COLUMNコラム
「事業承継マニュアル」とは? どう活用されているのか解説します
経済産業省が公開した「事業承継マニュアル」をご存じでしょうか。このマニュアルは、中小企業の経営者や後継者が知っておくべき知識やノウハウが多数書かれており、大変参考になる資料です。本記事では、事業承継マニュアルに書かれている内容とその活用方法についてわかりやすく解説します。
目次
事業承継マニュアルとは?
経済産業省が公開している「事業承継マニュアル」とは、中小企業の経営者や後継者が事業承継を円滑に進めるための指針となるもの。このマニュアルには、事業承継の意義やプロセス、後継者の選定と育成、実行方法、法的・税務対策など、事業承継に関するさまざまな情報が網羅されています。
経済産業省「経営者のための事業承継マニュアル」
内容は大きく以下の3部構成になっています。
・事業承継計画の立て方
・後継者の育成方法
・経営権の分散防止や税負担、資金調達等の課題への対策
以下、詳しく解説していきましょう。
事業承継計画の立て方
事業承継計画においては、自社の中長期的な経営方針、方向性、目標などを設定し、その中に事業承継の行動計画を盛り込んでいきます。
事業承継計画の策定においては、以下の手順を踏むことが重要です。
事業承継の意義・目的を共有する
事業承継は、企業価値を次世代に引き継ぐための重要なプロセスです。経営者や後継者、従業員など関係者全員が、事業承継の意義と目的を共有し、一致した理解を持つことが大切です。そのためには、経営者が率先して情報を開示し、従業員との対話を通じて理解を深めることが求められます。
現状把握と課題分析を行う
事業承継計画を策定するためには、まず現状の把握が不可欠です。企業の経営状況や財務状況、市場環境などを分析し、事業承継に関する課題を明確にしましょう。併せて、組織や人材に関する課題も洗い出し、適切な対策を検討することが大切です。
具体的な事業承継計画を策定する
現状把握と課題分析を踏まえて、具体的な事業承継計画を策定します。この計画には、後継者の選定・育成、事業承継のタイミング、経営権の移転手続き、法的・税務対策など、事業承継に関するあらゆる要素が含まれるべきです。また、計画策定の際には、社内外の関係者や専門家の意見も積極的に取り入れることが望ましいでしょう。
後継者の育成方法
後継者の選定と育成は、事業承継の成否を左右する重要な要素です。以下のステップに従って、適切な後継者を選定し、育成していくことが大切です。
選定基準・育成計画を立てる
後継者の選定基準を設定し、家族や社内外の人材から後継者候補を選びましょう。選定基準は関係者にも開示し、理解を深めることが大切です。
選定された後継者に対しては育成計画を策定します。後継者が身につけるべき知識やスキル、育成期間やプロセス、評価方法などが明記しましょう。
育成する
経営者自らが指導やサポートを行い、OJTや研修などを活用して成長を促進しましょう。育成過程でのパフォーマンスや意欲を評価し、フィードバックを行いながら後継者をサポートします。
受け入れ体制を整備する
後継者が円滑に経営に携われるよう、社内の受け入れ体制を整備しましょう。経営陣や従業員が後継者をサポートし、知識や経験を共有する環境を整えてください。このとき、後継者の意見や提案を尊重し、柔軟に対応することが重要です。
経営権の分散防止や税負担、資金調達等の課題への対策
事業承継において、経営権の分散防止や税負担の軽減、資金調達の課題への対策が重要です。これらの対策によって、事業承継後の経営基盤を強化し、企業の成長を促進できます。
・経営権の分散防止:株式の譲渡や承継に適切な取引条件を設定し、経営権の移動をコントロールする契約を締結しましょう。
・税負担の軽減:贈与税や相続税の節税対策を検討し、所得税や法人税の節税対策も重要です。
・資金調達の課題への対策:事業承継に必要な資金を確保する計画を策定し、銀行や金融機関と良好な関係を築くことが重要です。また、事業承継ローンや助成金、補助金などの公的支援制度を活用しましょう。
これらの対策により、事業承継後の経営基盤を強化し、企業の成長を促進できます。
事業承継マニュアルの活用方法
「事業承継マニュアル」を効果的に活用するためには、以下のポイントに注意しましょう。
①経営者・後継者の意識共有:マニュアルを共有し、経営者と後継者が事業承継のプロセスや課題について理解を深めましょう。
②専門家の意見の活用:税務や法務など、専門的な知識が必要な場面では、マニュアルを参考にしつつ、専門家の意見を取り入れることが重要です。
③マニュアルを自社の状況に合わせてカスタマイズ:マニュアルは一般的な事業承継の手順を示していますが、自社の状況やニーズに応じて、適切な対策を講じることが肝要です。
④継続的なフォローアップ:事業承継は一度きりのイベントではなく、継続的なサポートが必要です。マニュアルを定期的に参照し、適切な対応を続けましょう。
まとめ
「事業承継マニュアル」を参考に、後継者の選定や育成、経営権の分散防止、税負担の軽減、資金調達などについて考えましょう。実際に活用する際には、専門家の意見を取り入れつつ、自社の状況に応じてマニュアルをカスタマイズし、継続的なサポートを行うことが重要です。
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