COLUMNコラム
事業承継の支援制度おすすめ3選! 活用したい金融面の支援制度をくわしく解説
事業承継に発生する税金は、高ければ数千万円以上になる可能性がありますが、税金制度や補助金をうまく活用すれば、事業承継に伴う金銭面の負担を減らすことができます。今回は、事業承継を考えていても、税金対策に不安を抱えている人に向けて、事業承継の支援制度を 3 つ紹介します。
目次
支援制度①「事業承継税制」
事業承継税制とは、承継者が会社を継いだ際に発生する相続税や贈与税の納税を猶予する制度です。事業承継税制の対象となるのは、相続または贈与によって会社を引き継いだ承継者であり、売買による株式譲渡などは当てはまりません。
事業承継税制には一般措置と特例措置がありますが、特例措置では株式数の上限がなく、贈与税が100%猶予されます。ただし、2027年(令和9年)12月31日までの期間限定で、期間内に相続や贈与を受けられなければ適用されないため、注意が必要です。
納税猶予を受けた後、一定期間にわたり要件を満たすことができれば、猶予された金額は免除されます。反対に、納税猶予期間中に取り消し事由に該当すれば、予定通り納税しなければならないため、納税猶予を認められてからも守るべきルールがあることを覚えておきましょう。
事業承継税制の猶予を受けるための要件は、大きく分けて以下の4つです。
①先代経営者に対する要件
・代表取締役を経験したことがある
・相続または贈与の直前まで会社の筆頭株主であった
・贈与後において代表取締役を退任している
②承継者に対する要件
・贈与を受ける際の代表取締役である
・相続または贈与を受けることで会社の筆頭株主になる
③会社に対する要件
・中小企業基本法によって定義されている、中小企業に当てはまる
④猶予が認められてから5年間守らなければならない要件
・承継者が会社の代表であり続ける
・承継者が会社の株式を所有し続ける
支援制度②「遺留分に関する民法の特例」
遺留分に関する民法の特例とは、経営承継円滑法において創設された制度で、事業承継時の遺留分のトラブルを解決するために作られました。
被相続人から相続人へ送られる最低限保証された遺産取得分のことを遺留分といい、遺留分に関する民法の特例には、「除外合意」と「固定合意」があります。
除外合意とは、先代経営者の財産から承継者に相続された自社株式や事業用資産の価値を遺留分から除外することへの合意です。
固定合意とは、事業承継で承継された財産も遺留分に含まれますが、遺留分の基礎財産を合意時の時価に固定することに対して合意を得るので、後々自社株式の株価が上昇しても、その分は遺留分には含まれず、株価増加に伴う遺留分侵害請求を回避できるメリットがあります。
事業承継の場合には、承継者へ相続が集中することで、その他の相続人の遺留分を侵害してしまい、トラブルに発展します。
例えば、父、母、長男、長女の家族構成で、先代の経営者である父から長男へと事業承継が行われるとします。遺留分の割合は民法で定められており、この家族構成の場合、母は4分の1、長男と長女はそれぞれ8分の1ずつの遺留分が保障されています。しかし、株式や事業用資産を長男がすべて相続すると、母と長女は保障された遺留分に相当する財産を受け取れません。
このような事態に陥ることを防ぐためには、先代の経営者と前々からよく話し合い、推定相続人全員の合意を得る必要があります。合意書の作成や経済産業大臣への申請など、その他必要な手続きもあるので、事前に準備を始めることをおすすめします。
支援制度③「事業承継・引継ぎ補助金」
事業承継・引継ぎ補助金とは、事業承継にかかる費用や事業承継を契機とした事業再編や事業統合を支援するための補助金制度です。補助金には「経営革新事業」「専門家活用事業」「廃業・再チャレンジ事業」の3種類があり、併用での申請も可能です。
それぞれの概要は以下の通りです。
・経営革新事業
対象:中小企業基本法第2条にて定められた小規模企業者に該当する事業者
新型コロナウイルス感染症などの影響により厳しい経営状況にある事業者
補助上限:600万円以内、または800万円以内
補助率:3分の2、または2分の1以内
・専門家活用事業
対象:中小企業基本法第2条にて定められた中小企業者等に該当する事業者
補助上限:600万円以内
補助率:3分の2以内(買い手支援型)
3分の2以内、または2分の1以内(売り手支援型)
・廃業・再チャレンジ事業
対象:中小企業基本法第2条にて定められた中小企業者等に該当する事業者
補助上限:150万円以内
補助率:3分の2以内、または2分の1以内
まとめ
事業承継時に利用できる支援制度について解説しました。会社の引継ぎに際して、多額の費用を要することは避けられませんが、国からの支援を活用すれば、金銭面でのトラブルを回避でき、円滑に事業承継を進められます。
ただし、申請までに時間がかかるものや、先代経営者との話し合いを必須としているものもあるので、早めに準備を始めることが重要です。
過去記事では、生前贈与のメリットについても解説しているので、ぜひご参照ください。
(「相続税対策だけじゃない!「生前贈与」で事業承継を行なう3つのメリット」)
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