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就活生の78%が「パーパス重視」、給与重視はわずか パーパスのない企業は、Z世代を採用できない時代に

Z世代は就職活動で、会社の理念「パーパス」を重視して会社を選ぶようになってきた。大手企業では、一度辞めた社員を再び採用する「アルムナイ採用」が急速に普及する。このことは、会社と個人のパーパスのすり合わせが重要な時代に突入したことを示す。深刻化する人材難や後継者不足を解消するためにパーパスをどう活かせばいいのか?パーパスの重要性を説く経営コンサルタント「やまぐち総研」(山口市)の中村伸一所長に聞いた。

パーパス、現代の採用活動では超重要

——パーパスが経営に与える影響は大きいですか。

中村 非常に大きいです。「パーパス」とは、組織が存在する意義や目的を明確にして、ビジネス戦略や意志決定の基盤として活用するためのものです。

最近、強く感じるのは、パーパスの就活への影響です。今、多くの学生たちは企業の存在意義や社会的意義に対する関心が高いです。意欲的な若者に、「会社を辞めた理由」を聞いてみると、何人かが「会社が掲げる理念と実態が全然違うから辞めた」と話していました。

——株式会社学情の2023年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象にした調査によると、就活で「企業のビジョンやパーパスを重視する」と回答した学生が、実に78.4%に上りました。一方で、企業選びで重視することでは、給与の高さは17・3%でした。

中村 とりわけZ世代は転職が盛んです。パーパスは社員の定着率にも影響するのではないでしょうか。パーパスを導入した大手企業に聞くと、社員個人の「マイパーパス」もつくっているケースが増えてきました。

会社のパーパスとマイパーパスが一致していれば会社を辞めることはありませんが、離れてくると、転職したり、独立したりしていきます。

——パーパスは掲げるだけでなく、実践することも大事ですね。

中村 企業はパーパスを掲げたのであれば、実践している姿をプロモーションしないといけません。パーパスが本当に実践されているかどうか、学生や新入社員は注視しています。

人材不足の時代、パーパスでミスマッチを防ぐ

——パーパスが影響を与えるのは新採だけでしょうか?

中村 もうひとつ、最近、顕著なのが「アルムナイ採用」の広がりです。アルムナイ採用とは、一度会社を辞めた人の採用で、大手企業を中心に当たり前になってきました。

たとえば、パナソニックグループは2024年4月から退職者をつなぐ「パナソニックグループ・アルムナイコミュニティ」の本格運用を始めました。何らかの理由で辞めて、転職したり、起業したりしても、自分のパーパスに照らして元の会社に戻ることができます。

人手不足が深刻化する中で、今後は中小企業も含めてアルムナイ採用が活発になるのではないでしょうか。そうすると、企業も個人もパーパスを持ち、ミスマッチを防ぐことが重要になっていきます。

パーパスが、異業種コラボをつなぐ

——パーパスには、人材確保のほかにどのようなメリットがありますか。

中村 2021年に九州経済産業局主催の「九州アトツギMeetup -ツギの事業創造3Days-」というイベントがあり、私はワークショップのファシリテーターを務めました。参加した十数人の跡継ぎの方々が未来を描く発表をしたのですが、その内容がパーパスの表明に限りなく近いものでした。

結果、跡継ぎの方々による共創パートナーが生まれたのです。思いが共感すればともに行動しやすく、共創プロジェクトを起こしやすいことの表れではないでしょうか。

たとえば、コロナ禍でキャンプがブームになっていたこともあり、技術を生かしてアウトドア機器を作っている鉄板加工屋さんと、元々アウトドア市場とつながりがある釣具屋さんが意気投合して「一緒に何か市場をつくりましょう」というコラボレーションが生まれたのです。

——普段関わらないような経営者同士でも、思いが伝われば化学反応が生まれるということですね

中村 私は「コラボレーションの創発」という取り組みを九州・中国地区で10年くらい続けていました。さまざまな事業者40人くらいに集まってもらい、それぞれの経営資源を掛け合わせて何かを生み出そうというワークショップです。

10年間を振り返ってみると、コラボレーションが長く続いているのは、結局、理念で結びついた人たちです。思いや理念が組み合わさってコラボレーションを始めた人たちは、いまだに活動を続けています。中には一緒に会社を立ち上げた例もあるくらいです。

一方で、お互いに「営業力の弱い部分を補い合おう」という試みは、3カ月もしないうちに自然とコラボレーションが解消されて、カタチにならないことが多かったですね。企業同士が連携するためにも、理念や思いは非常に重要だと思います。

パーパスでつながる跡継ぎのコミュニティをつくりたい

——中村さんは、Z世代から跡継ぎを創出する取り組みも実践していますね。

中村 親や親族が事業を営んでいる高校生や大学生は多いと思います。継ぐか継がないかは別にして、高校生や大学生に一度、ファミリービジネスを見てもらいたい思いがあります。

中小企業庁が後継者育成を目的に催す「アトツギ甲子園」に、最近は高校生がエントリーするようになってきました。教育機関がもっと本気になってサポートすれば、高校生らのエントリーがより加速するでしょう。

若い人たちは、少なからず家業に関心を持っています。興味関心を事業承継につなげるための仕組みができると、後継者不足問題の解消につながると思います。

——後継者不足を解消するためにもパーパスは重要でしょうか。

中村 事業承継を考えたときに、大切なのはいかに同志をつくるかです。同じ思いの人たちが、業種を超えた仲間をつくり、コミュニティが生まれるのが理想です。そこで必要になるのも、パーパスです。

コミュニティの中でお互いにパーパスを発表し合い、掛け合わせていけば、次のステップへと発展すると思います。自分たちが持つ技術や経営資源を出し合って、共創プロジェクトが生まれるでしょう。

スタートアップではそうした活動が増えていますが、跡継ぎに関していうと、プロジェクトを生み出すようなコミュニティがまだまだ少ない。そうした「場」を増やしていきたいですね。

中村伸一さんプロフィール

やまぐち総合研究所有限会社 取締役所長。1965年、山口県山口市に生まれる。九州産業大学卒業後、中国松下システム(株)に入社。友人3名とIT関連事業を行うキャスト(株)を設立。取締役として2年、代表取締役を5年間つとめる。2005年、やまぐち総合研究所有限会社を設立。企業の事業づくりを支援する達人として、コラボレーションを事業創造の中心に考え、「ワクワクコラボレーション」を商標登録して「ワクワク」する事業創造の支援をしている。

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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