COLUMNコラム
売買・贈与・相続のどれを選ぶ? 株式譲渡による事業承継のメリット
株式を後継者に引き継ぐ方法はいくつかありますが、中小企業における事業承継の場合、株式譲渡が主流となっています。本記事では、株式譲渡による事業承継の利点について解説します。
目次
「株式譲渡による事業承継」とは?
事業承継における株式譲渡とは、オーナーが保有している株式を、後継者に譲り渡すこと。これによって会社の経営権が承継されます。
自社株式の引き継ぎが必要な理由
そもそも、なぜ自社株式の引き継ぎが必要なのでしょうか。それは、自社株式の保有割合によって、後継者の権限の範囲が変わってくるからです。
株主総会の決議には「普通決議」と「特別決議」の2種類があります。
【普通決議】
議決権総数の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数で決議されるもの。役員の選任・解任や余剰金の配当などといった事項が、普通決議によって決められます。全体の50%の株式を保有していると、普通決議を単独で成立させることが可能となります。
【特別決議】
議決権総数の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を必要とするもの。定款の変更、株式併合、監査役の解任、資本金額の減少、事業の全部または一部の譲渡、譲受、賃貸、解散・合併・会社分割などといった事項が、特別決議によって決められます。
全体の3分の2以上の株式を保有していると、特別決議を単独で成立させることが可能となります。
「3パターンの株式譲渡」について把握しよう!
まず、事業承継での株式譲渡の方法には、「売買」「贈与」「相続」の3種類があります。
売買
売買では、その名の通り、対価と引き換えに株式を譲渡するものです。この手法や、従業員を後継者とする場合や、M&Aによる事業承継において用いられます。株式を譲り、対価を得た先代には、所得税が課されることとなります。
贈与
贈与は、現経営者(先代)が存命のうちに、株式を無償で譲り渡す方式をいいます。贈与が行われるのは、多くの場合、親族内承継においてです。従業員承継でもまれに贈与が行われますが、その数は決して多くありません。贈与においては、贈与を受けた後継者に贈与税が課されることとなります。
相続
現経営者(先代)が亡くなると、後継者は、相続によって株式を取得します。相続の場合、後継者には相続税が課されます。場合によっては高額にのぼることもあるため、先代の生前のうちにどれだけ税金対策をしておけるかがカギとなります。
株式譲渡による事業承継のメリットとは?
ここでは、「売買」「贈与」「相続」のそれぞれについて、メリットを紹介します。
売買による株式譲渡のメリット
売買による株式譲渡には、次のようなメリットがあります。
①トラブルが起こりにくい
後継者は、まとまった金額を支払い、自社株式を買い取ることになります。そのため、他の法定相続人とのトラブルが起こりにくいといえるでしょう。
②贈与税や相続税が課されない
後継者にとって、贈与税や相続税は大きな壁となります。多額の税金を支払うことによって、今後事業を運転していく体力がなくなってしまうことも。その点、株式を購入する場合は、贈与税や相続税は課されません。
③先代にまとまった現金を渡せる
先代は、自社株式を後継者に買い取らせることで、まとまった現金を受け取れます。そうして得た資金は、老後のための蓄えとなるでしょう。
贈与による株式譲渡のメリット
①自社株式を買い取る資金を用意する必要がない
贈与によって自社株式を受け取る場合、買い取り費用を用意する必要はありません。
②税金対策を講じやすい
買い取り費用は発生しませんが、贈与税は課されます。とはいえ、先代が存命のうちに対策を講じていれば、贈与税はある程度軽減されます。
相続による株式譲渡のメリット
①自社株式を買い取る資金を用意する必要がない
贈与と同じく、相続においても、自社株式の買い取り費用は必要ありません。
②贈与よりも課税額が少ない
相続税は課されますが、贈与税よりも基礎控除額が大きくなっています。先代がある程度の備えをしておけば、後継者の負担は軽微なもので済むでしょう。
まとめ
株式譲渡による事業承継の方法は3つ。売買・贈与・相続です。それぞれに異なるメリットがあるため、自社に最適な方法を選びましょう。いずれにせよ、現経営者が生前のうちに、税金対策や費用の準備をしておく必要があります。
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