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これだけは知っておくべき! 事業承継における「税務」の基礎知識

事業承継を行ううえでは税金や税法についての知識も求められますが、そのほとんどは専門的であり、一般的な中小企業経営者が学ぶには難解です。そこで本記事では、事業承継においてどのような税金が発生するのか、相続税・贈与税を猶予する事業承継税制について解説します。

事業承継でかかる税金は?

事業承継をする際、どんな税金がかかるのか気になる人も多いのではないでしょうか。ここでは事業承継で後継者が負担しなければならない税金を紹介します。

①相続税

先代経営者が亡くなると、株式などの財産を親族が受け継ぐと発生する税金が「相続税です。親族が後継者になる場合、後継者に相続税の納税義務が発生します。相続の対象となるのは相続時の取得金額で、税率は以下のとおりです。相続する金額が大きくなるにつれて税率が上がる累進税率となります。

【相続税の速算表】


法定相続分に応ずる取得金額
税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

なお、相続税には「基礎控除額」が設けられており、相続の対象となる遺産額が基礎控除以下の場合には、相続税はかかりません。

・相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
例)相続時の遺産額が3,000万円、法定相続人が妻と子ども2人の場合
・基礎控除額 3,000万円+600万円×3人=4,800万円
・基礎控除額が遺産額を上回るので相続税は発生しない

②贈与税

贈与は先代経営者が存命中に行う事業承継の手段のひとつで、大きく以下の3つの制度に分かれます。

・暦年贈与 
多くの人が「両親や兄弟姉妹から現金を贈与してもらっても、110万円までなら税金がかからない」と耳にしたことがあると思います。これが暦年贈与(正式名称:暦年課税制度)です。
正確には、「年間(1月1日から12月31日まで)に受けた贈与額が110万円以下である場合、贈与税は発生しない」という制度です。  

・相続税精算課税制度による贈与 
相続時精算課税制度とは、贈与時は一定の条件下で非課税になるものの、相続時には贈与した財産も足し戻して相続税が課税される制度のこと。相続時精算課税制度には2,500万円の特別控除があります。相続税の節税対策としてはあまり効果が期待できないものの、受贈者にまとまった額の財産を贈与したいケースや、所有している財産の評価額が上昇すると見込まれるケースでは、節税効果があるといえるでしょう。相続時精算課税制度の詳しい解説は、こちらの記事からお読みいただけます。
「意外と知らない! 「相続時精算課税制度」を利用した事業承継」

・事業承継税制
詳しくは後述します。

③譲渡所得税

M&Aを選択した場合、先代経営者は「譲渡所得」という形で収入を得ます。非上場株式の「譲渡所得」の計算式は以下のとおりです。 

 譲渡所得 = 譲渡収入 -(取得費 + 譲渡費用)  

先代経営者は、算出した譲渡所得に対して決められた税率を掛けた「譲渡所得税」を納税しなければなりません。

相続税・贈与税が猶予になる「事業承継税制」とは?

事業承継税制とは、一定の要件を満たすことで、先代経営者から自社株式や事業用資産を後継者が引き継ぐときに発生する「相続税」や「贈与税」の負担が猶予(あるいは免除)される制度です。非常にメリットが大きい制度ですが、この制度の適用期間は、2018年(平成30年)1月1日から、2027年(令和9年)12月31日の「10年間限定」です。

そして、適用を受けるには「2024年(令和6年)3月31日まで」に特例承継計画を策定し、都道府県知事に提出したうえで認定書を受領しなければなりません。認定を受けた後は、2027年までに承継を行わなければ特例の恩恵を受けられなくなります。今後10年ほどの間に事業承継を行おうと考えている経営者の方は、事業承継特例を利用できるよう早めに動き出しましょう。

事業承継税制の手続きの流れ

事業承継税制の適用を受けるには、以下の手続きが必要です。

1.「特例承継計画」を作成する
2.「特例承継計画」を都道府県知事に提出、確認を受ける
3.「承継の実行」(贈与の場合は、この時点で代表の交代が必要)
4.都道府県知事に「認定申請」を行い、認定書を受領する
【ここまでで事業承継税制の適用が完了】
5.以降5年間、都道府県知事に報告書を提出し、税務署に届出書を提出する(毎年)
6.6年目以降は、税務署に届出書を提出する(3年に1回)

猶予から免除になる要件とは?

次の要件に該当した場合、税額は全額免除になります。

・後継者(受贈者)または経営者(贈与者)が死亡 
・後継者(相続人)が死亡
・破産手続開始決定、もしくは特別清算開始の命令等を受けた
・後継者が、次の後継者に対して事業承継税制の適用を受ける贈与をした

まとめ

事業承継でかかる税金は「相続税」「贈与税」「譲渡所得税」の3種類です。どれが課せられるかは事業承継の方法や対象によって異なります。節税する方法はさまざまありますが、中でも効果が大きいのが事業承継税制です。ただし適用を受けるには期限内での申請・承認が必要になるため、事業承継を考えている人はなるべく早く動き出したほうがよいでしょう。

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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