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商標登録の世界にデジタル革命が起きた…! 国内トップに立ったオンラインサービス、「商標は価値にもコストにもなる」

2017年、業界地図を変えるオンライン商標登録サービスが登場しました。煩雑な手続き無しで、弁理士への商標申請依頼だけでなく類似商標の調査などもオンラインで完了できます。今や、5万社以上の企業が利用し、日本の商標登録に関して国内シェア1位に躍り出たサービスの名は「Cotobox(通称・コトボックス)」です。開発した企業「Cotobox」(東京都千代田区)の五味和泰代表取締役CEOに、サービスの革新性について聞きました。

「紙を使った資料」ばかりの業界だった

——オンライン商標登録サービス「コトボックス」とはどのようなサービスでしょうか。

五味 「コトボックス」は、インターネットで簡単に類似商標の調査や商標申請依頼、商標登録後の管理までがオンライン上で完結できるサービスです。2016年に弊社が発足し、2017年にサービスを開始しました。

——なぜ、こうしたサービスを始めたのでしょうか?

五味 私はもともと弁理士で、特許事務所に勤めていました。当時から何かモヤモヤを感じていました。その一つに特許事務所など「士業」の事務所が非常に旧態依然としており、特に紙を使った資料のやり取りが多かったのです。

もう一つは、中小企業が知的財産に関して費用をさくことができない現状でした。

私は、2014年にアメリカに留学し、当時ちょうどアメリカでリーガルテック、いわゆるテクノロジーを使ったイノベーションが加速していました。それを目の当たりにし、「中小企業にテクノロジーを導入すれば、より多くの人たちに知的財産を提供でき、生産性を上げられるのではないか」と構想が浮かび、企業と弁理士を結ぶプラットフォームを作ろうと思ったのがきっかけになります。

生産性が飛躍的に向上

——商標登録の業界において、DX化やAI活用は新しい取り組みだったのでしょうか。

五味 その通りです。従来の商標登録業務は極めてアナログでしたが、「コトボックス」の登場で、申請から登録まで全てオンライン上で完結できるようになりました。一部は、AIを使って類似商標を無料で何度も調査できます。書類作成もすべてオンラインとなり、DX化を実現しています。

デジタル移行することで、飛躍的に生産性が向上したと思います。商標について疑問があればチャットで相談でき、スピーディーな問題解決はもちろん、知的財産に関して慣れていない人にとっても心強い手助けとなっているはずです。

——「コトボックス」を利用する企業は増えていますか。

五味 2017年のサービス提供開始以降、順調に利用企業数は増え、2020年9月に1万社、2021年6月に2万社を突破、2022年3月に3万社を突破しました。今では5万社を超え、特許庁に出願された商標の4%に関わっており、シェア率ナンバーワンのサービスに成長しています。

商標の大切な役割とは

——企業において、商標登録はどのような役割を持つのでしょうか?

五味 会社名、商品名やサービス名を使用する権利を国から保障されている点が、大きな役割です。たとえば、急に他社から商標を使うことを禁止されれば、会社名やサービス名を変えないといけなくなってしまいます。会社にとってはコストも時間がかかり、大きな衝撃となります。

しかし商標権を保有していれば、所定の料金を支払うことで一定期間その商標を使用する権利が保障されます。会社のブランドを確立する上で、大切な役割を果たしていると言えます。

——商標や知的財産は、事業承継にどう関わるのでしょう?

五味 事業承継のタイミングは、商標に限らず企業が持つ知的財産を、あらためて整理する良い機会です。これは創業時や新規事業スタート時にも言えますが、事業承継は代々続く屋号や、サービスや商品の潜在的な価値を再確認する意味でも必要です。

事業承継のタイミングでは、潜在的な価値を「見える化」することが大事です。商標を含む知的財産という「見えない価値」を、次世代とともにどう認識し、引き継ぐかですね。

商標を「切り捨てる」ことも時には選択肢に

——商標権を「整理」するとはどういうことでしょうか。

五味 商標権などの知的財産権は維持するコストが発生します。そうした「見えない価値」を可視化して、本当に必要かどうかを見極め、必要でなければ切り捨てるというやり方もあるかもしれません。

ロゴマークなどもそうですが、復刻版で使用する場合は当然取っておく必要がありますが、確実に使わないなら手放す判断も、事業の存続と承継には必要だと思います。

——商標権は価値にもコストにもなるのですね。

五味 「商標登録しておいたほうがいい」と、商標権を多く取る企業もいますが、実際には事業と関係がなかったり、使っていなかったりするケースもあります。

ブランドの保護になる一方で、維持するのにコストがかかりますから、私たちは、その点を知的財産の専門家としてサポートしたいと考えています。

企業が成長している、あるいは何十年も存続しているならば、何かしらの知的財産は潜在的に存在しています。事業承継のタイミングで、まずは潜在的なものを一度クリアにする作業をぜひやっていただきたいです。

事業戦略における「選択と集中」を、知的財産でも行うことで、承継後の成長の加速度や、あるいは参入障壁についての気づきが生まれるはずですから。


cotobox株式会社

2016年創業。「人と知財を結ぶ。」をミッションとして掲げ、知財を誰もが平等に取り扱える社会を目指し、独自開発のAI技術により最短3分で商標登録出願の準備ができる商標登録サービス「Cotobox(コトボックス)」を展開。利用企業者数は2023年10月時点で5万社を突破。特許庁に出願されている商標のうち約4%が「コトボックス」と提携する複数の事務所を経由しており、シェア率ナンバーワンを誇る。

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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