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「長男が会社を継ぐ時代」は終わった 事業承継の後継者選び「誰もが納得できる透明性を」

中小企業の事業承継について専門家とともに学ぶ「サクセッションアカデミー」(主催・一般社団法人サクセッション協会)が5月8日、東京都銀座及びZOOMによるオンラインで開かれました。4回目となる今回は、事業承継の最重要事項である「後継者選定」について理解を深めました。

江戸時代以来の「血を分ける承継」は失われた

サクセッションアカデミーは、事業承継を機に企業の持続可能な成長につなげることが目的です。「サクセッション」は、「承継」や「相続」を意味する言葉です。メガバンク出身の同協会代表理事・原健太郎氏と、約30年以上にわたり外資系企業等でコンサルティング業務を経験した同協会フェロー・中山良一氏が講師を務めます。

江戸時代の事業承継は、地縁血縁を重んじ、「血を分ける」形で行われていました。明治時代に法人の概念が導入されても、戦中戦後や高度経済成長期までは「家督相続」が主流で、長男が事業を引き継ぐのが一般的でした。男性がいない家は、婿養子を迎えることで家督相続させることが当たり前だったのです。

しかし、高度経済成長以降に核家族化が進み、家庭内で自然に仕事を継承する環境が失われました。そして令和の時代に入ると、家庭の多様性や、ジェンダーバイアスの解消が進み、「長男が家督を継ぐ」という固定観念は薄らいでいます。

中山氏は「令和の事業承継では多様性、包括性、持続可能性、そしてテクノロジーを総合的に考慮しなければならない」とアドバイスし、事業承継の難易度が増していると指摘。原氏は「選択肢が増えすぎている今こそ、時代に適した事業承継環境を整備する必要がある」と訴えました。

現代にふさわしい後継者の選び方は

令和の時代の事業承継のあり方について、原氏は「後継者選定は先代が主体的に取り組むべきだ」と強調し、一方で中山氏は「多様性の時代において、後継者を先代がトップダウンで決めるのは適さない」と述べます。

ただ、2人はともに「透明性」「公平性」「家族内の利害調整」などを総合的に考慮することを挙げ、「長男が家督を継ぐ」時代でないからこそ、後継者を選定した理由の「見える化」が必要だと説きます。

中山氏は「多様性を尊重しつつ、誰もが納得できる形で後継者を選定することが重要だ」と締めくくりました。

取材・文/松田謙太郎

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