COLUMNコラム
農業の事業継承を成功へ導く方法とは? 新規参入のハードル下がり、ポイントは「税制対策」と「後継者選定」!
農業業界では、高齢者が増加し、後継者不足が深刻な問題となっています。一方で、テクノロジーの進化や環境問題への関心の高まりから、農業に興味を抱く若者たちも増えてきました。
しかし、農業事業を継承するプロセスは未だに整備されておらず、多くの人がどのように進めればよいか分からないという悩みを抱えています。
本記事では、農業の事業承継手順と税制ポイントについて、分かりやすく解説します。
目次
農業業界の現状
農林水産省の調査では、農業に携わる人々が減っていることが分かります。
同省が公表した「農業労働力に関する統計」によれば、基幹的農業従事者(自営農業に主に携わっている者)の数は、平成27年には175.7万人でしたが、年々減少し、令和4年には122.6万人となり、わずか7年間で約53万人の減少となりました。
平均年齢も高齢化に伴い上昇傾向にあり、平成27年では 平均67.1歳でしたが、令和3年には67.9歳に上昇しています。
このように農業業界では、後継者不足と高齢化が進行しており、大きな課題となっています。
政府による施策
政府は、農業業界の未来に向けてさまざまな取り組みを進めています。
中でも特に注目されているのが農地法の改正です。
改正により、法人が農業に参入しやすくなり、農業従事者の確保が強化されることを目指しています。
過去の改正は以下の通りです。
・平成21年農地法改正:農地の権利取得や貸借、農業生産法人要件など
・平成27年農地法改正:農地を所有できる法人の要件など
・令和元年農地法改正:農地集積の支援や事務手続きの簡素化など
後継者に承継するのは「事業」「財産」「無形財産」の3つ
農業の承継は、単なる土地や作物の受け継ぎだけではありません。
「事業」「財産」「無形財産」という3つの要素をバランスよく引き継ぐことが求められます。
事業とは?
農業の事業承継において不可欠な「経営権の移行」のことを指します。
これは経営上の意思決定や責任を担う権利であり、後継者にはこの経営権が引き継がれます。
財産とは?
農地や畑、借入金などといった有形資産のことを指します。
資産の使い道を事業用と個人用に適切に仕分けることで、トラブルを回避し、後継者への引き継ぎを円滑に進めることが重要です。
無形財産とは?
農業経営におけるノウハウやブランド、信頼などを指します。
ノウハウの共有、ブランド価値と信頼の伝承、コミュニティとの良好な関係は必要不可欠です。
農業経営者が事業承継を成功させるポイント①「税務的な観点」
農業経営者が事業承継を成功させるポイントの1つは、「納税猶予制度を活用すること」です。
事業承継において、多くの経営者が悩むのが税金です。事業を引き継ぐ際には、相続税や贈与税が課されるため、これが原因で経営が困難になることもあります。
そこで、そのようなリスクを避けるために、政府が提供する支援策を賢く活用しましょう。
以下では、2つの支援策をご紹介します。
①農地に関する納税猶予制度
納税猶予制度は、農地に関する特別なルールで、生前に農地を一括で贈与した場合や相続した場合に、贈与税や相続税の支払いを一時的に延期する制度です。
これには以下の3つのケースがあります。
・被相続人の条件(いずれかに該当する必要があります)
1.死亡の日まで農業を営んでいた人
2.生前に一括で農地を贈与した人
3.死亡の日まで農地を特定の方法で貸し出していた人
・相続人の条件(いずれかに該当する必要があります)
1.相続税の申告期限までに農業経営を開始し、その後、引き続き農業経営を行う人
2.生前一括贈与を受けた受贈者
3.相続税の申告期限までに特定貸付け又は認定都市農地貸付け等を行った人
②事業承継税制
事業承継税制は、特定の基準を満たすことで、事業用資産に課される贈与税や相続税が猶予または免除される仕組みです。
農業の事業承継税制の要件は、以下の通りです。
1.都道府県知事の認定
2.相続税の申告期限から5年間、農業経営を継続
3.対象となる株式などを一定期間保有
4.農地や建物、トラクターなどの特定事業用資産を贈与または相続によって取得
農業経営者が事業承継を成功させるポイント②「後継者選び」
技術の進化や市場の変動、環境への配慮、デジタルマーケティング、人材管理など多岐にわたる要素が後継者に求められます。これらを総合的に考慮して適切な後継者を選ぶことが、農業経営の成功につながる鍵となります。
まとめ
高齢者が増加する中、農業の将来を保障するには、事業承継が極めて重要です。
経営者自身が持つ経営と日本の農業を支えるためには、事業承継を迅速に進める必要があります。税務は特に複雑であり、承継を検討する経営者にとっては悩みの種となります。
トラブルを回避するためには、税務の専門家に相談することが賢明です。以下の記事では事業承継税制についても詳しく解説しているので、ぜひ参照してみてください。
「【知らないと損をする】事業承継税制をわかりやすく解説」はこちら
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