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事業承継税制の適用期限はいつまで? 相続・贈与を受けられる期限についても解説

企業の事業承継では、国による優遇制度「事業承継税制」が設けられています。しかし、相続税・贈与税の納税猶予を受けられる事業承継税制には、期限があります。法人と個人では、それぞれ相続・贈与できる期限が異なるため、間違いがないように手続きを行いましょう。この記事では、事業承継税制に関する4つの期限について解説します。

事業承継税制とは

企業の事業承継では、資産や自社株式の引き継ぎも行われますが、自社株式の引き継ぎには、多額の贈与税・相続税がかかります。そのために事業承継が困難になることを防ぐため、国が納税猶予などを制度化したのが「事業承継税制」です。

事業承継税制の適用期限はいつまで?

事業承継税制を利用し、贈与税や相続税の納税猶予を活用するには4つの期限があります。それぞれの期限を守らなければ、納税猶予を利用できません。

特例承継計画(個人事業承継計画)の提出期限

「特例承継計画」は法人版事業承継税制を利用する際に、「個人事業承継計画」は個人版事業承継税制の利用をする際に必要です。

現行法の元では以下の日程で、法人もしくは先代事業者の事務所所在地の都道府県庁へ提出することが厳守となります。

・特例承継計画

2024年(令和6年)3月31日まで

・個人事業承継計画

2024年(令和6年)3月31日まで

期限までに計画を提出しなければ法人版・個人版事業承継税制を利用できなくなるため注意しましょう。

なお、特例承継計画の提出期限は2023年(令和5年)3月31日まででしたが、令和4年度税制改正大綱による法改正で、特例承継計画の提出期限が1年延長となりました。

特例承継計画と個人事業承継計画それぞれに、認定を受けた税理士や会計士などの認定経営革新等支援機関(以下、「支援機関」)が行った指導内容の記入欄があります。自分たちの記入は間に合ったが、支援機関に記入を依頼していたら期限に間に合わないという事態にならないよう、余裕をもって行動しましょう。

贈与や相続を行う期限

贈与または相続は、以下の期限までに行う必要があります。

・法人版事業承継税制

2027年(令和9年)12月31日まで

・個人版事業承継税制

2028年(令和10年)12月31日まで

これらの期限までに贈与や相続を受けなかった場合、特例承継計画や個人事業承継計画を提出していても、法人版・個人版事業承継税制は利用できません。

なお、令和4年度税制改正大綱で、法人版事業承継税制の特例措置は適用期限を延長しないと決定しています。今後は適用期限の延長がないと留意し、贈与や相続を受けるまでの日程を組みましょう。

また、贈与のタイミングは選べますが、相続はタイミングを選べません。そのため、はじめから贈与で事業承継税制を利用することも考えましょう。贈与の際に発生する贈与契約は、先代経営者や先代事業者と意思疎通ができるうちに行なうと安心です。

認定申請書を都道府県へ提出する期限

都道府県庁に認定申請書を提出する際は、以下の期限を守りましょう。

・贈与の場合
贈与を受けた年の10月15日から翌年1月15日まで

・相続の場合
相続をはじめた翌日から8ヶ月以内(認定申請書は相続開始日の翌日から5ヶ月経過する日以降提出可)

事業承継税制による納税猶予を利用するには、所定の期限までに中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律(以下、「経営承継円滑化法」)に基づく認定申請書類を都道府県庁へ提出し、都道府県知事から認定を受けなければなりません。

●贈与税や相続税の申告書を税務署へ提出する期限
贈与税や相続税の申告書、および添付書類を税務署へ提出する期限は以下の通りです。

・贈与の場合
贈与を受けた年の翌年3月15日まで

・相続の場合
相続をはじめた日の翌日から10ヶ月以内

事業承継税制の納税猶予を利用するためには、都道府県知事の認定を受けるほか、贈与税または相続税の申告書と添付書類を提出する必要があります。

なお、贈与税または相続税の申告書には経営承継円滑化法の認定書のコピーを添付しなければなりません。都道府県の認定審査には通常2ヶ月程度かかるため、期限が近くなってから認定申請書類を提出すると、申告書の提出期限に間に合わなくなる恐れがあります。

認定申請書類の提出は早めに行いましょう。

事業承継税制で相続・贈与を受けられるのはいつまで?

では、事業承継税制で相続・贈与を受けられるのはいつまでなのでしょうか。法人版事業承継税制の場合と、個人版事業承継税制の場合それぞれについて解説します。

法人版事業承継税制の場合

法人版事業承継税制で相続・贈与を受けられるのは、2027年(令和9年)12月31日までとなっています。

申請の際は、以下のステップで進めましょう。

1.会社が作成・記入し、支援機関が指導内容を記入したうえで特例承継計画を都道府県庁へ提出する
2.先代経営者などから事業承継対象会社の非上場株式の贈与もしくは相続を受ける
3.法令に基づいた認定申請書を都道府県庁へ提出する
4.贈与税もしくは相続税の申告書を税務署へ提出する

個人版事業承継税制の場合

個人版事業承継税制で相続・贈与を受けられるのは、2028年(令和10年)12月31日までです。

申請は以下の手順で行います。

1.後継者が作成・記入し、支援機関が指導内容を記入したうえで個人事業承継計画を都道府県庁へ提出する
2.先代事業者から特定事業用資産の贈与もしくは相続を受ける
3.法令に基づいた認定申請書を都道府県庁へ提出する
4.贈与税もしくは相続税の申告書を税務署へ提出する

まとめ

事業承継税制の適用期限は、法人の場合2027年(令和9年)12月31日、個人では2028年(令和10年)12月31日となっています。期限を過ぎれば制度は利用できません。各手続きには2ヶ月程度時間がかかるものもあるため、早めの行動を心がけましょう。

事業承継についてはこちらの記事でも解説していますので、併せてご覧ください。
「事業承継の流れを7つのステップで解説!」はこちら

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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