COLUMNコラム
事業承継における後継者教育のポイントは?
事業承継における課題のひとつが、後継者の育成です。後継者が「社長の器」として成長するには5〜10年という長い期間がかかるともいわれています。本記事では、どんな人を後継者に選び、どんな教育するべきか、その効果やポイントを解説しましょう。
目次
後継者が身につけておきたい6つの基礎能力とは?
まずは、後継者を決めるにあたって、次期経営者として備えるべき6つの資質を見てみましょう。
① 一般的な経営基礎スキル・財務リテラシー
② 自社の事業に関する専門知識・実務経験
③ 社内外の人脈(従業員・顧客・取引先とのコミュニケーション能力)
④ リーダーシップ(部下からの信頼)
⑤ 経営者としての意欲・覚悟・ビジョン
⑥ 先代の経営への理解・共感・感謝
特に重要なのが⑤と⑥で、この2つの資質がなければ、社内外の人から反感を買うことになり、承継したのにすぐに社長交代という事態にもなりかねません。現に、「長男だから」というだけで、経営の意欲も覚悟もない経営者の息子が2代目となり、事業承継後すぐに廃業に追い込まれたというケースもあります。事業承継を成功させるためには、後継者候補に上の6つの資質がしっかり備わっているか、しっかり見極めなければなりません。
社内での後継者教育はどのように行なうべき?
「後継者の社内教育」とは、後継者を社内の業務に従時させ、職場で仕事をしながら教育を行なう方法のこと。事業についての基本的な知識を習得し、自社事業のコアとなる部門での業務経験から、現場の実情を理解させることが目的で、社内での人脈づくりにも効果的。ここで、中小企業庁のホームページ「中小企業事業承継ハンドブック」から、社内での後継者教育の具体例をいくつか挙げてみましょう。
例① 各部門をローテーションさせる
営業・財務・労務など、社内の各部門をローテーションさせて経験を積ませることで、事業における知識が習得できます。
例② 責任ある地位に就かせる
役員などの責任ある地位に就かせて権限を移譲し、重要な意思決定やリーダーシップを発揮する機会を与えるという教育法です。これによって、経営に対する自覚が生まれ、後継者としての意識を高める効果が期待できます。
例③ 現経営者による直接指導
現経営者が後継者に経営上の仕事を直接レクチャーすることで、経営上のノウハウや経営理念をダイレクトに受け継ぐことになります。後継者を育成するうえで、最もシンプルかつ効果的な方法といえます。
社外での後継者教育はどのように行なうべき?
「後継者の社外教育」とは、他社での勤務を経験させることで、自社だけでは学びえない新しい知見の習得につながります。また、「経営塾」のような会合に参加させるのも効果的です。
ここで、やはり「中小企業事業承継ハンドブック」から、具体的な教育例をいくつか挙げてみましょう。
例① 他社での勤労を経験させる
他社での勤務を経験することは、一種の「武者修行」といえます。人脈をつくったり、新しい経営手法や事業のアイデアを得るなど、「外の世界」での経験は大きな財産となるでしょう。
例② 子会社・関連会社等の経営をまかせる
後継者にある程度の実力が備わってからの教育となりますが、子会社や関連会社などの経営をまかせるのも、立派な「社外教育」です。経営者としての責任感の醸成につながります。
例③ セミナーなどへの参加
近年では、後継者を対象とした外部機関によるセミナーが多数開催されています。経営者に必要とされている知識やスキルを網羅的に習得させることが可能であり、幅広い視野を育成することができるでしょう。
まとめ
後継者候補としては、親族内の人間か、自社の従業員か、外部の人間か、選択肢は多様ですが、特にM&Aなどで社外の人材を後継者に据える場合は、社内教育によって経営理念をしっかり吸収させることが重要です。
一方で、後継者が従業員であった場合は、社外教育を重点的に行なって見識を広げることが大切。
どのような教育を重視するかは、後継者候補の資質によっても異なります。 後継者候補の資質をふまえて、社内外それぞれの教育を組み合わせ、「次期社長」を育成しましょう。
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