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事業承継の基本的な内容とは? 4つの方法を紹介

東京商工リサーチの調べによると、2021年に経営者の平均年齢が62.49歳(前年62.16歳)に上昇しました。 業績低迷が続く中小企業では、後継者の育成は後回しになっているという実情があります。 本記事では、事業承継の基本的な内容と、具体的な4つの方法を解説しましょう。

そもそも、「事業承継」と「事業継承」ではどっちが正しい?

「事業承継」と並んでよく使われる言葉に、「事業継承」という言葉にあります。この2つを混同している方も多いのですが、あらためて両者の違いを見てみましょう。まずは、「承継」と「継承」それぞれの語義を解説します。

承継

精神的・身分・仕事・事業を引き継ぐこと。法的に引き継ぐものと抽象的に引き継ぐものがある。
例)経営理念の承継。相続の承継

継承

先代や先任者などの地位・身分・財産などを受け継ぐこと。権利や経済価値を受け継ぐこと。
例)皇位継承。大統領職の継承

上記の意味からすると、企業の事業を法的に引き継ぐ場合は、「事業承継」のほうが正しい表現といえます。
法律上でも、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(中小企業経営承継円滑化法)」「事業承継税制」といったように「承継」が使われていますので、間違えないようにしてくださいね。

後継者が引き継ぐのは、「ヒト」「モノ」「カネ」の3つ!

事業承継において後継者が引き継ぐ主な経営資源は、かんたんにいえば「ヒト」「モノ」「カネ」の3つです。

まずは、「ヒト」の承継において解説しましょう。
事業承継においては、経営権を引き継ぎ、それにあたって後継者を選定し、育成しなければなりません。「経営権」とは、さまざまなことを管理、決定する経営者が持つ権利ですが、これを継承するには、会社の株式を過半数以上保有することが条件となります。

同時に、後継者を選び、会社の経営理念やビジョン、経営方針をしっかり引き継がせ、会社を成長させる後継者として育成させる必要があります。

さらに事業承継においては、会社が持つ資産である財産権や株式、事業用資産など「モノ」と「カネ」も引き継ぐことになります。

「財産権」とは、会社が持つ債権や著作権、特許権などの権利のことで、「株式」とは経営権を有するための会社株式のこと。そして「事業用資産」とは、会社が保有する工場や機械、事務所や店舗などの不動産を指します。

承継するのは、ヒト・モノ・カネ以外にも、経営理念や特許、ノウハウや人脈などの有形資産や無形資産など、多数存在します。

事業承継の4つの選択肢

事業承継の具体的な方法としては、大きく分けて「親族内承継」「親族外承継」「M&A」「株式上場」の4つがあります。

それぞれのメリットとデメリットを見てみましょう。

①親族内承継――現経営者の親族に承継させる方法

経営者の親族内の適任者に承継させる方法です。この方法のメリットは、社内外の関係者から受け入れられやすいことでしょう。

また、長期的に後継者教育をしやすい、財産や株式を相続として後継者に移転できるため、所有と経営の分離を回避できるという利点もあります。デメリットとしては、親族内に、経営者の資質と意欲を併せ持った候補がいるとは限らないこと。

特に相続人が複数いる場合、後継者の決定が難しいでしょう。最近では、親族内承継を希望する経営者も承継したい親族も、減少傾向にあるようです。

②親族外承継――現経営者の親族以外に承継させる方法

自社株はオーナーが保有したまま、社長の地位を従業員や社外の人に譲るという方法です。

メリットは、社内外から広く候補者を求めることができることと、経営の一体性を持ちやすいこと。

しかし、適任者がいない可能性があるというのがデメリット。後継者候補に株式取得の資金力がないという可能性もあり、個人債務補償(個人保証)を引き継ぐときに問題が発生する恐れもあります。 ただし親族以外の後継者でも、法整備が行なわれ、以前よりも実施しやすくなっています。

③M&A――買収や合併により承継を行なう方法

自社を売却する方法で、M&Aを専門に扱う仲介業者が増加傾向にあり、国の事業引継ぎ支援センターが全国に設置されたことなどから、M&Aの件数は年々増加しています。

メリットとしては、身近に適任者がいなくても、広く候補者を外部に求めることができること。くわえて、現経営者はM&Aによって会社売却の利益を得ることができるのも魅力です。ただしデメリットとしては、従業員の雇用維持や、売却価格など、希望の売却条件とマッチングする買い手を見つけることが難しいことです。

M&Aを行なうなら、冒頭に挙げたような専門家の力を借りて進めたほうがいいでしょう。

④株式上場:自社株式を証券市場に上場する方法

上場すれば、自社株式を証券市場で売買可能となります。この方法のメリットは、自社株が不特定多数の株主に保有されることになるため、経営と資本の分離が図れることです。

ただし、上場の基準は非常に厳しく、すべての企業が簡単に上場できるわけではないこと、かつ上場準備には時間がかかるということがデメリット。事業承継を早急に考えなければならない企業にとっては、あまり現実的でない選択肢となります。

まとめ

近年の傾向としては、「継がせたい親」と「継ぎたい子」が減少し、親族内承継が減少しています。

事業継承には5〜10年かかるともいわれますから、スムーズに承継を成功させるためには経営者が高齢になる前に承継の計画を立て、準備を始めることが大切です。

法律や税制も大きく関係しますから、プロに相談しながら慎重に進めることをおすすめします。

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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