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無料で簡単に相続税申告書が作れる「AI相続」の年間利用者5000人超へ なぜ、無料で高度なサービスを提供できるのか

 人生において、相続を経験する機会は少ない。初めてならもちろん、過去に経験があっても、自分で相続税などの申告をすべてやり切るのは難しいイメージがつきまとう。一方で、税理士ら専門家に相談すると費用が気になる。こうした悩みに寄り添い、DXで次世代へのバトンタッチをスムーズにしたのが、「株式会社みなと相続コンシェル」だ。同社が提供する申告書作成ソフト「AI相続」や「代理人売却」は、いずれも無料で、簡単に利用できるという。相続の難易度を大幅に下げるサービスについて、代表取締役の弥田有三氏に聞いた。

画面の指示に従うだけ。相続税申告書を無料で作成 

株式会社みなと相続コンシェル 代表取締役 弥田 有三 氏 

──「AI相続」とは、どのようなサービスなのでしょうか。 

自分で入力できる無料の相続税申告書作成ソフトです。画面の指示に従って入力していくだけで、難しい計算や専門知識なしに相続税申告書の作成、保存、印刷まで無料ででき、そのまま税務署に提出可能です。 

──本当に無料でできるのですか。 

基本機能は、すべて無料です。土地の形状等が複雑で、土地評価明細書を任意で添付したい場合の機能のみ9,800円(税込み)のオプションとなっています。

ただ、土地評価明細書は必須書類ではありませんし、もし添付したいと思ってもその部分のみ手書きするなら、やはり無料で相続税申告書の作成が可能です。 

実際、約93%の方が無料で利用し、私たちのAI相続で相続税の申告を終えています。 

──「AI相続」の利用者からは、どのような反響が届いていますか。 

自分たちでできてよかった、というお声を多数いただいています。

税理士報酬を節約する目的でソフトを使う方が多いのだろうと当初推定していたのですが、実際に運営してみると「税理士報酬分の費用が安くなったのが嬉しいのではなく、自分たち家族にとって大切な父の最後の相続手続きを家族水入らずで取り組めたのがうれしい」というご感想が多かったのは予想外でした。

これまで、相続税申告というと税理士に依頼するという選択肢しか事実上なかったと思うのですが、私たちのAI相続によって、家族が自分たちで取り組むという選択肢を社会に提供できて大変うれしく思っております。

利用者の中にはもともと相続税について問題意識を持っていて、自分自身の相続を想定して生前に使っていらっしゃる方も多くいます。

資産家で会社経営をしていたり、不動産の賃貸経営をしていたりする方は、資産承継のタイミングで、相続税がとても重くのしかかるケースが多くあります。

でも、重圧に耐えきれず、考えることをやめて誰かに丸投げしてしまったり、資産を安易に処分したりするのは得策ではありません。最終的には税理士や金融機関に任せるとしても、何も分からずにそのまま丸投げするのと、多少の仕組みが多少分かった上で任せるのとでは、結果がまったく違います。 

家族が専門家にただ丸投げするのではなく、家族が自分たちで考える力を持つためのツールとして「AI相続」を使っていただけているのであればそれも非常にうれしいことです。 

──「AI相続」は、どこで利益を得るビジネスモデルなのでしょうか。 

課金するユーザーは限定的ですが、利用者数がそれ以上に伸びていますのでさらに伸ばしていきたいと思っています。 

加えて、付帯する隣接領域のサービスでも利益が出ています。ひとつは相続税申告のサポートに関する領域、もうひとつは実家をはじめとする不動産売却のお手伝いです。 

不動産については、こうしたニーズに応え「代理人売却」事業を展開しています。

不動産会社2社が競い、相続不動産を納得価格で売却 

──「代理人売却」とはどのようなサービスでしょうか。 

相続で引き継いだ実家を適切に売却するのは、相続税申告以上に難易度が高いものです。築年数が古く正しい価値がわかりにくいことや、遠隔地であること、子どもたちも忙しいことなどが原因です。こうした売却をサポートするのが当社の「代理人売却」サービスです。

