COLUMNコラム
大切な事業を親族へ!「親族承継」のメリット・デメリットと手順
日本では、中小企業の事業承継の相手は家族や親族であることが多いもの。大切に育ててきた事業を信頼のおける親族に任せたいと考えるのは当然のことでしょう。とはいえ、親族承継はメリットばかりではありません。本記事では、親族承継の内容とメリット・デメリットについて解説します。
目次
事業承継の種類は3種類ある!
事業承継の相手は主に「家族・親族」「従業員」「第三者」の3つに分かれます。それぞれについて簡単に説明します。
①親族内承継
日本の中小企業でよく見られる、事業を配偶者、子、孫、甥、姪などに承継させる方法のこと。親族の中に、経営適性と承継の意思を持った人材が見つかれば、親族承継を採用する企業は多いでしょう。
②親族外承継(役員・従業員に承継する)
親族外承継のうちのひとつは、役員や従業員に会社を任せる方法です。事業や経営方針を熟知している後継者ならではの安心感がある承継だといえます。
従業員への承継についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
(「「従業員」への事業承継はこれでOK!メリット・デメリットと手順を紹介」)
③親族外承継(第三者に承継する)
従業員ではなく、M&Aなどによって、まったくの第三者に事業を引き継ぐケースも。親族や従業員に後継者がいない場合は、第三者に事業を任せることになります。
親族外への承継についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
(「後継者不在を解決!「親族外承継」のメリット・デメリットと手順」)
親族承継のメリットとは?
それでは、親族承継のメリットを具体的に見ていきましょう。
①早期から承継の準備ができる
親族内に後継者を見つけておけば、従業員や第三者から後継者を選ぶ必要がなく、後継者育成のための期間を十分に確保できます。社内でOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング:現任訓練)を施すのはもちろん、自社以外の企業で「修行」をさせたり、研修やセミナー、勉強会に出席させたりして、経営者としてのスキルやノウハウを身につけさせる時間がたっぷりあることは、親族承継の大きなメリットでしょう。
また近い関係の親族であればあるほど、先代の経営者としての姿を長く見てきています。その分、自社の理念や経営方針を自然と理解しているため、承継が円滑に進むでしょう。
②相続や贈与、譲渡の制度を活用できる
相続や贈与、譲渡の制度を活用し、現経営者が所有している株式や事業用資産を後継者に取得させることが可能となります。相続であれば、現経営者が亡くなったタイミングで株式や事業用不動産を引き継ぐことに。
相続が「争続」にならないよう、遺言を作成したり、後継者に事業を任せることを周囲に公言したりと、前もって準備しておくことが大切です。贈与であれば、現経営者が生前のうちに、後継者へ株式などを引き継ぎます。生前贈与にかかる税金は相続税よりも高額になる可能性があるため、毎年少しずつ贈与を進めるなど、計画的に行いましょう。譲渡では、後継者が現経営者から株式などを買い取ります。相続とは異なり、後継者以外の親族の遺留分を考慮する必要がないのがメリットです。一方、後継者には、株式を買い取るためのまとまった資金が求められます。
③関係者の理解を得られやすい
日本では親族承継が多いため、従業員や取引先、顧客を納得させやすいのは、親族承継の大きなメリットでしょう。後継者が確定したら、早期から関係者への周知や挨拶まわりを始めましょう。いざ引き継いでから顔合わせをするより、周囲からの信頼を得やすくなります。会社を引き継いだ後も、関係者との強固な関係が揺るがないよう、現経営者のサポートが欠かせません。
親族承継のデメリットとは?
①後継者に経営者としての素質があるとは限らない
親族承継の最大のデメリットは、後継者を適切に評価しづらいことでしょう。「家族や親族に承継してほしい」という思いが先に立ってしまうと、候補者が経営者に適しているのか、冷静にジャッジするのは難しいもの。現経営者がいくらすばらしい経営者でも、その親族もまた経営者として優れているとは限りません。親族としての眼鏡をはずし、相手の素質を客観的に判断しましょう。
②経営方針を変えづらい
特に先代が存命であれば、後継者は経営方針を変えづらいもの。それまでの経営方針が良いものであればかまいませんが、そうでない場合も、どうしても心情的に改善しづらいものです。後継者には、先代の教えにこだわりすぎず、会社の将来のために柔軟に経営していく姿勢が求められます。
③後継者以外の親族とのトラブルが発生する可能性がある
親族内に後継者候補が複数人いる場合、その中から誰か一人を選ぶこととなります。場合によっては、後継者になれなかった人から恨みを買い、トラブルに発展することも。社内に派閥が生まれてしまうリスクもあります。そういった事態にならないよう、現経営者が責任をもって、関係者が納得するような形で後継者選定を進めましょう。また、後継者が決まったら、できるだけ早い段階で関係者に周知することをおすすめします。
親族承継の手順
親族承継の大きな流れは次のとおりです。
1.現状把握を行い、経営改善を進める
2.後継者を選定・育成する
3.株式の承継準備をする
4.後継者の周知をする
5.遺言や生前贈与の手配をする
6.保証などに対応する
ポイントは「①現状把握と経営改善」です。優秀な人材であればあるほど、傾いた事業を引き継ぎたくはないもの。自信をもって事業承継できるよう、なるべく早期に現状を把握し、改善に着手しましょう。
そのためには、専門家からのアドバイスを受けながら、事業承継計画書を作成することをおすすめします。事業承継の流れや考慮すべきポイントなどを書面にまとめれば、取り組むべきことが明確になり、今後の行動指針になるはずです。
まとめ
従来、多くの中小企業が選んできた「親族承継」。後継者の育成に時間をかけられる、関係者を納得させやすいなどといったメリットがあります。承継をきっかけにトラブルが発生し、親族の関係が悪化してしまった――ということにならないよう、早期から着実に準備を進めましょう。
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