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事業承継の準備、まずはここから! 官公庁が提供する3つのツール

「事業承継を検討したいけれど、何から始めていいかわからない」と悩む経営者は多いでしょう。そんなときは、自社の現状課題や強み・弱みを把握することから始めるのが正解です。本記事では、簡単に現状把握ができる、事業承継に役立つ3つのツールを紹介します。

事業承継に役立つツール①「事業承継診断」

1つ目の事業承継に役立つツールは、中小企業庁が提供している「事業承継診断」です。親族内承継、従業員承継、M&Aと、あらゆる事業承継のケースで有効に活用できます。このツールは「事業承継診断票」として、全1ページのPDF形式で提供されています。11の質問に対して「はい」か「いいえ」で回答していくことで、事業承継における課題を抽出できるツールです。商工会や金融機関なども、企業との関わりの中で活用しているとされています。
「事業承継診断」はこちら

計11の質問は次の通りです。

Q1「会社の10年後の夢について語り合える後継者候補がいますか。」
※「はい」ならQ2へ、「いいえ」ならQ7へ進む
Q2「候補者本人に対して、会社を託す意思があることを明確に伝えましたか。」
※「はい」ならその人の名前を書いた上でQ3~Q6へ、「いいえ」ならQ8~Q9へ進む
Q3「候補者に対する経営者教育や、人脈・技術などの引継ぎ等、具体的な準備を進めていますか。」Q4「役員や従業員、取引先など関係者の理解や協力が得られるよう取組んでいますか。」Q5「事業承継に向けた準備(財務、税務、人事等の総点検)に取りかかっていますか。」
Q6「事業承継の準備を相談する先がありますか。」
※「はい」なら相談先の名前を書く
Q7「親族内や役員・従業員等の中で後継者候補にしたい人材はいますか。」
※「はい」ならQ8~Q9へ、「いいえ」ならQ10~Q11へ進む
Q8「事業承継を行うためには、候補者を説得し、合意を得た後、後継者教育や引継ぎなどを行う準備期間が必要ですが、その時間を十分にとることができますか。」
Q9「未だに後継者に承継の打診をしていない理由が明確ですか。(後継者がまだ若すぎる など)」
Q10「事業を売却や譲渡などによって引継ぐ相手先の候補はありますか。」
Q11「事業の売却や譲渡などについて、相談する専門家はいますか。実際に相談を行っていますか。」

これらの質問に対して、以下のアドバイスが提供されています。

Q3~Q6で1つ以上「いいえ」と回答した→「円滑に事業承継を進めていくために、事業承継計画の策定による計画的な取り組みが求められます。」
Q8~Q9で1つ以上「いいえ」と回答した→「企業の存続に向けて、具体的に事業承継についての課題の整理や方向性の検討を行う必要があります。」
Q10~Q11で1つ以上「いいえ」と回答した→「事業引継ぎ支援センターにご相談ください。」

事業承継に役立つツール②「ローカルベンチマーク」

「ローカルベンチマーク」は事業承継診断と同じく、中小企業庁が提供しており、親族内承継・従業員承継・M&Aで使えます。企業の経営者と金融機関・支援機関等が対話しながら、企業の経営状況を把握・分析するためのツールです。

ローカルベンチマークは、「6つの指標」(財務面)、「商流・業務フロー」、「4つの視点」(非財務面)の3枚組みのExcelシートとなっています。
「ローカルベンチマーク」はこちら

「6つの指標」には、業種や従業員数(最新決算期・前期決算期・前々期決算期)、資本金(最新決算期・前期決算期・前々期決算期)、決算年月(最新決算期・前期決算期・前々期決算期)、売上高、営業利益などの項目に入力します。

「商流・業務フロー」には、製品製造、サービス提供における業務フローと差別化ポイントを記載します。

「4つの視点」には、①経営者、②事業、③企業を取り巻く環境・関係者、④内部管理体制の4つの視点について、それぞれ3~4の項目に入力します。

たとえば「経営者」の視点では、「経営理念・ビジョン」「経営意欲」「後継者の有無、後継者の育成状況、承継のタイミング・関係」の3項目となっています。これらを記載した後、総括として「現状認識」「将来目標」「課題」「対応策」を書き込んでいきます。

事業承継に役立つツール③「経営デザインシート」

3つ目に紹介する、事業承継に役立つツールは「経営デザインシート」です。こちらも事業承継診断、ローカルベンチマークと同様、中小企業庁で提供しており、親族内承継、従業員承継、M&Aで活用可能です。
(「経営デザインシート」はこちら

経営デザインシートは、説明資料を含め、全26ページのPDF形式で提供されています。ひと言で言うと「将来を構想するための思考補助ツール (フレームワーク)」であると表現されており、シートを埋めることで「企業のこれから」を構想できる仕組みです。

「経営デザインシート」そのものは1ページのフォーマットで、その中に20の欄があります。

【これまで】
・資源、知財
・ビジネスモデル、知財の果たしてきた役割
・価値(提供してきた価値、提供先から得てきたもの)
・これまでの外部環境(よい面、悪い面)
・弱み

【移行戦略】
・移行のための課題
・これからの外部環境(よい面、悪い面)
・必要な資源
・解決策

【これから】
・資源、知財
・ビジネスモデル、知財の果たす役割
・価値(手依拠する価値、提供先から得るもの)

また「こんなにたくさん埋めるのは大変……」という忙しい経営者に向けて、簡易版のシートも公開されています。ぜひ活用してみてください。

まとめ

中小企業庁の提供する「事業承継診断」「ローカルベンチマーク」「経営デザインシート」。それぞれ、自社の現状課題や強み・弱みを抽出できる、便利なツールとなっています。「事業承継、何から始めようか」と悩んだら、まずはこの3つに取り組んでみてはいかがでしょうか。

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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