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裁量労働制、20年ぶりに新たな業務が加わる 「本人の同意」全ての職種で必要に

2024年4月1日から、裁量労働制のルールが見直された。労働者の働きやすさを重視した整備が進む一方で、就業条件の明示や同意の義務付けなど、企業側には対応が求められる。柔軟な働き方を取り入れることで、人材不足の解消に繋がる可能性もある。

裁量労働制の対象が拡大、本人の同意が必要に

裁量労働制は、あらかじめ設定した時間に労働したとみなす制度だ。1日に実際に働いた時間が何時間かによらず、「みなし労働時間」分を働いたとし、労働基準法の上限を超えない範囲であれば、設定した時間分の賃金が支払われる。

勤務時間が労働者個人の裁量に委ねられ、時間に固定されない働き方で、生産性を高めるのが目的だ。対象となる業務は「企画業務型」と「専門業務型」の2タイプがある。

今年4月のルールの変更点は大きく3つある。

1、専門業務型の指定職種にM&A業務が加わる。

専門業務型の適用範囲が拡大され、新たに金融会社や証券会社でのM&Aに関するアドバイザリー業務が加わる。これまで弁護士や証券アナリスト、プロデューサーや大学教授などの職種で19業務が指定されていたが、約20年ぶりに追加されて20業務となった。株式譲渡や事業承継の相談・助言など業務の専門性の高さが理由だ。

2、専門業務型でも労働者本人の同意が必要に。

経営企画や営業、人事、労務・財務、広報などの職種で、企画、立案、調査、分析を行う業務が該当する「企画業務型」は、以前から労働者本人の同意が必要であった。

対して、「専門業務型」は労働者本人の同意は不要だったが、今後は必須となる。企業側は労働者に対して、制度の内容や賃金・評価制度を明示しなければならない。

なお、労働者は一度同意をしても撤回できる。裁量労働制に同意しなかった労働者に対する不利益な取扱いも禁止される。

3、労働者の健康確保の措置が求められる。

深夜労働の回数制限や労働時間の上限規制などが、裁量労働制で働くすべての労働者に適用される。一定の労働時間を超えた場合には、医師の面談を実施するなど、個別の措置も必要になる。

労働者に配慮しつつ、柔軟な働き方の拡大を目指す

そもそも裁量労働制は、就業時刻を固定した働き方が難しい一定の職種につき、柔軟な働き方を認める目的で導入された。残業代が固定化され、企業側が人件費を管理しやすくなる一方、長時間労働を助長するとの指摘がされてきた。

今回の改正の背景には、働き方改革の社会浸透や労働力不足、仕事への価値観の変化がある。労働者の健康に配慮しつつ、個人の裁量で働ける仕組みを整えれば、生産性の向上も期待できる。

裁量労働制は、入社年次に縛られない評価制度「ジョブ型」との相性も良い。長時間労働の防止や本人同意の管理によって企業の負担は増えるが、人材不足に悩む中小企業にとっては、優秀な人材の獲得などで裁量労働制の導入が活路を開く可能性もある。

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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