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会社分割時の不動産取得税は課税される? 非課税の要件とは

会社分割を行った際、譲受側は不動産取得税の支払いが発生します。しかし、要件を満たせば非課税となる場合があるのです。

この記事では、会社分割と不動産取得税の関係について解説します。非課税に該当するかどうか、要件をチェックしてみましょう。

会社分割と不動産取得税について

複数ある事業の一部を売却したい時に用いられるのが会社分割という手法です。会社分割を行う際に不動産の移転が発生すると、不動産取得税が課税される場合もあります。ここでは、会社分割と、会社分割における不動産取得税を解説します。

会社分割とは

会社分割とは、1つの会社が展開する事業の一部を切り離し、他社に譲渡する手法です。企業が複数ある事業の一部を売却できるため、組織再編や事業承継などでも使われます。

また、会社分割は事業の切り離し方により、「吸収分割」と「新設分割」の2種類に分けられます。吸収分割は、切り離す事業の一部を他の既存会社に承継させる手法、新設分割は切り離す事業を新規に設立する会社に承継させる手法です。

一般的に、会社分割の対価は株式で交付されますが、対価の受け取り主によって会社分割はさらに2種類に分類されます。会社分割の対価を受け取るのが分割会社の場合は「分社型分割」、分割会社の株主が受け取る場合は「分割型分割」となります。

会社分割は、「吸収分割」「新設分割」の2つの分類と、「分社型分割」「分割型分割」という2つの分類からなる組み合わせから、4つの類型があるのです。

会社分割における不動産取得税

不動産取得税とは、建物や土地といった不動産を売買したり贈与したりする際、不動産を取得する側に課される税金のことです。不動産取得税は、各都道府県に税金を納める地方税であり、国税ではありません。

不動産取得税の税率は原則として4%ですが、2024年3月31日までは軽減措置が取られています。条件を満たしている場合、都道府県に申請することで軽減措置が適用されるのです。また、税率に関しては、不動産を取得した時価ではなく評価額に対し課税されます。一般的に、不動産の評価額については、時価の5〜7割程度になることが多いでしょう。

不動産取得税の軽減措置が適用されると、税率は3%に軽減されます。土地の評価額は2分の1となり、住宅の評価額から1,200万円が控除されるのです。

また、会社分割で不動産の移転が発生した場合も、原則として不動産取得税の支払い義務が発生します。ただし、一定の要件を満たした場合、会社分割による不動産取得税は非課税となる仕組みです。

会社分割時の不動産取得税について

会社分割では、会社が切り離す事業に関する権利義務や資産の中に、不動産が含まれることもあります。そのため、会社分割時の不動産取得税の仕組みについて理解が必要です。ここでは、会社分割で不動産取得税が課される場合と非課税になる要件、また不動産取得税の計算式と税率を紹介します。

会社分割で不動産取得税が課されるケース

以下のようなケースでは、不動産取得税が課されます。

(1)非課税となる要件に該当しない場合
後述する非課税となる要件(「金銭等不交付要件」「主要資産引継要件」「事業継続要件」「従業員引継要件」「按分型要件(分割型分割のみ)」)に該当しない場合は、課税の対象です。

(2)賃貸に出している不動産を借主に移転した場合
企業として賃貸中の不動産を借主に移転させる場合は、不動産が分割した事業と無関係になるため、不動産取得税が課税されます。

(3)本社の土地を持株会社に移転させた後に賃貸に出す場合
土地は分割した事業とは無関係になるため、不動産取得税の課税対象です。

(4)各都道府県の定める非課税要件に該当しない場合
地方税である不動産取得税の課税・非課税の判断は、各都道府県が行います。そのため、都道府県の考え方によっては、非課税の要件を見たなさいと判断されることもあります。会社分割の際は、都道府県に事前に相談しておくのがおすすめです。

不動産取得税の計算式と税率

不動産取得税の計算式と税率は以下の通りです。

・不動産取得税の計算式
不動産取得税額=課税標準額(取得した不動産の価格)×税率

・不動産取得税の税率
原則として、不動産取得税の税率は評価額の4%です。ただし、土地と住宅に関しては、2024年3月31日までは軽減措置が適用されます。軽減措置が適用されると、土地の評価額は2分の1となり、建物が新築の場合は評価額から1,200万円を控除したうえで、算出された額の3%が課税額になるのです。

なお、不動産取得税の納税方法に関しては、まず管轄の都道府県に「不動産取得税申告書」を提出します。その後、都道府県から納税通知書が届くので、期限内に納付する流れです。

非課税となる要件

会社分割の際、以下の要件を全て満たす場合は、不動産取得税が非課税になります。

(1)金銭等不交付要件
会社分割の対価は、金銭などの交付によるものではなく、分割会社の株式でなければなりません。分割対価が金銭などの場合、ビジネスによる売買とみなされ課税対象となります。

(2)主要資産引継要件
会社分割における対象事業の主要な資産および負債は、承継会社側に引き継がれる必要があります。

(3)事業継続要件
会社分割の対象事業に関して、会社分割後も承継会社側で引き続き運営されることが見込まれる場合は、非課税の対象です。

(4)従業者引継要件
分割対象の事業に従事する従業者のうち、その総数のおおむね80%以上の者が、承継会社側でも引き続き当該事業に携わる必要があります。

(5)按分型要件(分割型分割の場合のみ)
会社分割の対価は、分割法人株主が保有する株式の割合に応じて交付されなければなりません。

上記の要件を全て満たしたら、都道府県に「不動産取得税非課税申告書」を提出します。その際、以下の添付書類が必要です。

・会社分割の内容が確認可能な契約書の写し
新設分割のケースでは分割計画書
吸収分割のケースでは分割契約書
・分割会社および承継会社の履歴事項全部証明書の写し
・分割会社および承継会社の定款
・株主総会議事録および取締役会議事録の写し
・承継権利義務明細表

分割会社から承継する資産・負債・雇用・その他の権利義務を確認可能な書類

まとめ

会社分割に際して、本記事で解説した各種要件を満たす場合、不動産取得税が課される場合と課されない場合とに分かれます。非課税要件を満たす場合は、加えて全ての添付書類も併せて提出する必要がある点を覚えておきましょう。

事業承継にはさまざまな手法がありますが、その1つが会社分割です。事業承継については、こちらの記事でも解説しているので、併せてご覧ください。
「事業承継の流れを7つのステップで解説!」はこちら

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賢者の選択 サクセッション編集部

賢者の選択サクセッションでは、⽇本経済の課題解決と発展のためには、ベンチャー企業の育成と併せて、これまでの⽇本の成⻑を⽀えてきた成熟企業∕中堅‧中⼩企業における事業承継をフックとした経営資源の再構築が必要であると考えています。 ビジネスを創り継ぐ「事業創継」という新しいコンセプトを提唱し、社会課題である事業承継問題に真摯に向き合うことで、様々な事業承継のケースを発信しています。 絶対解の存在しない事業承継において、受け継いだ経営者が事業を伸ばす きっかけとなる知⾒を集約していきます。

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