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事業承継の「円滑化法」で負担を減らす? 中小企業の困りごとを解決!

中小企業の事業承継では、相続税や贈与税、自社株式取得のための資金に困る可能性があります。本記事では、そんな中小企業を救う「経営承継円滑化法」の概要をご紹介します。

経営承継円滑化法とは

経営承継円滑化法は、中小企業の事業承継を後押しし、地域経済と雇用を支える中小企業を継続させるために2008年5月に成立した法律です。
「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」というのが正式名称で、複数回の改正を重ねて現在の内容になっています。

経営承継円滑化法には以下3つの特例と新設された特例が設けられています。

・遺留分に関する民法の特例
・事業承継資金などを確保するための金融支援
・事業承継に伴う税負担の軽減(事業承継税制)

また、2021年8月2日にも経営承継円滑化法は改正され、「所在不明株主」に関する会社法の特例が新設されました。所在不明株主とは、株主名簿に名前があるものの連絡が取れず、所在不明になってしまっている株主を指します。都道府県知事認定を受け、所定の手続きを行うことでこの特例を受けられます。

特例を受けるための条件は以下の2つです。

・経営困難要件(代表者の年齢が満60歳を超えているなど)
・円滑承継困難要件(所在不明株主の存在によって事業承継が困難になっている)

これまでの条件では、所在不明株主の株式の競売や売却の際に、所在不明株主に対して行う通知が5年以上継続して到達せず、所在不明株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しないことが必要でした。しかしこの「5年」という期間は長く、早く事業承継を行いたい場合に困難な要件でした。そこでこの「5年」という期間を「1年」に短縮し、所在不明株主の問題を早期に解決できるようになりました。

遺留分に関する民法の特例

「遺留分」とは、民法上、最低限保障されている相続人の取り分です。取り分が遺留分よりも少なくなった場合には、遺留分に相当する金額の支払いを請求できます。

この遺留分の請求を求められた結果、想定外の遺留分の主張を受けたり、相続紛争が起こったりと、後継者に資産を集中させ事業承継を行うことがうまくいかない場合があります。それを防ぐために遺留分に関する民法の特例制度を活用しましょう。

遺留分に関する民法の特例制度を活用すると、後継者及び現経営者の推定相続人全員の合意の上で、現経営者から後継者に贈与された自社株式について、以下2つの選択が選べます。また、2つを組み合わせることも可能です。

・遺留分を算定する際の財産から除外(除外合意)
・遺留分を算定する際の価額を合意時の時価に固定(固定合意)

本特例を活用するには、経済産業大臣の確認と家庭裁判所の許可が必要です。経済産業大臣の確認を受けるには合意から1カ月以内の申請が必要で、家庭裁判所の許可には経済産業大臣の確認から1カ月以内の申し立てが必要です。

金融支援制度

事業承継の際には、分散した株式や事業用資産の買取などで資金が必要となる場合が多くあります。金融支援制度は都道府県知事の認定を受けた会社または個人が資金の融資を受けることができる特例です。

・信用保証協会の通常の保証枠とは別枠が用意される特例
・日本政策金融公庫及び沖縄振興開発金融公庫から代表者個人が融資を受けられる特例

1つ目の信用保証については、別枠ができることによって保証枠が倍に増えるというイメージを持っておくと良いでしょう。また、2つ目について最大融資額は7億2,000万円です。

上記の2種類の特例のうち、どちらの特例を受けるべきかの具体例は以下の通りです。

・自社株式、事業用資産を買い取るための資金…信用保証
・相続税や贈与税の納税資金…信用保証・融資両方
・仕入先や取引先金融機関の借り入れ条件が厳しくなった場合の資金…信用保証
・現経営者の借り入れを借り換えるための資金…信用保証

上記の特例を受けるには、都道府県知事の認定と信用保証協会や金融機関による審査を受ける必要があります。

事業承継税制

事業承継税制は、後継者が取得した資産にかかる贈与税や相続税の納税を猶予・免除する制度です。

事業承継税制には4つの満たすべき要件が定められています。

・先代経営者が満たすべき要件(会社の代表者であったこと、筆頭株主であったことなど)
・後継者が満たすべき条件(総議決権数の過半数を保有すること、会社の代表者であることなど)
・会社が満たすべき条件(中小企業、上場会社ではないことなど)
・事業承継税制が始まった後の条件(5年間後継者が会社の代表者であること、5年経過後に後継者が猶予対象株式を継続保有していることなど)

まとめ

中小企業が事業承継を行う場合、円滑化法を利用することで負担が減り、事業承継に集中することができます。

こちらの記事では、事業承継の流れについても解説しています。
「事業承継の流れを7つのステップで解説!」)

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賢者の選択サクセッション編集部

日本の社会課題である事業承継問題を解決するため、ビジネスを創り・受け継ぐ立場の事例から「事業創継」の在り方を探る事業承継総合メディア「賢者の選択サクセッション」。事業創継を成し遂げた“賢者”と共に考えるテレビ番組「賢者の選択サクセッション」も放送中。

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