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ポイントは「延長」。令和4年度の事業承継税制改正の内容とは?

中小企業の事業承継を促進するためにつくられた「事業承継税制」。中小企業にとって大きなメリットのあるこの制度ですが、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に、改正が行われたことをご存じでしょうか。本記事では、令和4年度の事業承継税制の改正について解説します。

令和4年度の税制改正とは?

令和4年度の税制改正の主な内容は、以下の4点です。

1.【延長】コロナ禍等を踏まえた事業承継税制に関する所要の措置等
2.【見直し・延長】企業の賃上げを促進する税制措置の抜本強化(賃上げ促進税制)
3.【延長・新設】コロナ禍の経済情勢に対応する中小企業の事業継続・成長への支援
4.【見直し】電子取引データの出力書面等による保存措置の廃止に関する宥恕措置

新型コロナウイルスの感染拡大を考慮し、主に制度の延長や見直しが行われました。本記事ではこれらのうち、「コロナ禍等を踏まえた事業承継税制に関する所要の措置等」について解説します。

そもそも事業承継税制とは?

事業承継税制とは、一定の要件を満たすことで、先代経営者から自社株式や事業用資産を後継者が引き継ぐときに発生する相続税や贈与税の負担が猶予、あるいは免除される制度です。納税が猶予または免除されるには、「会社の要件」「先代経営者の要件」「後継者の要件」「その他の要件」の4つを満たす必要があります。

①会社の要件
・承継法上の中小企業であること
・非上場会社であること
・資産管理法人ではないこと(一定の条件を除く)
・医療法人や風俗営業会社に該当しないこと
・1人以上の従業員がいること
・収入がゼロではないこと

②先代経営者の要件
・会社の代表権を有していたこと
・承継の直前において、一族で50%超の議決権を有していたこと
・承継の直前において、一族の中で(後継者を除く)筆頭株主であったこと
・(贈与の場合は)承継の直前において、代表を退任していること

③後継者の要件
【相続・贈与に共通】
・会社の代表者であること
・後継者一族において、50%を超える議決権を保有していること
・後継者一族において、筆頭株主になること(後継者が2人または3人の場合、総議決権数の10%以上を有することなど)

【相続で承継する場合】
・相続の翌日から5カ月を経過する日において、会社の代表者であること
・相続の直前に会社の役員を務めていたこと(被相続人が70歳未満で死亡した場合などを除く)

【贈与で承継する場合】 ※いずれも贈与時点が基準
・20歳以上であること(令和4年4月1日以降の贈与では18歳以上)
・役員就任から3年以上経過していること

④その他の要件
・納税猶予を受ける税額および利子税額に見合う担保を税務署に提供すること
・会社、後継者、先代経営者が適用要件を満たしていることについて、一定期間内に申請し、都道府県知事からの認定を受けること

詳しくはこちらの記事をご覧ください。
「事業承継で相続税が免除になる方法!――5分でわかる「事業承継税制」の仕組みとポイント」

令和4年度の事業承継税制の改正ポイントは?

事業承継税制は平成21年度税制改正にて創設された制度です。ところが、さまざまな要件や制約があることで適用件数が伸び悩んでおり、何度か改正が行われました。

一度目の改正は「平成30年度税制改正」です。この改正では、10年間の特例措置が設けられました。

二度目の改正は「令和4年度改正」です。新型コロナウイルスの感染拡大によって申請ペースが鈍化したため、「特例承継計画」の提出期限が1年間延長されました。

令和5年3月31日までに都道府県知事に特例承継計画を提出し、確認を受けることになっていたところ、締め切りが令和6年3月31日へと延長されています。

なお、特例承継計画の提出期限は延長されたものの、特例措置自体の適用期限は変更されていません。贈与・相続は平成30年1月1日から令和9年12月31日までに完了する必要があります。

令和4年度の事業承継税制の適用スケジュール

事業承継税制の適用を受ける企業は、以下のような手続きを行う必要があります。

1.特例承継計画の作成する
2.特例承継計画を都道府県知事に提出し、確認を受ける
3.承継を実行する
4.都道府県知事に認定申請を行ない、認定書を受領する

事業承継税制の適用はこの4ステップで完了です。なお、適用を継続させるには、次の2つの条件が必須です。

1.以降5年間、毎年1回、都道府県知事に報告書を提出し、税務署に届出書を提出する
2.6年目以降は、3年に1回、税務署に届出書を提出する

つまり、事業承継税制の特例措置を適用したいなら、次のようなスケジュールで進める必要があります。

1.特例承認計画の策定・提出・確認
令和6年3月31日までに都道府県知事に特例承認計画を提出し、確認を受ける必要があります。

2.相続・贈与の完了
特例措置の適用期限は令和9年12月31日までです。

3.適用継続のための書類作成
・以降5年間、毎年1回、都道府県知事に報告書を提出し、税務署に届出書を提出する
・6年目以降は、3年に1回、税務署に届出書を提出する

まとめ

中小企業にとって大きなメリットのある「事業承継税制」。令和4年度改正では、特例承継計画の提出期限が延長されました。1年間の余裕ができ、ほっとしている企業も多いでしょう。とはいえ、1年はあっという間に過ぎていきます。事業承継税制の適用を検討しているなら、すぐにでも動き出すことをおすすめします。

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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