COLUMNコラム
異例の大ヒット、老舗刃物メーカーの「自動生クリームホイッパー」 自宅でリッチな味わい、「大の生クリームマニア」の社員が発案
「刃物の聖地」発祥の老舗刃物メーカーが今年発売した「自動生クリームホイッパー」が、異例の大ヒットとなっている。大の生クリームマニアという社員が、伝統の刃物製造の技術を生かして手がけた製品で、自宅で「リッチ」な味わいを楽しめるうれしい商品だ。
目次
ワンランク上の味わいを
岐阜県関市発祥の老舗刃物メーカー「貝印」(東京都千代田区)が発売した「生クリッチ」だ。冷えた生クリームをセットしてボタンを押すだけで、自動的に生クリームをホイップできる。
パーツの構成はいたってシンプルで、本体・中蓋・ウィスク・コンテナの4部品のみ。本体以外は食洗器に対応し、充電式のコンパクトなデザインも人気を集めている。
商品名の「生クリッチ」とは、「生クリーム」と「リッチ(ぜいたくな)」をかけ合わせた造語。「自分で泡立てた生クリームを、食材や料理に沿えて、ワンランク上の味わいを楽しんで欲しい」という思いが込められている。
クラファンも活用、異例の大ヒット
「生クリッチ」は、クラウドファンディングを生かして反響を呼んだ。2023年12月から応援購入の募集を行い、募集初日に目標額の50万円を達成。わずか3日で初期に準備した300個を完売、追加分の1,000個も約2カ月間で完売した。その時点で売上は1100万円を突破し、2024年3月から一般販売もスタートした。
2024年3月25日の一般発売後、11日間で初期入荷分を完売。7月末に再販するも、7日間で完売するなど異例の大ヒットになった。
企画・開発を担当した貝印株式会社 研究開発本部の小林甫(はじめ)氏は、自他共に認める大の生クリームマニア。「生クリームをもっと手軽に楽しめるように」という思いが企画発案に至った原動力だったと話す。
きっかけは、事業承継を機にスタートした「社内開発コンペ」
貝印株式会社は1908年に創業した老舗の刃物メーカーだ。2021年に4代目の遠藤浩彰氏が事業承継し、新たなスタートを切った。
その年から始まったのが、社員のアイデアを商品化する企画「貝印開発コンペ」。「手軽に生クリームを」というコンセプトは、企画発案の小林氏の熱意と共に注目を集め、2年間の開発期間を経て、製品化第1号に至った。
事業承継を機に醸成された「社員の意見を尊重する」という環境。メーカーが蓄積した技術と人材、新社長の企画力、それらが合わさって生まれた大ヒット商品といえるだろう。
取材・文/庄子洋行
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