COLUMNコラム
事業承継の贈与税・相続税対策
事業承継をすると、中小企業であっても多額の贈与税、相続税が発生する可能性があります。これらの計算方法や税金対策を知っておかないと、「こんなはずでは……」という事態に陥り、親族や後継者に多大な負担を強いることになるかもしれません。本記事では、事業承継にかかる贈与税・相続税を減らすための手続きと流れをわかりやすく解説します。
目次
贈与税・相続税の基本的な計算方法
まずは贈与税と相続税の基本的な計算方法について説明しましょう。これらの税金は、贈与や相続によって受け取る財産の価値に応じてかかります。
贈与税の計算方法
贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額を合計し、そこから基礎控除(年間110万円)を差し引いた金額に対して、税率が適用されます。税率は贈与された金額に応じて変わります。
相続税の計算方法
相続税の計算方法 相続税は、遺産の価値から基礎控除(2021年時点で3000万円+相続人1人あたり600万円)を差し引いた金額に対して、税率が適用されます。税率は遺産の金額に応じて変わります。
税金負担を軽減する4つの方法
続いて、実践的な税金対策の例を紹介します。これらの対策を参考に、事業承継における税金の負担を軽減しましょう。
①贈与を段階的に行う
一度に全ての財産を贈与するのではなく、何度かに分けて少しずつ贈与することで、贈与税の基礎控除(110万円)を毎回受けられます。これにより、全体の贈与税負担を軽減できます。
また、段階的な贈与を行うことで、後継者が徐々に経営に慣れる時間を持てるため、事業承継が円滑に進む可能性が高まります。
②退職金を活用する
事業承継で役員退職金を支給することで、以下のメリットがあります。
1.経営者の引退後の資金を確保できる
2.当期の利益を圧縮して、法人税の負担額を減らせる
3.自社株の評価を引き下げられる
一方で、以下の注意点もあります。
1.退職金に充てる資金を準備しなければならない
2.現経営者は経営から完全に手を引かなければならない
3.役員退職金の金額は無制限に設定できない
詳しくはこちらの記事で解説しているので、ぜひご一読ください。
(「事業承継税制で「退職金」を活用する場合のメリット&注意点」)
③生命保険を活用する
事業承継で生命保険を活用することで、以下のメリットがあります。
1.納税資金・事業資金に充てられる
2.「争続」を回避できる
一方で、以下の注意点もあります。
3.保険料でキャッシュフローが圧迫される
4.解約タイミングによっては損失が出る
詳しくはこちらの記事で解説しているので、ぜひご一読ください。
(「事業承継で「生命保険」を活用するメリット・注意点を解説!」)
④株式の評価額の適正化
事業承継において株式の評価額の適正化を行うことは、株式の移転時に発生する税金負担を軽減する上で重要です。適切な評価額に基づく税金負担を目指すことで、相続人(後継者)が負担する相続税や贈与税のコスト削減が期待できます。
株式評価については、こちらの記事で詳しく解説しています。
(「事業承継のカギ! 「株価評価」の方法をわかりやすく解説」)
相続税・贈与税が納税猶予に! 事業承継税制とは?
事業承継税制とは、中小企業の事業承継を円滑に進めるために設けられた税制優遇措置です。この制度は、事業承継をスムーズに進めることができるよう、一定の要件を満たす場合に、贈与税・相続税の支払いを猶予するものです。
これにより、事業承継時の資金調達や経営資源の確保が容易になるとともに、後継者が引き継ぐ財産に対する税金負担が軽減され、事業の継続や成長を図ることが可能となります。
事業承継税制の猶予制度を利用するためには、税務署への申請が必要です。申請手続きは、贈与税・相続税の申告と同時に行うことができます。申請時には、事業承継に関する書類や、猶予制度の要件を満たすことを証明する書類を提出する必要があります。
そのほか、各種要件を満たす必要があります。詳しくはこちらの記事をお読みください。
(「事業承継で相続税が免除になる方法!――5分でわかる「事業承継税制」の仕組みとポイント」)
なお、事業承継税制の猶予制度を活用するためには、専門家との連携が重要です。税務士や弁護士、会計士などの専門家と協力し、適切な事業承継計画を立案しましょう。
また、相続人や株式の移転に関する相談も、専門家とともに進めることで、よりスムーズな事業承継が実現できるでしょう。トラブルに発展する可能性もあるため、適切なタイミングで相談するのがベターです。
まとめ
贈与税・相続税対策を適切に行なうことで、事業承継を円滑に進めることができます。本記事で解説した税金対策のポイントや仕組み、実践的な税金対策の例を参考にしつつ、専門家との連携を通じて、最適な事業承継税制対策を検討しましょう。
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