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意外と知らない! 「相続時精算課税制度」を利用した事業承継
「相続時精算課税制度」をご存じでしょうか? これは、一定の条件のもと、贈与税の支払いを先送りすることができる制度です。本記事では、相続時精算課税を活用した事業承継について解説します。
目次
相続時精算課税制度とは?
相続時精算課税制度は、父母または祖父母から子・孫への生前贈与時に利用される制度のこと。ひと言で言うと、贈与時は一定の条件下で非課税になるものの、相続時には贈与した財産も足し戻して相続税が課税される制度です。
相続時精算課税制度の利用には、大きく分けて3つの条件があります。
1. 60歳以上(贈与をした年の1月1日時点)の父母または祖父母からの生前贈与であること。
2. 贈与の対象者(受贈者)は18歳以上(贈与を受けた年の1月1日時点)の子・孫であること。
3. 子・孫が相続時精算課税制度の利用を希望していること。
贈与時には、贈与財産に対する軽減された贈与税を支払います。その後、相続が発生した際には、相続財産に当時の贈与額を加算し、合計した価額を基に相続税額を計算する流れです。税金支払いの先送りができる制度というと理解しやすいでしょう。相続時精算課税制度のポイントは、選択制であること。「祖父からの贈与では選択するが、祖母からの贈与では選択しない」といったことも可能ですし、「祖父母ともに選択する」こともできます。
ただ、一度選択すると取り消せませんので注意しましょう。相続時精算課税制度には2,500万円の特別控除があります。同一の父母または祖父母からの贈与において、2,500万円までの贈与には贈与税がかからず、限度額に達するまで何回でも控除されます。ただし、相続時精算課税制度を利用する場合、110万円の基礎控除は利用不可となりますので注意してください。贈与額が2,500万円を超えると、超えた額に対して20%の贈与税が課されることとなります。
ただし、その贈与税は、相続時に相続税額から差し引かれます。相続時精算課税制度は、相続税の節税対策としてはあまり効果が期待できないものの、受贈者にまとまった額の財産を贈与したいケースや、所有している財産の評価額が上昇すると見込まれるケースでは、節税効果があるといえるでしょう。
相続時精算課税制度のメリットとデメリット
それでは、相続時精算課税制度にどんなメリット・デメリットがあるのかをみていきましょう。
相続時精算課税制度を利用するメリット
相続時精算課税制度のメリットは、大きく分けて4つあります。
1つ目のメリットは、贈与者の財産を税金なしで贈与できること。
2,500万円まで無税で贈与できます。
2つ目のメリットは、財産の評価額が低いうちに贈与できること。
財産の評価額が確実に上がるとわかっている場合には、相続時精算課税制度を利用して贈与を済ませてしまったほうが、結果的に節税となります。
3つ目のメリットは、贈与のタイミングや相手を確実に決められること。
生前に贈与することで、贈与したいときに、贈与したい相手へ財産を移転することが可能です。
4つ目のメリットは、3つ目のメリットに関連して、相続における関係者間の争いを防げること。
あらかじめ贈与する相手と財産を決めておけるため、相続発生時に親族などが揉めずに済みます。特に関係者が多い場合には、メリットの大きい手段となるでしょう。
相続時精算課税制度を利用するデメリット
一方、相続時精算課税制度にはデメリットもあります。1つ目のデメリットは、一度選択したら変更できないこと。いったん相続時精算課税制度を選択すると、暦年課税に戻すことは不可となります。2つ目のデメリットは、財産の評価額が下がった場合、課税額が増えてしまうこと。相続時に支払う税金の額が、贈与時の評価額によって決まるためです。評価額の低下が予想されるものは、相続時精算課税制度利用時には贈与しないようにするのがよいでしょう。
相続時精算課税制度を利用した事業承継
相続時精算課税制度は、もちろん事業承継においてもメリットがあります。この制度を利用することで、早期に、自分で決めたタイミングで・自分で決めた相手に・自分で決めた財産を移転できるのは大きなメリットだといえるでしょう。綿密にタイミング・相手・贈与する財産を計画し、贈与と事業承継をスムーズに行いましょう。もちろん、相続税対策ができるというメリットも見逃せません。注目したいのは、評価額が上昇することが見込まれる財産。不動産や土地など、値上がりが確実であれば、相続時精算課税制度を使って贈与しておくと、将来の相続税を抑えることができます。これは後継者の負担を減らすことにつながるでしょう。
まとめ
贈与税の支払いを先延ばしすることができる「相続時精算課税制度」。特に、将来評価額の上昇が見込まれる財産を移転する際には、節税効果が期待できます。
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