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節税効果あり! 「一般社団法人」を活用した事業承継とは?

相続税や贈与税の支払いをはじめ、さまざまな費用がかかる事業承継。その費用を賢く抑えることが、事業承継を成功につなげるカギの一つとなります。費用を抑える方法の一つが「一般社団法人の活用」です。本記事では、一般社団法人を活用した事業承継の仕組みを解説します。

「一般社団法人」とは?

一般社団法人は、ある目的を持った人の非営利団体で、法人格の一つ。単なる集まりではなく、一般社団法人として法人格を持つことで、法人名義で契約を結ぶことが可能となります。大きな特徴は、2名以上の社員と1名の理事が必要になること。法律では「人が集まることによって設立できる」と規定されています。株式会社や合同会社が1名で設立できるのとは対照的です。

なお、一般社団法人の社員には、個人だけでなく法人も就任可能です。一般社団法人を設立するには、株式会社と同じように法人登記が必要です。2人以上の設立時社員が定款を作成し、公証人による定款認証を受けることで設立となります。

一般社団法人を活用した事業承継

ここからは、一般社団法人を事業承継に活用する方法を解説しましょう。ひと言で言うと、事業承継する会社の株式を一般社団法人が保有し、一般社団法人の代表の地位を後継者に引き継ぎます。事業承継時の相続税・贈与税は、現経営者から後継者に株式を移転することに対してかかるもの。そこで、後継者に株式を移転するのではなく、一般社団法人に株式を移転する方式をとるのです。

この方法を使えば、一般社団法人が株式を保有することになるため、株式の相続は発生しません。後継者が一般社団法人の代表理事を務めることで、事業を支配することが可能となります。なお、一般社団法人を活用した事業承継には、「直接保有型」と「間接保有型」の2パターンがあります。

①一般社団法人が持株法人になる「直接保有型」

1つ目の「直接保有型」は、一般社団法人が持株法人になるパターンです。一般社団法人が「事業承継する会社」の株式を100%取得し、持株法人となります。株式を100%保有しているため、一般社団法人の代表者は対象会社を完全に支配できます。

②一般社団法人が持株会社の株主になる「間接保有型」

2つ目の「間接保有型」は、一般社団法人が持株会社の株主になるパターンです。一般社団法人が「事業承継する会社の持株会社」の株式を100%取得します。直接保有型とは異なり、一般社団法人と対象会社の間に持株会社が存在することとなります。

一般社団法人を活用した事業承継のメリット

一般社団法人を活用した事業承継の最大のメリットは、前述の通り、相続税・贈与税が発生しないことです。一般社団法人には株式がなく、その支配権は社員に帰属しています。一般社団法人から後継者への事業承継も、株式の移転によってではなく、社員の交代によって行われます。だから相続税・贈与税がかからないのです。

「平成30年度税制改正大綱」による規制に注意!

事業承継時にかかる相続税・贈与税の節税が可能となる、一般社団法人の活用。実はこの方法は、「平成30年度税制改正大綱」によって規制されることとなりました。「平成30年度税制改正大綱」とは、親族によって支配されている一般社団法人を個人とみなし、相続税を課税するという内容。

これまでとは異なり、一般社団法人を活用した事業承継はメリットだらけ……というわけにはいかなくなっています。一般社団法人を活用し、事業承継時にかかる税金を節約したい場合には、専門家に相談しながら進めるのがよいでしょう。

一般社団法人を活用した事業承継の流れ

事業承継時に一般社団法人を活用するには、一般的に次のような流れで進めることとなります。
1.現経営者が代表者となる一般社団法人を設立する
2.一般社団法人に株式を移転する
3.後継者が一般社団法人の代表者に就任する

ここまで解説してきた通り、基本的には「一般社団法人を設立」→「自社株式の移転」→「後継者が代表者に就任する」の流れとなります。

一般社団法人の代表者選任の流れ

一般社団法人の代表者を選任する際には、社員総会の開催が必要です。社員総会で議決権の3分の2以上の賛成が得られた者が代表者になります。後継者が3分の2以上の議決権を持ち、自らを代表に選任すれば、事業承継は完了です。

まとめ

一般社団法人を活用した事業承継は、相続税・贈与税の節税に大きなメリットがあります。事業承継の流れがシンプルであることも魅力の一つでしょう。その一方、「平成30年度税制改正大綱」によって規制がなされたことに注意が必要です。一般社団法人を活用した事業承継を検討する際には、専門家のアドバイスを受けながら進めることをおすすめします。

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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