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最大800万円補助! 事業譲渡で活用できる補助金制度の対象と概要について解説

経営者の高齢化と後継者不足により、黒字・赤字にかかわらず休業・廃業となる企業が増加しています。特に、この傾向は中小企業に多く見られます。日本の各産業を支える中小企業の休廃業は、この国にとって大きな損失となる恐れがあり、何とかして支えていかなければなりません。そのために、近年スタートした制度が「事業承継・引継ぎ補助金」制度です。事業承継には資金が必要となるため、こうした制度は積極的に利用していくべきでしょう。この記事では、「事業承継・引継ぎ補助金」制度の概要と受給要件について解説します。

事業承継・引継ぎ補助金とは?

令和2年度より実施されている「事業承継・引継ぎ補助金」制度についてご存じでしょうか。令和5年には、3月20日から5月12日の期間で「経営革新事業、廃業・再チャレンジ事業」の申請受付が、3月30日から5月12日の期間では「専門家活用事業」の申請受付が行われていました。
ここでは、「事業承継・引継ぎ補助金」制度の概要について紹介します。

補助金の概要

当該補助金制度は、近年の企業、特に中小企業における課題の一つである「経営者の高齢化」や「後継者不足」に伴う「企業の休業・廃業傾向の増加」を防止すべく、中小企業および小規模事業者の事業承継を支援する制度です。
2023年1月16日に公開された帝国データバンクの調査によると、2022年の全国における企業倒産は6,376件におよび、3年ぶりに前年を上回りました。黒字での休廃業率は54.3%となり、過去最低を記録しています。黒字にもかかわらず休廃業という選択肢を迫られる背景には、「物価高による過剰債務」「コロナ禍の影響」「人手不足」などが影響しており、事業の継続は諦めざるを得ない中小企業や小規模事業者の姿が見て取れるといえるでしょう。
このような事態を防ぎ、事業を存続させていくためにも、「事業承継・引継ぎ補助金」制度が必要とされているのです。

3つの補助事業

当該補助金制度は、支援対象別で3種類の補助事業に分けられています。「経営革新事業」「専門家活用事業」「廃業・再チャレンジ事業」です。

・経営革新事業
経営資源の引継ぎ型創業や事業承継を行った者、または補助事業期間中に行う予定の者を対象としており、「承継後の取り組みにかかる費用」の補助が目的です。「創業支援型」「経営者交代型」「事業譲渡・株式譲渡型」の3タイプに区分されています。

・専門家活用事業
補助事業期間に経営資源を譲り渡す、または譲り受ける者が対象です。近年、中小企業における事業譲渡などが増加傾向にあることから、「事業引継ぎ時などにかかる費用」の補助を目的に設立されました。この補助事業は、会社の売り手を支援する「売り手支援型」と買い手を支援する「買い手支援型」の2タイプに分けられます。

・廃業・再チャレンジ事業
事業承継の検討・実施などに伴い廃業などを行う者が対象です。事業承継に伴う廃業に際しても、廃業登記費や在庫処分費、解体費や原状回復費などのさまざまな費用がかかるため、これらを補助するために設立されています。

各補助事業の補助率と補助上限額

続いて、各補助事業の補助率と補助上限額について見てみましょう。それぞれの補助率、および補助上限額は以下の通りです。

申請類型補助率補助上限
経営革新1/2・2/3~600万円
経営革新1/2600万円~800万円
専門家活用1/2・2/3~600万円
廃業・再チャレンジ1/2・2/3~150万円

※補助率は、補助対象の要件により異なります。

※「経営革新事業」について、補助上限額は「一定の賃上げを実施する場合」に限り、600万円から800万円に引き上げとなります。

補助金を受けるには

次に、当該補助金を受給するための要件、対象となる経費、および申請方法について解説します。

補助金の要件

2023年6月23日より交付申請受付を行っている「6次公募」の内容と照らし合わせて紹介します。

経営革新事業については、「Ⅰ型」「Ⅱ型」「Ⅲ型」いずれの場合も期間内に事業承継を実施した(またはする)ことが要件です。

専門家活用事業については、「Ⅰ型」「Ⅱ型」ともに期間内における事業再編・事業統合(事業譲渡・株式譲渡など)を行うことが要件となっています。

廃業・再チャレンジ事業については、事業承継や、経営者の交代に際して行われる経営革新などに伴う廃業(併用申請)、および中小企業者または個人事業主の新たなチャレンジに伴う既存事業の廃業(再チャレンジ申請)が要件です。

補助の対象となる経費とは

補助の対象となる経費は、交付決定日以降の発注・納品・検収・請求・支払が完了したものに限定されます。交付決定日は9月中〜下旬を予定しており、補助事業期間は2024年4月24日までです。

申請方法

1.当該補助金は「jGrants(ジェイグランツ)」システムを利用して申請します。この際、「gBizIDプライム(ジービズアイディープライム)」というIDを取得する必要があるため、忘れずに取得手続きを行いましょう。IDの取得には1~3週間程度かかります。

2.法人の場合は「履歴事項全部証明書」「閉鎖事項全部証明書」など、個人の場合は「住民票」などの必要書類を準備しましょう。必要書類については各補助事業ごとにまとめられています。

「経営革新事業」
https://jsh.go.jp/r4h/business-innovation/application/

「専門家活用事業」
https://jsh.go.jp/r4h/experts/application/

「廃業・再チャレンジ事業」
https://jsh.go.jp/r4h/challenge/

3.必要書類の準備や記入まで完了したら、「補助事業計画の立案」も行います。具体的な立案の上、所定のひな型や「jGrants」のフォームへ記載しましょう。

これら申請の準備を行うにあたっては、制度理解や複雑な手続き、多数の書類を準備しなければなりません。無理に独力で行わず、専門家のアドバイスを受けながら進めることをおすすめします。

4.全ての準備が完了したら「jGrants」システムを使って申請を行いますが、本システムについてはマニュアルも完備してあります。こちらも参考にしつつ、申請を進めていくとよいでしょう。

まとめ

事業承継に際しては、どのような形であれ相応の費用がかかります。本記事で紹介した「事業承継・引継ぎ補助金」制度を利用すれば、自社のみの資金力では足りない場合でも事業承継を行えるでしょう。各種マニュアルや専門家のアドバイスに頼りつつ、確実に補助金を受給できるよう準備していくことが重要です。
「事業承継・引継ぎ補助金」制度についてはこちらの記事でも紹介しています。併せてご覧ください。
「採択結果はどう確認する? 事業承継・引継ぎ補助金の基礎知識」

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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