COLUMNコラム
節税効果も期待! 持株会社を活用した事業承継のメリットとは?
事業承継にはさまざまな形がありますが、そのうちの一つが持株会社を活用するもの。「持株会社は大企業だけのもの」と思い込んでいる人もいるかもしれませんが、中小企業であっても持株会社スキーム採用のメリットは十分にあります。では、持株会社を活用した事業承継にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
目次
持株会社とは
持株会社とは、子会社の支配を目的として、傘下にある会社の株式を保有する会社のこと。「ホールディングスカンパニー」とも呼ばれます。持株会社がグループ会社の経営判断をし、子会社は持株会社が与えた権限内で事業を展開します。持株会社には「純粋持株会社」と「事業持株会社」の2種類があります。
純粋持株会社とは、持株行為を本業とする会社のこと。事業活動は行なわず、子会社の管理と支配をし、そこからの配当金が主な利益となります。持株会社というと、こちらをイメージする人が多いでしょう。
事業特殊会社とは、子会社の支配だけでなく、別の事業活動も行なっている会社を指します。1997年2月に独占禁止法が改正され、純粋持株会社が解禁されるまでは、事業特殊会社のみが認められていました。持株会社を設立することのメリットは、複数の会社を支配し、それらの利益を獲得できる点にあります。
さまざまな業種・業界の株式を保有しておけば、どれか一社の業績が低迷しても、別の企業から利益を得ることができ、経営が安定します。そしてその結果、傘下となる子会社も安定的に経営できるため、持株会社と子会社、双方にとってメリットのあるスキームだといえるでしょう。
持株会社を活用した事業承継のメリット
事業承継のために持株会社を立ち上げるケースもあります。主なメリットは、次の5つです。
①事業承継にかかる手続きを省略できる
何より大きなメリットは、事業承継にかかる手続きを簡略化できることです。複数社の経営権を持つ人が事業承継する場合は、経営権を持っている会社それぞれについて株式を引き継がなければなりません。
つまり、5社の経営権を持っている場合、5社の株式を一つひとつ引き継ぐ必要があるのです。一方、持株会社であれば、複数の会社の経営権をもっているため、株式をまとめて承継することができます。持株会社を活用して事業承継することで、事業承継にかかる時間と手間を大きく節約できるのです。
②新しい事業を展開しやすくなる
持株会社を活用した事業承継には、経営の観点からもメリットがあります。それは、傘下にある会社同士が連携することで、時間とコストを節約しながら新事業を展開できるということ。事業承継を機に、思いきった経営革新を行なうことができます。
③節税効果が期待できる
2010年に税制改正が行なわれ、100%の経営権を持つ子会社からの配当には課税されなくなりました。相続が発生し、株式の引き継ぎを行う場合も同様です。
持株会社を活用して事業承継すると、株式評価後の利益のうち42%ほどが控除の対象になり、相続税の節税につながります。
④融資が受けやすくなる
一般的な事業承継では、後継者に引き継いだとたん、思うように融資が受けられなくなるケースがあります。これは、経営者がかわることで取引先との関係が悪化したり、業績が落ち込んだりすることが懸念されるからです。
一方で、持株会社を活用した事業承継であればその懸念は少なくなります。持株会社を設立して事業承継すると、傘下の会社から継続的に配当を受けられるため、返済財源が確保できるからです。返済財源が確保できるのであれば、事業承継にまとまった資金が必要になったとしても、金融機関は融資に前向きになってくれるでしょう。
⑤先代に現金を渡せる
事業承継を活用した事業承継では、先代経営者が持株会社に株式を譲渡することにより、現金を取得できます。自社株式ではなく現金の形で持っておけば、相続が発生したときの対応も比較的スムーズです。
持株会社を活用した事業承継のデメリット
持株会社を活用した事業承継には、もちろんデメリットもあります。具体的には、次の3つです。
①持株会社に借入金が発生する
先代から事業会社の株式を購入するために、金融機関から借り入れをする必要があります。多額の負債が発生するケースもあるでしょう。
②譲渡益に税金がかかる
先代が持株会社に事業会社の株式を譲渡すると、譲渡所得に対して譲渡益課税が生じます。
③節税目的の設立は認められないことがある
節税のみを目的とした持株会社設立は問題視されると、課税対象となる可能性があります。税務当局から指摘を受ける可能性がありますので、あらかじめ専門家に相談して、慎重に動くことをおすすめします。
まとめ
持株会社スキームにはメリットがある一方、借入金の発生や、譲渡金への課税、また、税務当局から指摘を受ける可能性があるといったデメリットも存在します。予想外のトラブルが起きないよう、専門家のサポートを受けながら進めましょう。
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