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売上げ前年比231%の「富士ピクル酢」 フードロス削減を狙って起こした「業界のうねり」

コロナ禍による健康志向の高まりで、「お酢」市場が大きく伸長している。その中でも、飯尾醸造(京都府宮津市)の「富士ピクル酢」は、売上高が前年比231%を達成(2024年4-6月期)する出色のヒットだ。2010年に発売された「ピクルス専用酢」の先駆けは、フードロス削減にも大きく貢献しているという。

弱者ならではの「合気道的拡散法」

生野菜を漬け込むだけで、美味しいピクルスができあがる。今や、「ピクルス」のための酢は、ミツカンやオタフクソースなど有名メーカーがこぞって販売している。

その先駆けが、1893(明治26)年から続く京都府の老舗・飯尾醸造の「富士ピクル酢」だ。無農薬米からつくった米酢に、有機認証を取得したドライトマト・香辛料等を加えて旨みを深めている。

5代目当主・飯尾彰浩氏は「フードロス削減を目指したEcoの酢です」と開発意図を語る。形が悪いなどの理由で廃棄される野菜も、ピクルスにすれば商品価値が生まれるからだ。

「弊社は売上規模4億円の“弱小お酢屋”。フードロスという大きな社会課題を解決するには、到底パワーが足りません。しかし、市場を開拓し、大手を呼び込むきっかけ作りならできる。事実、ピクルス専用酢市場にも力のある企業が次々と参入し、マーケットを確立できました」。

強い相手を巻き込み、業界に大きなうねりを起こす。弱者ならではのこの手法を、飯尾氏は「合気道的拡散法」と呼ぶ。

「家業を継ぐ前、コカ・コーラに勤務し、“強者の戦略”を学んだ経験が活きました。弱者である飯尾醸造は、強者の真逆を突き進めばいい。メインストリームになるのではなく、新たなサブカテゴリを生み出すパイオニアであり続けたいと思っています」と話す。

取材・文/埴岡ゆり

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