市議会議員の顔も持つ30代の3代目女性社長、沖縄の伝統菓子を未来へ

那覇市中心部に店を構え、3代にわたって沖縄の伝統菓子の製造販売を行っている外間製菓所。郷土菓子を通じ、沖縄の伝統文化を残していくため、代表取締役就任後から様々な試みを行っている外間有里氏(33)は、経営者であると同時に那覇市議会議員という顔も持つ。地方議員として、沖縄の事業承継や伝統産業の将来像についての考えを聞いた。

「言わなくてもわかる」家族経営からの変革

外間製菓外観、沖縄県那覇市(写真提供:株式会社外間さん家)

――代表就任後に顧客獲得のために、どのようなことを行いましたか?

それまでは地元客がほとんどでした。国際通りや牧志公設市場に近く、観光客もいるのですが、通りかかったお客様が偶発的に店に立ち寄って商品を購入する程度でした。

このため、目的地として来店してもらえるよう、店舗改装でイートインスペースを設置しました。そのスペースで「手づくりちんすこう体験教室」などを開催しています。

菓子作りの文化を子どもたちや若者に伝えることに役立ち、また当店の「機械製造ではない手作りの菓子」という強みをアピールできる場にもなっています。おかげで、観光客の売上比率が3割から4割へとアップしました。

――社員の変化はありましたか?

はい、以前は親戚などの血縁者だけで店を商っていたのですが、販売スタッフの年齢層が高くなっていました。彼らには製造に異動してもらい、新しく外部スタッフを採用しました。

新たに採用したのは5人ですが、製造・販売だけでなく、デザインやSNS発信などにも対応してもらっています。

それまでは「言わなくてもわかる」というような家族経営だったのですが、業務マニュアルを作成して社員で共有できるようにしたことも大きな変化でした。

若い世代に向けた新商品の開発

――新たに開発した商品について教えてください。

沖縄のハレの日のお供え物として欠かせないお菓子「こーぐゎーしー」は、伝統的なものだと大きすぎて、私たちの世代からすると食べにくいイメージがありました。そこで1年半ほどかけて新商品を開発しました。

「こーぐゎーしー」を食べやすい一口サイズにし、シークヮーサーやグァバなどのトロピカルな味付けを加え、パッケージもおしゃれにした「ニューこぐゎーしー」の販売を開始しました。現在、ブライダル関係で取り扱いが増えるなど、新たな展開につながっています。

――売上に変化は?

事業承継したタイミングからは、売上は上がっています。材料費の高騰もありましたが、販売価格を見直し、利益比率としては10〜15パーセントは上がりました。

――家族経営からの変革によって、変わったことはありますか?

2022年から家族や親戚以外のスタッフを雇用したことで、「会社」という考え方ができるようになりました。これまでは休みなしに働いていましたが、労働環境も改善できたと思います。

市議会議員として取り組む、事業承継問題とまちづくり

新商品「ニューコーグヮーシ」(写真提供:株式会社外間さん家)

――外間代表は市議会議員としての顔もお持ちですが、なぜ市議会委員になられたのですか?

私自身、商店街のお店の事業承継者として、「まちづくりのあり方への疑問に対して、当事者意識を持って訴えたい」と、2021年に那覇市議会議員選挙に初めて立候補し、当選を果たすことができました。現在は経営者と市議会議員の二足のわらじで活動しています。

沖縄は全国平均に比べて経営者の年齢層が高く、高齢化で事業承継がうまくいかず、廃業する店が多くあります。

コロナ禍がそれを加速させましたし、現在も物価高に対応しきれず、事業承継は難しいと考えているお店がたくさんあります。

後継者を育てずにやめてしまう経営者も多いのですが、本当は「終活」のように、事業承継のため早めから動いてほしいと思います。現在、事業者支援なども行いながら、今後まちをどうしていくか、商店街の活性化に取り組んでいます。

私自身、もともと起業したいという意志がありましたが、事業承継にも起業家精神は大事だと思っています。自分はただ「受け継ぐ」のではなく、次のフェーズへと移行する「第2創業」のつもりで承継しました。

議員としては、事業承継問題を単発で扱うというよりも、起業支援の文脈の中でマッチングさせていく必要があると考え、今取り組んでいます。

商店街としても、事業を承継させるだけでなく、新しいものが生まれていく街であってほしいという思いもあり、引き続き挑戦していきたいと思っています。

時代のニーズに合わせ、100年続く店を目指して

――今後のビジョンについてお聞かせください。

外間製菓所は2024年に70周年を迎えました。郷土菓子を通して、地域の文化を残していきたい。そのために、まず「100年続ける」というのがビジョンとしてあります。店を拡大していくというより、大きく変化する時代のニーズに合わせてやっていこうと思っています。

沖縄の食文化の伝承のため、学校や保育園などで伝統菓子や行事ごとについてお話する機会も多く、伝統文化発信も積極的に行っています。これまでは私が担当することが多かったのですが、昨年からスタッフも講師として対応できるようになりました。こうして、発信していく人を増やしていけたらと思います。

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外間有里氏プロフィール

株式会社外間さん家 代表取締役 外間 有里 氏

1991年、沖縄県那覇市生まれ。2014年琉球大学法学部を卒業後、株式会社沖縄ワタベウェディングに入社。2016年から事業構想大学院大学で2年間マーケティングを学び、2018年、外間製菓所(株式会社外間さん家)に入社。2019年に株式会社外間さん家の代表取締役就任。2021年に那覇市議会議員に立候補し、当選。以降、経営者と議員という二足のわらじで活動している。

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