COLUMNコラム
どう扱うべき?事業承継をする前に知っておきたい「棚卸資産」の基礎知識
会社が所有する資産である「棚卸資産」。商品や製品、仕掛品、原材料から消耗品までが棚卸資産に含まれます。そんな棚卸資産は、事業承継においてどのような扱われ方をするのでしょうか? 本記事では、事業承継をするうえでの棚卸資産の扱いについて解説します。
目次
棚卸資産とは
棚卸資産とは、いわゆる「在庫」、会社が所有する「資産」のこと。企業が販売目的で仕入れたもののうち、まだ販売されないまま社内に留まっている商品・製品・原材料・仕掛品の総称です。なお、販売予定のものだけでなく、企業が収益を得るために使う事務用消耗品なども棚卸資産に含まれます。
棚卸資産の具体例として、次のようなものが挙げられます。
・商品、製品(すでに完成済みで、すぐに販売できる状態のもの)
・仕掛品(商品や製品の作りかけのもの)
・原材料(商品や製品のもととなるもの)
簿記会計において、仕入れた商品などは費用として計上され、販売されたら収益として計上されるのがルールです。一方、決算時にまだ収益が得られていない「棚卸資産」については、販売されるまで資産として処理し、貸借対照表(バランスシート、B/S)の「資産の部」に計上することとなります。企業が抱えている棚卸資産は、決算のとき、正確な数と評価額を一覧にして提出しなければなりません。正確な数を把握するために「棚卸業務」という作業が行われます。
棚卸資産は「流動資産」に分類される
「資産の部」は以下の2つに分類されます。
1.固定資産
土地や建物など、長期間にわたる所有・使用が見込まれる財産。
2.流動資産
預金や売掛金など、社内への出入りを繰り返し、常に変動するとともに、短期間で現金化できる財産。
このうち、棚卸資産は流動資産に分類されます。すぐに現金化できますし、仕入れて売り、なくなればまた仕入れるものだからです。
棚卸資産に該当する資産とは?
棚卸資産に該当する資産には、以下のようなものが挙げられます。
・商品:商品を仕入れ、そのまま販売する業種において、仕入れた商品が販売されないまま残っている
・原材料:加工を前提として仕入れた原材料が、加工されることなく残っている
・半製品や仕掛品:加工を前提として仕入れた原材料が、加工の途中で残っている
・製品や完成品:加工は完了したが、まだ販売されずに残っている
・主要原材料や補助原材料:本体を製造するために使ったり、製品製造に補助的に使ったりするもの
・消耗品で貯蔵中のもの:手つかずの消耗品(切手やコピー用紙など)
棚卸資産を評価する2つの方法
棚卸資産を把握したら、評価額を計算して決算書に記載します。棚卸資産の評価方法には「原価法」と「低価法」の2種類があり、申請がない場合は原価法が採用されます。
・原価法:対象在庫を購入した際の原価(取得原価)を基準にする方法
・低価法:「対象在庫を購入した際の原価」と「その時点での原価」のうち、安いほうを採用する方法
原価法での評価においては、棚卸資産の取得原価を求める必要があります。取得原価は、次の5つの評価方法のうち、いずれかで求めることとなります。
・個別法
一つひとつの商品を仕入時の価格のまま評価する方法。それぞれの評価が必要になるため、棚卸資産の数が多い場合には手間がかかる。
・先入先出法
仕入れた時期が早いものから順番に販売、使用されているものと考えて計算する方法。資産の流れ(商品販売の流れ)と一致しやすいため、管理しやすい。消費期限のあるものの管理や、安定した原価で仕入と販売(製造)を繰り返す事業に適している。
・最終仕入原価法
期末に最も近い仕入時の価格を取得価額とする方法。価格の変動が小さい場合や、期末にまとめて仕入をした場合に適している。期末になるまで評価することができないのが難点。評価方法を選択しなければ、最終仕入原価法によって評価される。
・売価還元法
異なる棚卸資産を値入率や回転率によってグルーピングし、加重平均をする方法。商品数の多い業種では、管理の手間を減らせるのがメリット。
・平均原価法
棚卸資産の原価を平均して評価額とする方法。一定期間を設けて期間ごとの平均原価を計算、総平均原価を算出する「総平均法」と、在庫が移動するたびに平均原価を計算する「移動平均法」がある。
事業承継における棚卸資産の扱いとは?
個人事業の事業承継における棚卸資産の扱いを解説しましょう。個人事業では、棚卸資産をはじめとした事業に必要な資産は、個人が所有していることになります。そのため、事業承継する際には、事業用資産も後継者に譲渡する必要があります。その際、譲渡が有償か無償かによって税金がかかってきます。
・有償で譲渡した場合:譲渡された人(後継者)が所得税を納める義務が発生
・無償で譲渡した場合:譲渡する人(先代経営者)が贈与税を支払う義務が発生(年間110万円の基礎控除額を差し引いた金額が対象)
まとめ
事業承継する前の段階であれば、「棚卸資産」という言葉すら聞いたことがない……という方も多いでしょう。製造業でなければ関係がないと考えている方もいるかもしれません。しかし棚卸資産には、事務用品などの消耗品も含まれるため、どの企業にも関係のある話です。経営者になる前に、棚卸資産の概要をしっかりと把握しておきましょう。
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