──「代理人売却」も無料で利用できるのでしょうか。

売却される方は、無料でご利用いただけます。当社「代理人」の手数料をご負担いただくことはありません。独自のビジネスモデルが、これを可能にしています。

まず、当社は物件近くの不動産会社に査定を依頼します。都市部では大手2社、地方では各地域における有力な不動産会社2社を選定します。

2社に限定する理由は、販売の競争原理が最も適切に働くからです。一括査定サイトでは多数の不動産会社と競合するため、実際とはかけ離れた実現不可能な査定金額が横行します。

当社は多くの「AI相続」の利用者というバックグラウンドもあるため、不動産会社も協力的で、耳触りが良いだけの査定や、むしり取るような査定はありません。「代理人売却」であれば、実際のマーケットを反映したリアルな査定価格を引き出すことが可能です。

査定が出てきたらそれを精査した上でお客様とすぐに共有し、不動産会社の担当者と改めてお客様ご同席のもと、オンライン等でさらにミーティングを重ね、本当の価値が分かるような仕組みにしています。また、金額が決定した後も、2社に販売を競ってもらうことで、適切な販売活動が実現します。

当社は、成約が決まった場合にのみ不動産会社さんから一定の紹介料をいただける立場であり、最後までしっかりとお客様をサポートするのが使命となります。

──「代理人売却」の利用者は、サービスをどのように評価していますか。

明瞭でよかったというお声を多数いただいています。「代理人売却」では、販売活動終盤に競争原理により価格があがっていくこともしばしば起こります。「囲い込み」というようなことも当然起こりませんので、お客様は適正な価格で売れたことを実感してくださっているようです。

ただ、「代理人売却」は競わせることがすべてではありません。地方のアパートなど、流通しにくい物件については不動産会社に過度な負担をかけることなく、1社に絞るべきというアドバイスをすることもあります。

そのレフェリーをするのが私たちであり、お客様に正しい価値を提供できているのだと思います。

従来にない相続に特化した事業を各種展開

株式会社みなと相続コンシェル 代表取締役 弥田 有三 氏 

──株式会社みなと相続コンシェルは、他にどのような事業を展開しているのでしょうか。

相続税まわりのプラットフォームになりたいと考え「AI相続」や「代理人売却」などのサービスを提供しています。また、グループ内の税理士法人と連携しながら、実際の相続税申告の手続きもお手伝いしています。

──セキュリティーについては、どのような方針をお持ちでしょうか。

個人情報は完全に暗号化しています。公表しているプライバシーポリシーに基づいて厳格に管理しています。特にマイナンバー情報についてはその都度入力していただく形式をとっています。

「AI相続」利用者は年間約5,000人に急成長 

──相続税に関連した各事業は、大きく成長を続けていますね。 

2020年3月にスタートした「AI相続」の利用者は、2025年3月に累計17,000名に達しました。当初は年間約1,500名でしたが、2025年には約5,000人の利用を見込むまで成長し、日本有数の税理士法人の受任件数と同レベルになっています。 

現在では「AI相続」を使用した申告であることが、税務署にも認知されてきました。 

「AI相続」は自社株をもっている企業オーナーのご利用も多いです。企業の事業承継の準備やシミュレーションのために、税理士法人や弁護士法人も利用してくださっています。 

株式の評価などは既存の税理士法人に相談するのがよいと思いますが、事業承継の現場でも利用者数は今後も増加していくと考えています。 

──今後は事業をどのように育てていくお考えでしょうか。 

まずは「AI相続」をもっと多くの方に使ってもらえるように運営していきたいと思っています。その上で、不動産における「代理人売却」のように隣接領域で価値のあるサービスを作り出していきたいと考えています。 

少しずつその成功事例が積み重なることで、日本における世代間の資産承継だけでなく心のつながりも、従来よりスムーズにすることができれば、社会全体が豊かになるのではと思っています。 

相続や不動産など、従来の仕組みに疑問を持った方が、何かよい方法がないかと考えたとき、私たちのサービスがその受け皿になれれば幸いです。

 

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弥田有三氏プロフィール

株式会社みなと相続コンシェル 代表取締役 弥田 有三 氏 

2000年滋賀大学経済学部卒業後、証券会社に入社。プライベート・バンキング業務を経て、2006年に独立。2018年株式会社みなと相続コンシェル代表取締役に就任し現在に至る。1級ファイナンシャルプランニング技能士。CFP。公平中立なアドバイスと、世代を超えた視点で資産運用・管理を行う。国内外の投資に精通し、自身も率先して積極的に運用。 

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