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事業承継税制の適用期間中に、贈与者が死亡したらどうなる? 

先代経営者から自社株式や事業用資産を後継者が引き継ぐときに発生する相続税・贈与税の支払いが猶予になる「事業承継税制」。金銭的負担が減る大変メリットの大きい制度ですが、もし納税猶予期間中に贈与者が亡くなった場合、猶予されていた税金はどうなるのでしょうか?本記事では、事業承継税制の適用期間中に、贈与者が亡くなったときの流れ、事前対策について解説します。

そもそも「事業承継税制」とは?

「事業承継税制」とは、一定の要件を満たすことで、先代経営者から自社株式や事業用資産を後継者が引き継ぐときに発生する相続税や贈与税の負担が猶予、あるいは免除される制度です。

納税猶予を受けるためには、次の4つの要件を満たさなければなりません。

・会社の要件  
・先代経営者の要件 
・後継者の要件
 ・その他の要件

上記に加え、相続税・贈与税の納税義務が猶予されるには、次の要件を5年間該当しつづける必要があります。

・後継者が会社の代表権を保有していること
・後継者が非上場株式を保有していること
・雇用の平均が贈与時(または相続開始時)の80%を下回らないこと
・資産管理会社に該当しないこと
・都道府県と税務署に対して会社の状況を報告し続けること

各要件の詳細、事業承継税制を受ける流れは、こちらの記事で詳しく解説しています。
「事業承継で相続税が免除になる方法!――5分でわかる「事業承継税制」の仕組みとポイント」

納税猶予期間中に贈与者が亡くなったらどうなる?

事業承継税制の適用期間内に、贈与者である先代経営者が亡くなったらどうなるでしょうか。

結論からいうと、猶予されていた贈与税は免除となります。

ただ、贈与により取得した株式は「相続」または「遺贈」で取得したとみなされるため、相続税が課税されることになります。この場合の相続税が課税される価額は、贈与税の価額です。

こういうと「贈与税は免除されるけど、結局相続税がかかるってこと?」と思われるかもしれませんが、この非上場株式については「相続税の納税猶予制度の適用に移行」することができます。

ただし、相続税の納税猶予の特例を受けるためには、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」に基づき、会社が特例の適用要件を満たしていることについての都道府県知事の「円滑化法の確認」を受ける必要があります。

加えて、免除事由に該当することになった日から6カ月以内に届出書を所轄税務署長に提出しなければなりません。

特例を受けるための要件

相続税の納税猶予及び免除の特例の適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

①会社の主な要件

次の会社のいずれにも該当しないこと
・上場会社
・風俗営業会社
・資産管理会社(一定の要件を満たすものを除く)
・総収入金額と従業員数がゼロの会社

②後継者である相続人などの主な要件

・相続開始時において、会社の代表権を有していること
・相続開始時において、後継者及び後継者と特別の関係がある者で、総議決権数の50%超の議決権数を保有し、かつ、これらの者の中で最も多くの議決権数を保有することとなること 

③担保提供 

納税が猶予される相続税額及び利子税の額に見合う担保を税務署に提供すること
※特例の適用を受ける非上場株式等の全てを担保として提供した場合には、納税が猶予される相続税額及び利子税の額に見合う担保の提供があったものとみなされる。

以上3つの要件があります。

これにより、申告後も引き続き特例の適用を受けた非上場株式を保有していれば、納税の猶予が継続されます。 

ただし、特例の適用を受けた株式を譲渡するなど一定の場合には、納税が猶予されている相続税の全部または一部について「利子税」併せて納付する必要があります。

なお、事業承継税制の納税猶予の適用が取り消しとなる主な理由には、以下が挙げられます。

1.毎年の報告・届出書の提出をしなかった場合
2.後継者が代表者ではなくなった場合
3.会社が資産管理会社に該当した場合(一定の要件を満たす会社を除く)
4.後継者が一族のなかで筆頭株主ではなくなった場合
5.一族の議決権が50%以下になった場合
6.納税猶予対象株式を一部でも譲渡した場合
7.一定の組織変更、解散した場合
8.雇用の平均8割維持要件を満たさなくなった場合(ただし、その理由について都道府県に報告を行えば認定取消にはならない)

取り消しになるケースはそこまで多くないと思われますが、注意するに越したことはありません。

事業承継税制の取消事由、利子税の計算方法については、こちらの記事で解説しています。
「知らないでは済まされない! 事業承継税制の「取消事由」とは?」

まとめ

事業承継税制の適用期間中に贈与者(先代経営者)が亡くなった場合、贈与税は免除となり、代わりに相続税が課税されます。ただ要件を満たせば、相続税の納税猶予を受けることができます。

なお、「社長が急に死亡した場合、事業承継はどう進めればいいか?」についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、合わせてご一読ください。
「社長が急に死亡した場合、事業承継はどう進めればいいか?」

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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