人の配置がカギを握る――事業承継成功のフォーメーションとは?

事業承継を成功に導く要素は何か? その答えは、「人の配置とその活かし方(=フォーメーション)」にある――。 2025年4月30日、事業承継を学ぶ場「サクセッションアカデミー Season2」第3回講座が開催された。今回は“SHIFTモデル”の「H=Human Resource(人事)」をテーマに、株式会社ミギウデ CEO・山田実希憲氏をゲストに迎え、人的資本の視点から事業承継の本質に迫った。
目次
SHIFTモデルとは?
アカデミーでは、事業承継を「経営刷新のチャンス」と捉え、新たなアプローチとして「SHIFTモデル」を提唱している。
S:Strategy(戦略)
H:Human Resource(人事)
I:Innovation(イノベーション)
F:Finance(財務)
T:Technology(テクノロジー)
5つの視点から事業承継を捉え直すことで、単なる引き継ぎではなく、未来の成長に向けた「事業創継」へと進化させるのが狙いだ。
事業承継は「人」をどう活かすかが成否を分ける

今回登壇した山田氏は、「事業承継を成功に導く“フォーメーション”とは?」をテーマに講演。
「事業承継は“トップの交代”だけではありません。企業は“人”によって動いている。情熱、能力、組織文化を理解する人がいてこそ、企業は成り立ちます。」(山田氏)
経営資源としての「ヒト・モノ・カネ・情報」に加え、社風や価値観といった“無形資産”も含めて承継することが重要だと語った。
後継者が孤立する組織には、共創の設計が必要
山田氏は、多くの企業が陥る事業承継の失敗要因にも言及する。
「後継者が孤立しているケースが非常に多い。“困っていることは?”と聞く前に、『右腕がほしい』『相談できる相手がいない』と打ち明けられるほどです」(山田氏)
背景には、役割や責任の曖昧さ、組織設計の不備、社員の巻き込み不足がある。
焦って変革を進めるほど、社内の抵抗も強くなる。
人材戦略は、経営戦略とセットで設計すべき
「人材戦略は“点”ではなく“線”で設計すべきです。経営戦略と連動し、今いる人材の配置や育成を意図的に構築する必要があります。理想と現実のギャップを可視化することも欠かせません」(山田氏)
価値観の共有や、制度設計といった“仕組みの継承”も人的資本経営の一部。
後継者が未来に集中できるよう、現在の組織にとらわれない体制の再設計が求められる。
現組織を診断し、未来組織図を描く
事業承継においては、現時点での組織状態を正確に把握することが出発点となる。
株式会社ミギウデでは、組織診断を通じて現組織の構造や機能を可視化し、未来に必要な組織像を「フォーメーション」として描き出す支援を行っている。
この未来組織図には、単に人員配置を示すだけでなく、「どの機能を、どの役割が担うべきか」といった経営と現場の連携構造や、決裁権限、人材の流動性、育成計画までを含めて設計されている。
人材を“機能”として捉えなおす
事業承継期には、「この人がいないと困る」といった属人的な組織運営から脱却することが求められる。
ミギウデでは、人材を「能力」と「志向性」によって定義し直し、事業に必要な“機能”としての役割に当てはめていく視点を持っている。
たとえば、「採用が得意」「財務に強い」といったスキルセットを基に、事業推進上の課題と照らし合わせることで、最適な役割とミッションを設計できる。
人的資本とは“コスト”ではなく“投資対象”である
「人的資本は、将来の価値創出を担う投資対象です。目先のコストではなく、未来へのレバレッジとして設計するべきです」(山田氏)
企業の成長は、人的資本への戦略的な投資なくしては成しえない。
報酬制度、育成体系、エンゲージメント設計なども含め、長期的視点での人的資本経営が問われている。
ミギウデが提唱する「承継チーム」
山田氏が率いる株式会社ミギウデでは、事業承継に必要な機能を「承継チーム」として設計・提供している。
PMO(プロジェクトマネージャー)
CCO(コミュニケーター)
CHRO(人事アドバイザー)
CFO(財務アドバイザー)
COO(実行支援)
BizDev(新規事業開発)
「組織の価値は“人そのもの”にあります。人の配置と活かし方(フォーメーション)、人的資本への投資こそが、事業承継の鍵を握るのです」(山田氏)
今後の予定と参加方法
講演後、SHIFTモデルを構成する各要素について、中山フェローと原代表理事による講義とパネルディスカッションが行われた。
事業承継企業100社以上の事例分析に基づいた知見も共有され、参加者からの質問にも丁寧に対応した。
次回の第4回講座は、SHIFTの「I=Innovation(イノベーション)」をテーマに、5月14日(水)17:00より開催予定。
テーマは、「既存ビジネスを活かした破壊的イノベーションと、持続的イノベーションのバランス」。新規事業評価の手法も紹介される。
講座は全6回で、6月25日(水)まで実施。参加費は無料。
参加対象は、「賢者の選択サクセッションCLUB」会員、入会希望者、株式会社ミギウデのイベント「右腕の会」参加者など。
山田実希憲氏プロフィール
株式会社ミギウデ CEO 山田 実希憲 氏
1979 年生まれ。法政大学社会学部卒業。リフォーム企業、人材紹介企業、不動産企業などを経て、2024 年3 月株式会社ミギウデのCEO に就任。事業承継を支える経営チームの紹介、企業に向けた課題解決型の人材紹介、組織コンサルティング、人材のキャリア構築を支援している。著書に「いずれ転職したいので、今のうちに自分の強みの見つけ方を教えてください! 」(ぱる出版)など。
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