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事業譲渡が詐害行為にあたる? 債務超過での事業譲渡の注意点を解説

「後継者に継がせて企業を存続させたい」「振るわない事業を売却することで利益を得たい」など、企業によって事業承継を行う背景は何通りもあります。中には、「債務超過の状態にある事業を譲渡したい」という企業もあるでしょう。債務超過状態の事業譲渡は可能ですが、注意しておくべき点を把握していなかったり、債権者への害があることを知った状態で契約を行ったりすると「詐害行為」としてみなされます。この記事では、事業譲渡における詐害行為の危険性と防止策について解説します。

債務超過での事業譲渡は詐害行為となる危険性がある

債務超過の状態にある企業が事業譲渡を行うと、ネガティブなイメージを持ちますが、必ずしも悪いわけではありません。
例えば、複数の事業を展開している企業が債務超過状態にある事業を事業譲渡すると、譲渡側は債務超過状態から脱し、譲受側は専門的なノウハウを駆使して事業を回復させられます。
一方で注意しなければならないのが、詐害行為にあたる場合の事業譲渡です。ここでは、事業譲渡における詐害行為について解説します。

詐害行為とは

詐害行為は、債権者が損害を被ることを知っておきながら、債務者が自身の財産を故意に減少させる行為を指します。なぜそのような行為を行うのかというと、本来、権者に弁済すべき財産を消失させてしまえば、債権者への弁済から逃れられるからです。
例えば、債務者が第三者に低価格で事業譲渡を行ってしまうと、弁済に充てられる資産がなくなり、債権者側は弁済を受けられなくなります。
弁済から免れることを目的とした意図的な事業譲渡は詐害行為とみなされ、適正な処分が下されます。

詐害行為とみなされた場合どうなるか

詐害行為とみなされるような意図的な事業譲渡を行ったことが明らかになった場合、債権者側は「詐害行為取消請求権」という権利を行使できます。この権利を行使することで、詐害行為とみなされている事業譲渡そのものを白紙にできたり、債務者から追加の料金を徴収できたりするのです。

弁済を免れるための事業譲渡は悪意ある行為であり、債権者を害する行為に該当します。一時的に弁済から逃れられたとしても、後々多額の料金を請求されたり、複雑な手続きを要する事業譲渡手続きそのものが白紙になってしまったりするため、詐害行為にあたる事業譲渡は絶対に行わないようにしましょう。

債務超過で事業譲渡をする際の注意点

債務超過状態にある企業が事業譲渡をすること自体は、詐害行為にはあたりません。しかし、いくつかポイントを押さえておかなければ、意図的ではなかったとしても詐害行為に該当し、処分を受ける恐れがあります。以下の3点については、確実に認識しておきましょう。

買い主側に現状やリスクを伝える

譲渡側企業が債務超過状態にある事実をもれなく譲受側に伝えましょう。債務超過の理由や現状はさまざまあるため、自社がどのような状態にあるのかを正確に把握し、誠実な態度で伝えることが大切です。倒産間近にあるのか、あるいは新規事業の開拓に際して融資を受けている状態なのか、もしくは成長が著しい事業の拡大に多額の融資を受けていて債務超過状態にあるのかなど、内容によっては譲受側企業の態度・対応が変わるでしょう。

しかし、これから行う事業譲渡が詐害行為とみなされるかどうか、判断に迷うこともあるでしょう。このような場合は無理に手続きを進めず、専門家に相談してみることをおすすめします。自社と、自社を取り巻く状況を正しく把握することで、詐害行為とみなされるリスクを避けられます。

情報開示は不足なく正確に行う

自社の現状を余すことなく開示しないことは、詐害行為とみなされるリスクが高まるだけでなく、表明保証違反に問われる恐れも含んでいます。表明保証とは、「契約の当事者が相手方に対して、特定の時点において一定の事実が真実かつ正確であることを表明し、保証するもの」と定義されている概念です。

事業譲渡に際して、自社が債務超過状態にあることを故意に隠し、取引の破談や買取価格の減額を防ごうとする姿勢は、不十分な情報開示として表明保障違反に該当するケースが非常に高いといえます。ほとんどの事業譲渡契約では、「情報開示は不足なく行う」ことが表明保証条項で明記されているため、これに違反した場合は契約違反となり、相応の処分を受けることになるでしょう。表明保証条項に関する契約違反が判明した場合、「譲受側企業の代金支払い責務の留保」「損害賠償請求」「契約の破談」などが実行されます。

シナジー効果を念頭に置く

債務超過の状態にあっても、シナジー効果(相乗効果)が期待できる事業譲渡であれば契約が遂行される可能性があります。自社で振るわなかった事業を専門企業に譲渡すれば成長の余地があると見込まれ、人気のある事業ゆえに多額の融資を受けている事業であれば、将来性が期待されるでしょう。
譲受企業にとってメリットがあると考えられる事業であれば、債務超過状態にあっても事業譲渡は十分可能です。

まとめ

事業はさまざまな理由から債務超過の状態になることがあります。だからといって、必ずしも事業の継続を諦めることはありません。適切な対応を取れば、詐害行為に該当することなく事業譲渡を遂行できるでしょう。
事業承継の手段として挙げられる事業譲渡については、こちらの記事でも解説しています。併せてご覧ください。
「事業譲渡のスキームごとの違い、譲渡の仕組みやメリット、税金対策を解説!」

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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