COLUMNコラム
営業譲渡の仕組みや流れ、事業譲渡との違いを解説!
事業を売却する手法として、営業譲渡が存在します。事業を他社に売却することで自社から切り離し、コアコンピタンス経営に切り替えたり、利益の出ない事業を明け渡したりすることが可能です。この記事では事業承継の一つとしても活用される、営業譲渡のメリットやデメリット、流れなどを解説します。
目次
営業譲渡(営業権譲渡)と事業譲渡について
営業譲渡(営業権譲渡)とは?
営業譲渡とは、自社事業の一部を他社に譲渡することです。中小企業の間では、株式譲渡に次いで利用されている手法です。財産や債務、営業資産やマニュアル・ノウハウなど有形・無形に関わらず対象となります。なお対象は、買い手と売り手の会社の間で自由に取り決められます。
営業譲渡のメリット・デメリット
不要な資産や簿外債務を引き継がない点が、営業譲渡のメリットです。引き継がないことで負債や利益の出ない事業などを切り離せるほか、メイン事業以外の引き渡しにも利用できます。また、営業権や引継ぎ資産が償却できるところも利点となります。さらにのれん代を5年間均等償却し、損金として計上すると、法人税の節税も可能です。
一方、営業譲渡をするために株主総会を開き、特別手続きを実施しなければならない点がデメリットです。上場企業が株主総会を開催する際は、大きなコストが発生します。また株主総会を実施したとしても、確実に決議が下りることは多くありません。債務の移転についても債権者一人ひとりに同意を得る必要があり、各契約の引継ぎも困難です。
ただし上記のデメリットは上場企業ならではのトピックであるため、中小企業の場合はそれほど大変な手続きではありません。そのため、営業譲渡は中小企業により合った方法といえます。
営業譲渡と事業譲渡の違い
2006年、会社法により「営業譲渡」は「事業譲渡」の名称に変わりました。つまり双方は同じものといえます。現在は事業譲渡と呼ばれることが一般的ですが、商法が関与する場合のみ、営業譲渡と呼ばれます。
営業譲渡の仕組み
営業譲渡が行われる流れ
営業譲渡の大まかな流れは、以下になります。
・買い手企業の選定・交渉
・基本合意書締結
・デューデリジェンス(買収監査)
・各書類の提出
・株主総会の特別決議
・監督官庁の許認可
・各事業の名義変更
営業譲渡を行う際に必要なことは、まず買い手企業を選び、取り引きするための打診を行うことです。打診の前は、あらかじめ営業譲渡の目的をはっきりさせておきましょう。交渉がある程度合意されれば、次に基本合意書の締結を行います。交渉を行う企業が複数の場合は、基本合意書の締結よりも先に、買い手企業が売り手企業を監査する、デューデリジェンスを行いましょう。
締結が完了した後、株主に通知や公告を行い、株主総会を開催します。譲渡する事業が重要な場合、売り手企業は必ず株主総会を開く必要がありますが、買い手企業は事業の一部を譲渡される場合に限り、開く必要はありません。ただし、全ての事業を譲渡する場合は、買い手企業も株主総会の特別議決権を開く必要があります。特別議決権では、過半数以上の株主が出席し、3分の2以上の賛成を得る必要があります。
特別議決権が終わったら、許認可と名義変更の手続きが必要です。譲渡された企業は、関係する監督官庁に許認可の申請を行う必要があります。許認可の必要性や所要時間は事業の内容によって異なるため、事前に調査し注意が必要です。最後に、権利や債務などの名義を買い手企業に変更し、手続きは完了となります。
営業譲渡の相場、評価額の算定方法
営業譲渡をする場合、売り手と買い手の希望額によって最終的な価格が決まることになりますが、ただ希望額を提示しあうだけでは取引はまとまらないでしょう。そこで重要になるのが相場です。相場は企業価値評価(バリュエーション)と呼ばれる算定結果ではかります。バリュエーションの算定方法は大きく分けて以下の3つです。
・コストアプローチ
・インカムアプローチ
・マーケットアプローチ
まずコストアプローチですが、この方法は企業の純資産をもとに計算され、比較的簡単に算出できる点と、客観的な価値を計算できることがメリットです。コストアプローチのバリュエーションは主に「時価純資産価格法」と「修正簿価純資産法」という方法があります。
次にインカムアプローチです。インカムアプローチは売手企業が将来獲得できるであろう収益を、リスクなどを計算に入れて割り引いた上で企業価値として用います。方法としては「DCF(Discounted Cash Flow)法」や「収益還元法」などがあり、特に将来のキャッシュフローを現在価値に割り引くDCF法は広く利用されています。
最後にマーケットアプローチです。株式市場で成立している価格や、過去に成立した価格などの事例を参考にしてバリュエーションを決定する計算法で、「類似会社比較法」と「類似取引比較法」の2種類があります。
なお、事業譲渡の価格は「時価純資産×営業権(のれん)」を評価額とする計算方法を用います。営業権の算出方法は「事業利益×2~5年分」で計算することが多いようです。
営業譲渡における負債や税金の取り扱い
営業譲渡をする際には、売り手側、買い手側ともに税金を納める必要があります。売り手企業に譲渡益がある場合には法人税が課税されます。買い手企業は消費税のほか、不動産取得税や登録免許税などの支払いが必要です。負債に関しては事業に必須なもの以外は譲渡を受けなくても構いません。また、負債は消費税の課税対象とはなりません。
まとめ
この記事では営業譲渡のメリット・デメリットや、その流れについて解説しました。営業譲渡、つまり事業譲渡は事業承継に活用される手法であり、後継者問題を抱えている企業や、そのような企業を承継したいと思っている企業にとって、知っておくべき知識と言えます。
過去の記事にて、事業承継の流れを解説しているので、詳しく知りたい方は、ぜひご参照ください。
(「事業承継の流れを7つのステップで解説!」)
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