COLUMNコラム

TOP 経営戦略 会社が2つに分かれたとき「商標の承継」が運命を分けた 国内トップのオンライン商標登録サービス企業に聞く、その重要性は
S経営戦略

会社が2つに分かれたとき「商標の承継」が運命を分けた 国内トップのオンライン商標登録サービス企業に聞く、その重要性は

2017年に商標登録のオンラインサービス「Cotobox(コトボックス)」を開発し、業界のデジタル革命の先駆者となった企業「Cotobox」。特許庁に出願された商標の4%に関わり、国内トップシェアを占めるサービスだ。知的財産に関する専門知識や手続きの煩雑さをテクノロジーで解消し、中小企業も手軽に商標登録できるようになった。企業にとって、「商標」はどんな好影響をもたらし、「商標」を失うことはどんなデメリットがあるのか。開発した企業「Cotobox」(東京都千代田区)の五味和泰代表取締役CEOに聞いた。

ほとんどの中小企業で進まない「商標登録」

——コトボックスが中小企業に対し、サービスを積極的に展開しているのはなぜでしょうか。

五味 特許庁によると、国内の中小企業およそ350万社のうち、1年間で商標登録した会社は約3万社と1%以下に過ぎません。新しい商品やサービスが毎年登場しても、商標登録を怠る傾向があります。

コトボックスでは、その点が将来的なリスクになると考え、スピーディーかつ安価に商標登録ができるオンラインサービスを展開しています。

——商標登録の取得について、近年の中小企業の動向について教えてください。

五味 eコマースでは、プラットフォーム企業が、出店者の商標登録を条件に広告の上位表示などのインセンティブを提供することがあります。売上に直結する仕組みが、企業に対して商標登録を促す動機付けになっていると思います。

また、業界全体では、侵害の警告を受けたり、商標のトラブルが起きたりした経験から、商標登録を行うケースもあります。知財リテラシーのある大企業出身の起業家が、自らの経験から率先して商標登録を行うケースも見られます。

難しすぎる世界に、平易なコミュニケーションで

——経営者が抱える知財に対する課題として、何が挙げられますか?

五味 特に日本は、知財に関する保護や意識が、アメリカなどの海外諸国と比べて非常に弱いと感じます。背景に、知的財産制度が、専門知識を有する人やお金を持っている大企業のみが活用できる制度になっており、中小企業や個人事業主に対してハードルが高いという側面もあると思います。そのハードルに対し、私たちはデジタルを使って解決してきました。

一般人にとって、知財に関する言葉は非常に難解で、手続きも煩雑です。そもそも相談できる専門家がどこにいるか分からない。そうしたハードルをテクノロジーで容易に乗りこえたい。平易なコミュニケーションで、価格も安くというサービスに注力してきたのがコトボックスです。

フィンテックなどテーマが大きい場合だと、企業も先行して取り組んでいらっしゃることも多いですが、知財に関してはかなりニッチで専門領域が深い分野です。私たちのような専門家や、テクノロジーを活用した解決策が求められます。

「商標」の承継で失敗した2つの企業

——知財の保護は、企業にどのような好影響を与えるのでしょうか。

五味 二つの事例を紹介します。

一つは特定の地域で有名な運送会社が事業承継をする際に、企業が二つに分かれたケースがありました。その際、屋号を商標登録していなかったことが発覚し、事業を引き継いだ家族側が社名を引き継げなかったのです。

もう一つは、地方にある寝具店の事業承継です。事業を分割する際、片方だけが商標登録を行ったことで、もう一方が屋号や商品名を使用できなくなる事例がありました。どちらも、事業承継における「商標」の失敗例です。今まで築いてきたブランド価値を失ってしまったのです。

——事業承継において、どのようなサポートを行っているのでしょうか?

五味 企業や商品のブランド価値を保護することは、事業を永続的に続けて行くために非常に大切です。コトボックスでは、中小企業に対して知財に対するリテラシー向上を含めたサービスを展開しています。経営者が抱えている問題を、知財の面からしっかりとサポートしています。

世界中で高まる「商標」への関心

——一方、大企業向けにも知的財産に関するサービスを展開されていると聞きました。

五味 昨年、コトボックスは大企業向けに商標管理クラウドサービスをスタートしました。このサービスは、大企業による膨大な商標の管理を効率化するためのものです。

商標の出願や登録だけでなく、維持管理などに関わる手間やコストを最小限に抑えることができます。国内や外国の主要国だけでなく、発展途上国も含めた商標登録や更新手続きを効率的に行うことができます。

——今後の展開を教えてください。

五味 キーワードは、グローバル化だと思います。世界中で知的財産を巡る関心は高まっています。日本国内だけでなく、サービスを多言語化することで、他国の企業も利用できるようなプロダクトを進めています。

数年後には、日本だけでなく、世界中の知的財産を管理するプラットフォームへと成長させていきます。グローバル化が進む中、こうしたプラットフォームの必要性がさらに増していくと予測しています。

Cotobox

2016年創業。「人と知財を結ぶ。」をミッションとして掲げ、知財を誰もが平等に取り扱える社会を目指し、独自開発のAI技術により最短3分で商標登録出願の準備ができる商標登録サービス「Cotobox(コトボックス)」を展開。利用企業者数は2023年10月時点で5万社を突破。特許庁に出願されている商標のうち約4%が「コトボックス」と提携する複数の事務所を経由しており、シェア率ナンバーワンを誇る。

FacebookTwitterLine

賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

記事一覧ページへ戻る