COLUMNコラム
吸収分割と新設分割、事業譲渡との違いを解説
会社分割とは、事業を他の会社に承継する事業承継問題の解決方法です。会社分割、吸収分割、新設分割の違いについてと、会社分割と事業譲渡の違いについて解説します。
目次
「会社分割」は 、事業を他の会社に継承する解決方法
会社分割は、組織再編をするのに便利であり、企業グループにおいて多く利用されるケースです。
会社分割には税務上気を付けたいポイントがあり、そのポイントは企業グループでの組織再編の際に満たしやすくなります。それは「適格要件」です。
要件を満たしている場合は、会社分割は「適格分割」とされ、事業を安く引き継ぐことができ、実行した事業承継に対し税金を払う手間が不要になります。
また、会社分割による対価を分割会社が交付される場合を「分社型分割(物的分割)」、分割会社の株主が対価を交付される場合を「分割型分割(人的分割)」といいます。
さらに、会社分割では事業を承継できますが、債務や負債があった場合には、それらも引き継がなくてはならないリスクがデメリットといえるでしょう。
しかし、繰越欠損金は承継されません。これは繰越欠損金を引き継いで意図的に赤字状態を続け、納税を回避しようとするのを防ぐためです。
会社分割は、「吸収分割」と「新設分割」の2種類に分かれます。以下でその2種類について解説します。
【会社分割①】吸収分割は事業を既存会社に継承すること
吸収分割は事業を既存会社に承継する分割方法です。
吸収分割では会社法にしたがって以下の流れで手続きをする必要があります。
1.吸収分割契約を締結
2.(分割会社)事前開示書類の備置
3.(分割会社)従業員への通知
4.反対株主への株式買取請求
5.債権者保護手続き
6.株主総会の特別決議で承認
7.登記申請
8.(分割会社・承継会社)事後開示書類を備置
1.で作成する吸収分割契約書には効力発生日が明記され、以下の手続きの期限が決められます。
・4.反対株主への株式買取請求 効力発生日の20日前から前日まで有効
・5.債権者保護手続き 効力発生日の1カ月前まで有効
・7.登記申請 効力発生日の2週間以内に行う
・8.(分割会社・承継会社)事後開示書類を備置 効力発生日後6カ月まで
吸収分割行った具体的な事例に、ソフトバンクや楽天グループがあります。
【会社分割②】新設分割は事業を新設会社に継承すること
新設分割は、事業を新設会社に承継する分割方法です。会社分割では分割された事業の権利義務がまとめて承継されます。しかし、承継する事業に許認可が必要な場合、許認可は承継されないので再度取得する必要があります。そのとき、新設分割では新設会社設立後に許認可を取得しなければならないため、吸収分割に比べ事業再開まで時間がかかることはデメリットといえるでしょう。新設分割でも会社法にしたがって以下の流れで手続きをする必要があります。
1.分割計画書の作成
2.(分割会社)事前開示書類の備置
3.(分割会社)従業員への通知
4.反対株主への株式買取請求
5.債権者保護手続き
6.株主総会の特別決議で承認
7.登記申請
8.(分割会社・承継会社)事後開示書類を備置
フローは吸収分割とほとんど変わらないように見えますが、分割計画書に記載すべき内容に違いがあるので注意が必要です。
新設分割の具体的な事例に、2016年に持株会社となったアークランドサービスホールディングスがあります。
会社分割と事業譲渡の違いは? 組織再編か、契約かに注目
会社分割と混同されやすいものに「事業譲渡」があります。
それぞれの違いは、会社分割は「組織再編」の意味合いが強く、事業譲渡は「契約」であるというところにあります。
事業譲渡は契約を結び、譲渡(売却)をします。事業の全部を譲渡する場合は「全部譲渡」、事業の中から選択して譲渡する場合は「一部譲渡」です。
また、事業譲渡は会社分割の包括的な承継と違って、従業員それぞれと個別に労働契約を再度結んだり、取引先とのそれぞれの契約において移転手続きが必要になります。こまごまとした手続きが多いという点は、事業譲渡のデメリットと言えるでしょう。
まとめ
会社分割では、事業を他の会社に承継することが可能です。会社分割には吸収分割と新設分割がありますが、自分の会社に合っているのはどの承継方法なのか、じっくり検討する必要があるでしょう。
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