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黄金株とは?相続時には注意が必要!大きな権利を持つ黄金株について解説!
非常に大きな力を持つ「黄金株(拒否権付種類株式)」。事業承継を行う際には、後継者をコントロールする手段として用いられることも多くあります。一方、相続が発生した際には、黄金株の行方には注意が必要です。本記事では、事業承継や相続における「黄金株」について紹介します。
目次
黄金株とは?
そもそも黄金株とはどんなものか、解説していきましょう。
「普通株式」と「種類株式」
株式には「普通株式」と「種類株式」の2種類があります。
一般的に「株式」というと、普通株式を指します。株主が普通株式を保有していると、株主総会における議決権の数などにおいて、保有する株式の数に応じて平等の取り扱いを受けます。
一方、種類株式とは、普通株式とは権利が異なる株式のこと。種類株式を保有する株主は、通常とは異なる権利を有することとなります。
ここでは、権利の違いに応じて、代表的な3つの種類株式を紹介しましょう。
①議決権制限株式
議決権制限株式は、株主総会においておける議決権が制限されている株式のこと。株主総会の決議事項の一部または全部について議決権を行使できません。
すべての議題に対して議決権を付与しない株式と、一部の議題に対して議決権を付与しない株式の2つに分かれます。前者を「無議決権株式」といいます。
議決権制限株式を発行する場合は、優先的に剰余金の配当をするという内容がセットになっていることが多くあります。議決権が制限される代わりに、配当金が多くなるのです。
議決権制限株式のメリットは、経営に関心のない人に議決権を行使されずにすむこと。経営について理解せず、関心もない人が団結して、重要な決議を行ってしまい、会社がめちゃくちゃになってしまう……そうしたリスクを回避できる株式です。
無議決権株式に関しては、こちらの記事をご覧ください。
(「9割の人が知らない! 「無議決権株式」を活用した事業承継のメリット」)
②譲渡制限株式
譲渡制限株式とは、譲渡の制限がある株式のこと。譲渡制限のある株式を譲渡しようとすると、取締役会または株主総会での承認が必要となります。
譲渡制限株式を発行するメリットは、会社の乗っ取りを防止できることです。株式に譲渡制限を設けていないと、株主から大量の株を買い集めれば、会社を乗っ取ることが可能となります。株式に譲渡制限をつけておくことで、株式が第三者の手に渡ることを防止でき、経営者の意思とは関係のない乗っ取りを予防できます。
③拒否権付種類株式(=黄金株)
3つ目に紹介する種類株式は、拒否権付種類株式です。拒否権付種類株式は、本記事のテーマである「黄金株」の別名でもあります。
黄金株は、株主総会の決議事項や取締役会の決議事項について拒否権を持つ株式のこと。どのような決議事項に拒否権を持たせるかは、定款であらかじめ決めておくことができます。
事業承継と黄金株の関係
ここで、黄金株と事業承継のかかわりについて軽く触れておきましょう。
事業承継における黄金株の活用方法として、現経営者が後継者に事業承継する際、黄金株を1株、自分に残しておくというものがあります。こうすれば、事業承継を完了させ、自分が引退した後も、会社をコントロールすることができるのです。
黄金株は非常に強い力を持っているため、たった1株であっても、会社に対して大きな影響力を及ぼすことができます。
その影響力の強さゆえ、どのような決議事項に拒否権をつけるかは、慎重に決定する必要があるといえるでしょう。
相続・事業承継と黄金株
ここではもう少し詳しく、相続・事業承継と黄金株の関係について見ていきましょう。
先述した通り、先代経営者が黄金株を持っておくことで、会社の経営をコントロールすることが可能となります。
これが有効なのは、事業承継のタイミングが早すぎるときや、後継者の能力に不安があるときです。
現経営者にとって、これまで大切にしてきた事業を、突然後継者に引き渡すのは不安なもの。「会社をすぐに潰してしまうのではないか」「悪い意思決定をしてしまうのではないか」と懸念し、経験豊富な自分が目を光らせておきたいと思うのも当然のことでしょう。
とはいえ、先代が株式を保有していたとしても、後継者が過半数の株式を持っていれば、後継者の意思決定に従わざるを得ません。
そこで黄金株が役立ちます。過半数の株式を後継者が保有していたとしても、先代が黄金株を持っていれば、株主総会の決定を覆すことができるのです。「これはまずい」という決定がなされたときには、黄金株の権利を行使して後継者にブレーキをかけましょう。
後継者に経験を積ませたい気持ちはある反面、まだまだ独り立ちさせるのは不安……そんなときは、先代が黄金株を保有しておくとよいでしょう。
黄金株を相続するには?
なお、黄金株の株主から黄金株が相続されるときには、注意が必要です。黄金株は強い権利を有しているため、適切でない人に相続されてしまうと、経営に大きな問題が起こりかねないからです。
黄金株には「取得条項がついている場合」と「取得条項がついていない場合」の2つのパターンがあります。
まずは前者について。黄金株保有者の死亡により、会社が黄金株を取得できるという内容がついていることがあります。このケースにといては、相続人から会社が黄金株を取得できるため、大きな心配は不要でしょう。
取得条項に応じて、対価が必要であれば対価を交付します。
次に、後者について。取得条項がついていなケースでは、他の相続財産と同じく、相続人が黄金株を相続することとなります。この場合、「相続人が黄金株を保有したままにするケース」と「当該相続人が議決権の3分の2以上を保有しているケース」では、黄金株の削除を検討するとよいでしょう。会社の経営を揺るがしかねないため、弁護士などに相談しながら進めることをおすすめします。
まとめ
大きな権利を有する「黄金株」。会社を守る働きをすることもある一方、意図せぬ相手に相続されてしまうと、会社の経営が揺らいでしまうリスクがあります。
取り扱いには十分に注意し、何かあればすぐに専門家に相談しましょう。
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