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相続トラブルを防ぐ! 事業承継の「民法特例」とは?

事業承継において、現経営者は後継者に多くの財産を相続させたいと思うもの。とはいえ、他の相続人にもある程度の財産を相続しておかなければ、相続をめぐってトラブルが発生しかねません。しかし民法には、後継者に優先して相続させられる特例があります。本記事では、事業承継に適用できる民法特例について解説します。

相続の基礎知識:遺留分とは

遺留分とは、相続のときに最低限もらえる相続分のことで、民法で定められています。これは、被相続人の遺言よりも優先されます。

たとえ被相続人が「AとBにのみ財産を残す、Cには何も渡さない」という遺言を残していたとしても、Cが一定範囲の親族であれば、Cは遺留分を請求することができます。

遺留分の割合

遺留分は次のように取り決められています。法定相続分の2分の1と覚えておくといいでしょう。

【法定相続人が配偶者のみだった場合】
・法定相続分:1
・遺留分の保証割合:2分の1
【法定相続人が配偶者と子2人だった場合】
・法定相続分:配偶者が2分の1、子が4分の1ずつ
・遺留分の保証割合:配偶者が4分の1、子が8分の1ずつ
【法定相続人が配偶者と父母だった場合】
・法定相続分:配偶者が2分の3、父母が6分の1ずつ
・遺留分の保証割合:配偶者が3分の1、子が12分の1ずつ
【法定相続人が兄弟姉妹だった場合】
・法定相続分:配偶者が2分の1、子が4分の1ずつ
・遺留分の保証割合:配偶者が4分の1、子が8分の1ずつ

被相続人の兄弟姉妹は法定相続人ですが、遺留分の請求権はありません。また遺留分を算出するときの金額には、贈与された分も含みます。

後継者に贈与を行なった場合は、注意しましょう。遺留分が侵害されている場合、基本的には当事者間の話し合いで解決を図ります。話し合いでの解決が難しい場合は家庭裁判所での調停を行ないますが、調停不成立になると民事訴訟に移行することとなります。

遺留分に関する民法特例とは

遺留分が確保されているとはいえ、時期経営者に十分な財産が渡らなければ会社を経営できず、廃業せざるをえません。

それは被相続人の遺言に背くことに……そうしたケースもあるでしょう。そのような企業を守るために、民法特例の措置が取られています。

中小企業経営承継円滑化法とは

遺留分に関する民法特例は、中小企業経営承継円滑化法における方策の1つです。中小企業経営承継円滑化法は、中小企業の廃業を防ぎ、日本経済を守る役割を担っています。

また、これまで数回の改正を重ねており、支援においては、中小企業庁が主体となっています。具体的には、次の3つの方策をとっています。

1.事業承継税制による納税猶予制度
中小企業の後継者が先代経営者より贈与・相続・遺贈によって取得した非上場株式等の贈与税・相続税の一部またはすべての納税が猶予される制度

2.金融支援
中小企業信用保険法の特例と日本政策金融公庫法の特例による金融支援措置

3.遺留分に関する民法の特例
法定相続人全員の同意によって遺留分を減らせる制度

4.所在不明株主に関する会社法の特例の前提となる認定
株主が所在不明と認定される期間を5年から1年短縮する制度

遺留分に関する民法特例の概要

遺留分についての民法改正とは、事業承継による相続について、法定相続人全員の同意があれば遺留分を減らせるというものです。負担を減らし、被相続人があるていどの相続財産を後継者や会社に残せるように設定されている制度です。

遺留分に関する民法特例の「除外合意」と「固定合意」

この民法特例には、除外合意と固定合意があります。

1.除外合意
経営を引き継ぐ自社の株式を遺留分の算定対象から除外するという合意のこと。事業の後継者が、残りの相続人から遺留分を求められたとしても、自社の株式は相続財産から除くことができます。

2.固定合意
自社の株式を相続財産の算定対象に含めつつも、全員の合意によって評価額を固定できるという合意のこと。
自社株式の評価が上がっても、評価額が固定されているため、それ以上の遺留分請求を受けることはありません。

まとめ

相続や贈与には税金がつきものです。事業を後継者に引き継ぎたくとも、税金が重くのしかかり、廃業せざるを得ないこともあるでしょう。

中小企業経営承継円滑化法は、そうした事態を防ぐために施行されているものです。円満な相続を行なうためにも、ルールをしっかり押さえておきましょう。

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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