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事業承継で代表権を後継者に引き継ぐポイントは?

事業承継の重要な課題のひとつに、「代表権の引き継ぎ」があります。引き継ぐタイミングを間違えれば、事業承継税制の優遇処置を受けられないなど、さまざまなデメリットが発生します。本記事では、円満かつ迅速に代表権の引き継ぎを行なうためのポイントを解説しましょう。

事業承継で引き継ぐ「代表権」とは?

「代表権」とは、取引や業務など会社の決定を行なう法律上の権限です。代表権を持っている人は、会社の定款や法務局で「代表取締役」と登記された人を指します。代表取締役は1人と定められておらず、「共同代表」として複数の代表取締役を置く会社もあります。

ちなみ、「社長」「会長」は法律上の名前ではなく、会社内の役職名のことで、「代表取締役社長」「代表取締役会長」などの肩書きは、法律上の名前と社内での名役職名を組み合わせた言葉です。

代表権を引き継ぐベストタイミングは?

前述したように、後継者に代表権と株式を贈与するタイミングを間違えると、事業承継税制の優遇措置を受けることができなくなります。ここで、代表権を引き継ぐタイミングの例を挙げてみましょう。次の3つのうち、引き継ぎのタイミングとして正しいのは、どのケースでしょうか?

ケース① 代表権を移転してから、株式の贈与を行なう
ケース② 代表権を父親から親族外の役員に渡し、その後息子に移転するなど、代表権を2回移転してから株式の贈与を行なう
ケース③ 株式の贈与を行なってから代表権を移転する

タイミングが正しいのは①と②で、③は不正解です。税制の優遇措置を受けるためには、②のように代表権を直接移転していなくても問題ありません。最も重要なのは、株式の贈与時に、承継会社の代表権を新代表が保有していること。要件を満たして事業承継税制を活用すれば、株式の贈与税の全額が納税猶予を受けられます。

「事業承継税制の優遇措置」とは?

社内事業承継やM&Aによる事業承継では、自社株を売却することが一般的ですが、親族内での事業承継の場合、生前贈与や相続で株式を引き継ぐことが多いです。経営が順調な企業であれば、自社株式の評価額が予想以上に高額となり、多額の贈与税や相続税が発生します。

贈与者が突然死亡することがあれば、受贈者は贈与税が準備できず、廃業の事態に追い込まれる恐れもあります。この問題を解決するために国が定めたのが、2009年の税制改正時の「事業承継税制」です。

これは、後継者が引き継いだ自社株式にかかる贈与税や相続税に納税猶予を受け、その後一定期間にわたって要件を満たせば、猶予された税額が免除されるという内容の精度。

2018年の税制改正で、「10年間の期限限定の特例措置」としてさらに要件が緩和され、利用しやすくなりました。一般措置では、納税猶予の対象となるのが株式総数の3分の2でしたが、特例措置では全株式が対象になります。

また、納税猶予の割合が一般措置では贈与100%、相続80%でしたが、特例措置では100%が認定されることになりました。

ただし、一般措置では承継計画の書類の提出が不要であったのに対し、特例措置では必要となったことには注意しましょう。くわえて、納税猶予が認められても、猶予期間中に取り消し理由に該当することにも気をつけなければなりません。

取り消し理由としては後継者が代表者を退任する、同族の議決権数が過半数以下になった場合などがありますが、これに該当すると、相続人は猶予された税額と利子を納付しなければなりません。

まとめ

事業承継税制を利用するためには、代表権を引き継ぐタイミングがとても重要です。 本記事でご紹介した視点をふまえて、ベストなタイミングで代表権を引き継ぎ、事業承継を成功させてくださいね。

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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