COLUMNコラム
意外な落とし穴に注意! 事業承継税制が使えない6つのパターン
相続税・贈与税が猶予、あるいは免除されるとして注目を集めている「事業承継税制」。実は、会社の規模などによっては適用されないケースがあることをご存じでしょうか。本記事では、事業承継税制を活用できないパターン(要件)を解説します。
目次
事業承継税制とは
事業承継税制とは、一定の要件を満たすことで、相続税・贈与税の支払いが猶予、あるいは免除される制度のこと。後継者にとって、先代経営者から自社株式や事業用資産を引き継ぐときの負担が大きく軽減される、ありがたい制度といえます。
事業承継税制は平成21年に創設されましたが、あまり活用されてきませんでした。そこで、日本の中小企業の事業承継を促進するため、政府が特例を創設したのです。
事業承継税制の適用期間は2018年(平成30年)1月1日から2027年(令和9年)12月31日の10年間限定。事業承継税制の適用を受けるには、2024年(令和6年)3月31日までに特例承継計画を策定し、都道府県知事に提出したうえで認定書を受領する必要があります。また、認定を受けた後は、2027年までに承継を行わなければなりません。
2027年までの事業承継を検討している方にとっては、非常にメリットの大きい制度です。
適用されないパターン①「会社の要件を満たしていない」
1つ目のパターンは、会社の要件を満たしていないというもの。事業承継税制は、中小企業を支援するために創設された制度であるため、中小企業以外は適用されません。
「中小企業」の定義は、業種によって異なります。
・製造業その他:資本金3億円以下または従業員数300人以下
・卸売業:資本金1億円以下または従業員数100人以下
・小売業:資本金5,000万円以下または従業員数50人以下
・サービス業:資本金5,000万円以下または従業員数100人以下
そのほか、業種にかかわらず「上場企業や資産管理会社(条件による)等に該当しない」と「従業員が1名以上在籍している」が条件となっています。
適用されないパターン②「経営者の要件を満たしていない」
経営者の要件、つまり先代に関する要件もあります。
・承継する会社の代表取締役であること
・贈与または相続の直前に、先代経営者と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超を保有しており、筆頭株主であること
・贈与後は代表取締役から退任していること
適用されないパターン③「後継者の要件を満たしていない」
後継者、つまり事業承継後に会社を経営する人の要件も見逃せません。
【相続・贈与に共通する要件】
・贈与または相続を受けることで、先代経営者と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超を保有し、筆頭株主になること
・贈与を受ける直前に継続して3年以上役員を務めていること
・贈与を受けるタイミングで代表取締役に就任していること
【相続のみの要件】
・相続のタイミングで役員を務め、相続開始から5カ月以内に代表取締役に就任すること
適用されないパターン④「事業承継税制適用後5年間、必要な要件を満たしていない」
意外と知られていませんが、事業承継税制を適用された後も、5年間は以下のような要件を満たし続ける必要があります。
・後継者が代表取締役で、筆頭株主であること
・継続者が制度の対象となる株式を保有していること
・5年間平均で雇用の8割以上を維持していること
・資産保有型会社等、上場会社、風俗営業会社等に該当しないこと
・毎年、都道府県知事へ年次報告を毎年提出すること
・毎年、税務署へ継続届出書を提出すること
適用されないパターン⑤「事業承継税制適用後5年経ったのち、必要な要件を満たしていない」
事業承継税制が適用された後、5年経ったタイミングでは、3つの要件を満たさなければなりません。
・後継者が制度の対象となる株式を保有していること
・資産保有型会社等に該当しないこと
・3年ごとに、税務署に継続届出書を提出すること
適用されないパターン⑥「廃業してしまった」
事業承継税制適用後に廃業してしまうと、それまで猶予されていた相続税・贈与税を支払う必要があるだけでなく、利子税も課せられます。
まとめ
中小企業の負担を大きく軽減してくれる「事業承継税制」ですが、適用前だけでなく、適用後にも満たすべき要件があることに注意してください。
「活用したかったのに、要件を満たしていなかった」「適用を受けたと思ったのに、結局利子税を支払うことになってしまった」とならないよう、専門家に相談のうえ、適用条件をしっかり確認することをおすすめします。
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