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株式譲渡の損失とは? 損益通算と繰越控除の特徴を解説

株式譲渡は、事業拡大や組織再編成、事業承継などを目的に使われる手法です。株式譲渡をする際は、譲渡企業(売手)の株主が、保有する株式を譲渡先(買手)に売却するため損失が発生することがあります。そのため、株式譲渡で損失が発生した際に、損益通算や繰越控除ができるか気になる方もいるでしょう。

この記事では、株式譲渡損失の概要や、損益通算と繰越控除の特徴を解説します。

株式譲渡の損失と損益通算

株式譲渡を行う際は、損失が発生する場合がありますが、損益通算や繰越控除の仕組みを理解していれば節税につなげられるでしょう。

ここでは、株式譲渡の損失や損益通算について解説します。

株式譲渡の損失について

株式譲渡とは、譲渡対象会社(売手側)の株主が、保有する株式を譲渡先(買手側)に売却し、会社の経営権を移行する取引手法のことです。

譲渡対象会社(売手)の株主は、株式を譲渡する対価として金銭を受領し、一方の譲受先(買手側)は対象となる会社の経営権を取得します。株式譲渡の手続きとしては、売手側の企業と買手側の企業間で「株式譲渡契約」を締結し、買手側企業が代金を支払い、売手側企業は株式を交付する流れで行われるのです。

株式譲渡では、株式の売却が行われるため、譲渡損失が発生する場合があります。譲渡損失とは、上場株式や投資信託、FXや不動産などの資産を売却した際に発生する損失のことです。譲渡損失においては、売却して得た金額(手数料などを差し引いた金額)よりも、購入時に支払った金額が多ければ譲渡損失が発生します。これが、株式譲渡における損失です。

損益通算とは

同年に発生した「利益」と「損失」を合算することを「損益通算」と言います。例えば、上場株式等の投資によって、譲渡益や配当など利益が出たとします。この場合、発生した利益に対して税金が課されますが、他方で損失が発生した場合は、利益と損失を相殺することで税金を減らすことが可能です。

例えば、2022年における年間の利益が「利子・配当所得による10万円」、譲渡損失が「200万円」だったとします。この場合、税率20.315%が課税されるため、20,315円が源泉徴収されるでしょう。しかし、「利益の10万円」と「譲渡損失の200万円」を損益通算すれば、年間を通して「-190万円」の損失となります。よって、10万円の利益が相殺されるため、源泉徴収された20,315円が還付されるのです。

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繰越控除とは

繰越控除は、その年に控除しきれない上場株式等の損失について、翌年以降に繰り越せる制度です。繰越控除では、損失が発生した年の翌年以降から最大3年間にわたり繰り越せて、その間の上場株式等の譲渡益から控除できます。

また、上場株式等の配当所得と損益通算することも可能で、2016年からは「公社債等の譲渡・償還で発生した損失」についても、翌年以降の最大3年間繰り越せるように改正されました。

損益通算と繰越控除は利益と相殺できる

株式譲渡で損失が発生した場合についても、損益通算や繰越控除の制度を活用すれば、利益と相殺することが可能です。株式譲渡の損失は金額が大きくなりやすいため、節税効果が期待できるでしょう。

損益通算と繰越控除には確定申告が必要?

損益通算と繰越控除は、節税につながる便利な税制度ですが、利用するには一定の手続きが必要です。ここでは、損益通算と繰越控除を利用するための注意点を解説します。

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損益通算の注意点 

損益通算をする際は、以下のような注意点があります。

(1)確定申告が必要
株式投資などを行う際、「一般口座」を利用していれば確定申告が必要です。一方、「特定口座(源泉徴収あり)」を利用している場合は、証券会社が源泉徴収を行って納税するため、本来であれば確定申告は必要ありません。ただし、損益通算をするとなれば、「特定口座(源泉徴収あり)」でも確定申告が必要になります。

(2)所得の分類によっては損益通算できない
譲渡所得・利子所得・配当所得に分類されるグループは、利益が「先物取引に係る雑所得等」に分類される「FX」や「先物取引」とは損益通算できません。利益が「先物取引に係る雑所得等」に分類される金融商品同士でのみ、損益通算が可能です。

(3)不動産で生じた譲渡損益は損益通算できない
土地や建物といった不動産の譲渡により損失が発生した場合、不動産以外の所得とは損益通算はできません。反対に、他の所得の損失を、不動産の譲渡益と損益通算することも不可能です。

(4)非課税口座(NISA口座)は損益通算ができない
NISA口座(一般NISAやつみたてNISA)は、利益が発生しても税金がかからない仕組みとなっています。そのため、NISA口座の運用による損失が発生したとしても、損益通算はできません。

以上の注意を踏まえて、確定申告を確実に行い損益通算をするようにしましょう。

繰越控除の注意点 

損益通算をしてもまだマイナスの場合、確定申告の申請を行うことで、翌年以降に損失を繰り越せます。この際、翌年以降から最大3年間繰り越せますが、損失がなくなるまでは、取引がなかった年でも確定申告が必要な点には注意が必要です。翌年以降に繰り越せる譲渡損失が残っている場合は、忘れずに確定申告をしましょう。

まとめ

株式譲渡をする際は、対象企業の株式を売却するため、損失が生じる場合があります。その際、損益通算や繰越控除の制度を適用し、他の利益を相殺することで節税につなげられるでしょう。

また、損益通算や繰越控除を利用するには、確定申告が必要になるのでしっかりと行うことが大切です。

なお、株式譲渡は事業承継の際にも活用される手法です。事業承継に関しては、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

「事業承継の流れを7つのステップで解説!」はこちら

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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